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第七話「社交(3)」



公爵領についた。



馬車での移動は中々キツかった。

まじで暇なんだもの。

途中であらわれた魔物は護衛がサクッと退治してしまうし。

なんなら何があらわれたのかすら分からなかった。


ただ、初めて自領から外へ出たこともあり道中の景色は新鮮なものだった。当たり前だけど簡素な街道があるだけで、辺りは草原や森林、岩場など、人の手があまり入っていない。

あらためて、この世界の雰囲気を肌に感じることができた。


これからの予定だが、まずは公爵家へ到着の挨拶と思いきや、あてがわれた部屋へ移動する。

どうやらパーティで顔を合わすので、事前の挨拶などはしないらしい。

そして、普段から親交があるので滞在中は公爵家を使わせてくれるらしい。有難くもあるが、散策ができないのは少し残念でもある。パーティは今日の夜なので、一息ついてから準備かな。


領主町......というか公爵家はほぼ城なので、城下町とも言えるだろう。

馬車から見た景色では活気もあり、概ね問題のない領営ができているようだ。

パーティが終わり、時間があったら少し街を歩いてみたい。許可でるかな。


そうだ。大事なことを忘れていた。



「ミリア。今日のパーティでの参加者で、知っておかなければならない貴族を教えてくれるかい?」



作法ばかり気にして1番大事なことを忘れるところだった。家格が上の相手に対して「あんた誰?」みたいな態度はさすがにまずい。



「はい。家格順で申しますと、アールヴ公爵家

ザイド侯爵家、ウォルト辺境伯家、ワイト伯爵家、というところでしょうか。他は子爵家や男爵家となります」



「ありがとうミリア。まあ父様や母様に付いていれば、そうそう失礼なことにはならないか」



「そうですね。ただ、子供たちだけで親交をとる場合もございますので、他家の子息令嬢が親と一緒にいる内にお顔だけでも把握されるとよろしいかと思います」



「たしかにそうだね。分かったよ」



まあなんとかなるやろ。



パーティまで瞑想てもしてよっと。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



パーティの時間が近づいてきた。そろそろ着替えよう。



「ミリア。着替えるね」



できるメイド、ミリアはすでにスタンバっていた。

そして今日もスルスル脱がされスルスル着せられる。服が少し温かい、どうやら腕と胸に挟まれて持たれていたせいで温められたようだ。

やばい。股間に血流が。



「よし。いこう」



合流すべく、両親の元へ移動する。

しっつれいしまーす。


部屋へ入ると、どちらも準備万端だった。

ヤダ。父かっこいい。惚れそう。

長身で引き締まった身体に、俺よりも薄めの紺色で仕立てたスーツを着ている。濃い色味にはしなかったんだな。


と思いつつ母を見ると、父と同じくらいの彩度の赤いドレスを着ていた。首周りが開いているAラインのドレスだ。スマートな父に合わせ、野暮ったくならないよう、こちらもスッキリとしたデザインになっている。


夫婦で合わせた感じね。美男美女が服装まで合わせてくると近寄り難い程の雰囲気である。



「アル。しっかり準備が出来ているな」



「父様と母様こそ。僕なんか霞んでしまいそうですよ」



「あら、そんなことはないわよ。アルちゃんもかっこいいわ。それよりも、ほらっ!」



そう言って指の爪を見せてくる母。かあいい。



「あ、爪に色をつけられたんですね。どうやったのです?」



「花から抽出した色素と画材屋さんで買った、なんか透明な液体を混ぜたらイイ感じにできたわ!」



雑ぅ。ただ、伯爵夫人の爪に塗るものだ。おそらくだけど、専属メイドのアマルナさんあたりが万全の備えで用意してくれたのだろう。



「ドレスに合わせた淡い赤ですね。よく映えていて素敵です」



「そうよね!アルちゃんこんなアイディアをくれてありがとうね。また何か浮かんだらすぐに教えてね」



圧がすごい。

餌を待つ雛鳥のようだ。

自分も服飾に詳しい訳でもないからまた何か思い出したら提案してみようかな。



「分かりました」



「アル。私にも何か浮かんだらよろしくな」



あんたもかい。


そのとき扉がノックをされる。



「アースレイ・フォン・オルヴァス様、クレア・フォン・オルヴァス様、アルスレイ・フォン・オルヴァス様、会場の準備が出来ましたので、ご案内をいたします」



「承知した。ではいこうか」



公爵家のメイドさんでした。

レベルたっか。うちのメイドも美人揃いだがこちらもとんでもないな。さすが公爵家。


メイドさんの後ろ姿を眺めていたらあっという間に会場へ。いかんな。最近欲の噴出がひどい。


広間には豪奢なシャンデリアが吊るされ、煌びやかな光を放っている。存在感はあるが、光の反射なども下品にならないよう計算されているのだろう。匠の仕事である。


父にエスコートされ、にこやかに歩む母。俺は父の斜め後ろに付いて歩いていく。


まずは主催者であるヴェルヘルム公爵への挨拶からだな。



「おお。よく来てくれたな、オルヴァス伯よ」



「ご無沙汰しております。ヴェルヘルム公爵閣下。お招きに与り光栄でございます」



「オルヴァス伯爵夫人もお久しぶりね」



公爵の隣にいる女性から母が声をかけられる。

公爵夫人だろう。



「ご無沙汰しております。アルネ様」



キレイなカーテシーを決める母。普段はお茶目な人だがさすが貴族である。



「あら、伯爵夫人。その爪は......」



「クレアとお呼びくださいませ。アルネ様。これは息子の提案で少し色付けをしたものですわ」



「ほうほう。それはどのよう「こらこら。後にしなさい。その話は」とのことですので、後でゆっくりとお聞かせくださいね」



公爵から長くなりそうなのでストップが入る。

そらそうだ。



「して、その件の息子はその子かね?」



背中を父に添えられ少し前にでた。

片膝を付き右手を胸に添えて述べる。



「お初にお目にかかります、公爵閣下。

アルスレイ・フォン・オルヴァスと申します。この度はお招きくださり光栄に存じます」



「よいよい。立って顔をよくみせておくれ」



「あらあら。お二人譲りの端正な顔立ちね。将来が楽しみだわ」



「うむ。良い顔つきをしておる」



「はっ!ありがとうございます」



さっきまでメイドの尻をみて会場入りした奴とは別人である。誰だよあいつ。



「おー、アース!よく来たな!」



「ウィル!久しぶりだな!」



父と同じ歳頃のこれまたかっこええ人がこちらへやってくる。この場に割って入れることから次期当主であるウィル・フォン・ヴェルヘルム様だろう。



「もう少し静かに来んか、ウィル。今ちょうどオルヴァス伯の息子の紹介を受けたところだ。ちょうど良いからナルシアの紹介しよう」



「そうですね父様。ナル、こちらへおいで」



そう呼ばれてきたのは、腰まで伸びた薄く緑がかった黒い髪を一纏めにし、モスグリーンのドレスをきた女の子だった。

伏し目がちではあるが、瞳は淡い緑色をしており、どことなく神秘的な絵物語にでてくるような佇まいだった。



「ナル。オルヴァス家のアースレイ......は前に会っているな。クレア夫人とアルスレイ君だ。挨拶なさい」



「はい。お父様。アースレイ様、お久しぶりです。クレア様、ナルシア・フォン・ヴェルヘルムです。よろしくお願いいたします」



こちらも令嬢の名に恥じないカーテシーをビシッと決める。

両親へ挨拶をしたあと、こちらへ近づき上から下まで見られる。なんぞ?



「............あなた。私の家来にしてあげるわ!」



自分の胸に手をおき、ババーンと音がなりそうな勢いで宣言をするお嬢様。

え、なに??人格入れ替わった??



「ははっ......相変わらずだね、ナルシア嬢は」



「はぁ............。お転婆すぎるんだよねえ......」



神秘的な見た目は詐欺案件でした。ギャップがありすぎでしょお。

ただこんな小娘に舐められる俺じゃねえぜ。



「はっ!承知しました。ナルシアお嬢様」



所詮はごっこ遊びの延長だろうから、相手に合わせてみる。まあごっこといえど、対応を間違うとお家が吹き飛びかねないけどね。


お嬢様の顔を見てみると、パァっと華が開いたような笑顔をしておられる。めちゃ嬉しそう。



「じゃあ今日から私の家来ね!アルと呼ぶわよ!」



ウィル父が良いの?みたいな顔で父と俺をみる。そして父も俺をみる。俺、うなづく。



「とりあえず顔合わせはできたようだな。ウィル、オルヴァス家の皆様と話してきなさい」



「クレアさんは後でこちらにきてね〜」



そういってウィルに連れられ、会場のテーブル席へ移動した。

会場は基本的に立食のようだが、家格が高い家や親交のある家はこのようにテーブルの席へ案内をされるらしい。

というか案内どころか対面のソファで寛ぐウィルとナルシア。ホストしないんかい。



「他の貴族はまわらなくて良いのか?」



気になるところよね。



「久しぶりに会ったんだ。多少は良いだろうよ。それに、ナルもアルスレイ君を気に入ったようだ。少し話していくよ」



「アル、あなた年齢は?」



「8歳です」



「あら、私より1つ上なのね」



1つ下の女の子に家来にされてたんか。



「普段は何をしているの?」



「そうですね。ほぼ鍛錬しかしておりません。脳まで筋肉になりそうです」



ブフォっと吹き出すウィル様。



「割とひょうきんな子なんだね、アルスレイ君は......ん?アルスレイくん、その袖口についているのはなんだい?」



「おっ。気がついたかウィル。それはな、アルが袖口の装飾に考えたものでカフスというものだ。加工した石に、留め具をつけて袖口にボタンの代わりに付けている。中々のものだろう?」



「これは良いな!アクセントにもなるしパートナーに合わせたりすることもできそうだ」



「そうだろう。ところで、だ。公爵家が抱えている商人からカフスを作っていかないか?」



「ん?自分のところの商人でやらないのか?」



「流行りそうだからな。やっかりみの種になりそうな物は上から発信した方が良いだろうよ」



大人たちの中でポンポン話が進んでいく。

そうだ。すっかり忘れていたが、うちの有能メイドのミリアさんがお土産を持たせてくれていたんだった。



「ウィル様。さきほど、公爵閣下とのご挨拶の時にお渡し出来れば良かったのですが、気を失してしまいました。こちらは私が付けている物と同じ、ヘルムナイトを使ったカフスになります。閣下とウィル様に使っていただけたらと思います」



そういってテーブルの上へ小さな箱を2つ置く。



「おぉ!これは素晴らしいな。ありがとうな、アルスレイ君」



「閣下にも遅れてのお渡しになったことを申し訳なく思います」



「いやいや。問題ないよ。それにうちから産出される石を使ってくれているのも嬉しいよ」



「で、あればお渡しして良かったです」



無事に渡せて良かった。気を失したとか完全に嘘なんで。忘れてたんで。


ふと前を見ると、ナルシアが上目遣いでメンチをきっている。



「私には?」



えぇ......むりぃ......



「私にはないの?アル」



「さすがにないなぁ......」



本音がもれる。



「ナルシア様、こちらの爪をご覧ください。色がついてございますでしょう。これもアルのアイディアでできたことで、こちらの方法をお伝えすることでアルからの贈り物、とさせていただけますか」



ナイスすぎる母。流石である。

そして頷きながら爪にくいつくナルシア嬢。



「後でアルネ様へもお伝えに行きますので、ご一緒いたしましょう」



「よろしくお願いいたしますわ。クレア様」



「よし。それじゃあそろそろ他をまわってくるよ。ナルはクレア夫人と一緒にお母様の元へ行きなさい」



「はい。分かりましたわ、お父様」



「ではアース、クレア夫人、アルスレイ君また後で」



ふう。ひとまず一拍おくことができそうだ。



「よし。少ししたら私も他をまわってくる。クレアとナルシア様はアルネ様のところだな。アルもせっかくだから他家との子息と交流をしてきなさい」



「分かりました。父様」



めんどくさあ。だが今回は顔に出さずにさっかりと返事をする。目の前にまだナルシアもおるし。




とりあえず話しやすそうな子がいたら話しかけるくらいで、無理そうだったら壁の花と化していようっと。

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