家
風のようにフィリップが帰ったあと、私は振り返ってみると、家の中の全部の明かりが煌々と着いていた。
まだ寝てないのだろうか?と思いつつ私は、扉を開けた。
すると、開けた先にドロシーとシャーロットが出迎えてくれた。いつもは、Silkyが出迎えてくれるが、どうしたのだろうか。そう考えながら、ただいまと二人に声をかけると、おかえりなさいませと返事が返ってきた。すると、その声を聞き付けたマゼンダとシアンが小さな足音を立てながら、私に近づき
「オカエリナサイ、マスター。ミアハリビングデ、マチクタビレテネテルヨ?ハヤクイッテアゲテ。」と言い、私の両腕をふたりがひっぱり、リビングへと連れていった。すると、ソファーに座っているSilkyと足元のカーペットに散らかっている絵本と雑誌と新聞紙をいそいそと片付けているBrownieの姿が見えた。あれ、ミアの姿がない。もう寝室で寝たのだろうか。しかし、マゼンダたちはリビングにいると言っていた。そうして、私はミアを探すように、Silkyが座っているソファーを覗き込むと、そこには分厚い本を抱えて寝ているミアの姿があった。
「先程マデ起キテイラシタノデスガ、限界ガ来テシマッタヨウデ、寝テシマワレマシタ。 」とSilkyが眉根を下げて微笑み、小さな声で言った。随分と待たせてしまったのか、申し訳ないな。そう思って見つめていると、腕の中に絵付きの図鑑と絵本を数冊抱きしめて寝ていた。おそらく、私に読んで欲しかった本なのだろう。私は、無理に起こしてしまうのも可哀想と感じ、ミアを抱えて寝室へと連れていった。Silkyは、そんなクロノスの後ろ姿を見て、あんなに人嫌いでこれでもかと人を避けていたのが、ミア様と出会ってほんの少しだけ変わられたのかなと思い、嬉しそうに微笑んでいた。
ミアを寝室に連れていき、頭を撫でてやっていると開けていた扉からシャーロットがひょこっと顔を出して、小さな声で「マスター、コッチニキテ。」と言った。
私は、なんだと思いシャーロットの後をついて行くと、待ってた時にSilkyとBrownieが作ったであろうクッキーがテーブルに並んでいた。あの最悪な食事会の料理とは違い、ほんの気持ち程度の量とティーカップが並べられたそのテーブルは、私の心を癒すには十分の光景だった。すると隣にいたリャナンシーが、新しく作ったばかりのロビンとミアが一生懸命作ったものだと言った。
「マスターヲ喜バセヨウト二人揃ッテ一生懸命作ルモノダカラ、マダマダ沢山余ッテマスノ。ダカラ、袋ニ小分ケシテアノ箱ニ入レテオキマシタ。明日ノ朝ニデモ、食ベテアゲテクダサイマシ。」そう、Brownieがキッチンの隅に置いてある時計仕掛けの箱を指さした。
「そうか、そうだな。2人のためにも作った全部のクッキーを食べるとするか。」そう私が微笑むと、機械人形たちは顔を見合わせて笑った。
しかし、たくさんの機械人形が起きている中で、同じ機械人形であるロビンの姿が見えない。
「そうだ、ロビンはここにいないようだがどこに行ったんだ?」と私が聞くと、ニンフが
「2階ノ図書室ニイマスヨ。呼ンデキマショウカ?」と言った。
「いや、呼ばなくていい。図書室の掃除か、気になった本でも読んでいるのだろうな。」
そう私が言うと、ルーシーが急に思い出したかのように
「ソウイエバ、ミアト一緒ニ読ムタメノ本ヲ探スンダ言ッテ図書室ニ行キマシタヨ。」と言った。
ミアと一緒に読む本か…ロビンがそんな思考をするだなんて思ってもみなかった。それだけ、ミアと仲良くなったという証拠だろう。微笑ましいといえば微笑ましいのだが、あの子は化学薬品と計算石を特別な方法で融合させた、作った自分でも驚くような危険物だ。なんで、そういうふうに作ってしまったかは自分でも分からない。恐らく、完成する段階であの馬鹿親子が私の元に執拗く来ていたことにより、ストレスで危険極まりないものにしてしまったのだろう。しかし、今のところ害はないようだし、あまり気にしなくていいだろう。まぁでも、もしもの時に備えて安全装置をつけておくとするか。
そう考えているうちに、私はソファーで寝落ちてしまった。