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その令嬢、危険にて  作者: ペン銀太郎
第一部:第6章:何かが変わった日常
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63話:久しぶりの学園へ

久しぶりの登校日の朝。


ネルカは見える範囲の傷こそ治ったものの、服に隠れた体のあちこちは包帯を巻いている状態だ。さすがの彼女も今回ばかりは療養優先で鍛錬は控えていたが、登校だけはするということであった。


そして、いざ学園に向かわんとタウンハウスの前に止められた馬車に乗り込もうとしたとき、その中にいた人物に彼女は怪訝そうな表情を作った。


「おはようございます、お嬢様。」


その人物はメリーダ。

夏の間だけの彼女用の侍女であったが、その任務も昨日で終了のはず。

ネルカは困惑しつつも聞きたいことを口に出す。


「メリーダ…どうしてあなたが乗っているのかしら…?」


「旦那様からのご命令としましては、監視と報告をしろということです。どうやらお嬢様は血沼が寄って来る運命にあるのだと…旦那様は不安を感じておられました。おかげで、私はメイドから侍女へと昇格でございます。」


「寄って来るなんて言い方やめてほしいわね。作るだけよ。」


「どちらにせよ、監視、必要ですよね? むしろ、タチが悪いと存じ上げます。」


頬を轢くつかせるネルカであったが、目の前の侍女の笑顔を見せられると何も言い返せず、ただ黙って馬車に乗り込むのであった。ネルカは(私の部屋は侍従付き寮の方ではないけれど、どこに寝泊りするのかしら…)と思っている傍ら、メリーダは何かを思い出したかのように顔を上げた。


「あと、ついでに身の回りの世話も仕事でございます。」


「そっちがついでなのね…。」


まぁ楽になるなら良いかと、彼女は深く考えないようにした。



 ― ― ― ― ― ―



学園校門に着いた後、学園と寮とで行き先が違う二人は別れる。

授業中の侍女の役目は部屋の掃除等であり、実は暇な時間が多いため学園同行侍女は人気があったりするのだが、ネルカはそんなこと知らない。ただ軽い足取りの背中を見てため息を吐いた。


こうして学園敷地内に入ろうとした彼女であったが、校門には女子2人と男子1人が立っていた。ネルカとその三人と面識はないはずだが、彼らは彼女の姿を見ると目を輝かせて近付いてきたのであった。


「「「ネルカ嬢! 夜会の件を教えて下さい!」」」


ネルカにとってはもう昔のように感じる夜会事件も、関係のない人たちからしてみれば一番最近の事件。だからこそ、裏で何があったのか気になった人たちは、こぞってネルカの元へと集まったのであった。


――側妃側が王家略奪を狙っての事件。

――マクラン家が仮死を使って隙を作った。

――ネルカのおかげで大事になる前に解決した。


彼らが公式に知ることができる情報はこれだけ。これだけ知れば満足して手を引け、という一種の王家からの圧が含まれているのだが、それでも好奇心に勝るものはない。


それに、あくまで公式に知れる情報というだけで――


「聞きましたわぁネルカ様! 私、感動しました!」

「ネルカ嬢はこの国の秘匿最高戦力…なのです…よね?」

「俺たちを陰ながら守るために入学したんだってな!? カッケェ。」


「そ、その話は誰から聞いたのかしら――」


「「「エルスター様から!」」」


――非公式に知れる情報もある。


ネルカは後で知ったことなのだが彼らは国王派閥の家々であり、国を守った者として彼女のことを評価しているということであった。休暇前は数奇な目で見られたり、避けられたりしていたこともあって、彼女にとしてはやぶさかなしという気持ちだった。


「安心なさって! 私たちは応援していますの!」

「あの…可愛い女の子が好きというのは本当でしょうか?」

「元平民だからタメ口が落ち着くんだってな! 親しみ湧くぜ。」


「そ、その話は誰から聞いた――」


「「「エルスター様から!」」」


集まるのはキラキラした目。


(事件に関しては正しい情報なのに、私の情報は間違ったものが出回っている気がするわ…でも、否定するにも…この眼差しをどうにもできないし…。)


気圧され気味なネルカがたじたじしていると、三人は内緒話をするかのように身を寄せ、そして彼女の知らない話を切り出した。


「あとデイン殿下とアイナ様の婚約は、ネルカ様のおかげだとか。」

「ネルカ嬢が臣下なら…とコルナール嬢が認めたんですよね。」

「平民時代は愛の伝道師って呼ばれていたんだってな!」


「そ、その話は誰か――」


「「「エルスター様から!」」」


あの二人が婚約したこと、きっかけが自分であったこと、初めて聞く二つ名で呼ばれたこと――聞きたいことはたくさんある。


しかし、全ての情報源はエルスターとはどういうことか。

つまり、彼女の評価はすべて彼に掛かっているということ。

もしも、彼がいつものごとくズレたことを言っているとしたら。




「それで…エルスター様と婚約しているのは本当でして?」




「え?」




「えぇっと…両想いでラブラブなんですよね?」




「は?」




「エルスター様は御姫様抱っこを…ネルカ嬢はみんなの前で告白を…いやぁ、ロマンスだなぁ。そういう恋愛、憧れるぜ!」




「そ、そ――」




「「「エルスター様から!」」」



 ― ― ― ― ― ―



ネルカが学園の校門で人を寄せ付けないオーラを放ちながら、エルスターの登校を待っているとき、彼女の寮室にたどり着いていたメリーダは顔をあげた。彼女は自身のポケットから一枚の手紙を取り出すと、ギョッと目を見開いて学園方面を振り返る。


「あっ、お嬢様にこの手紙を渡すのを忘れていました!」


その手紙の内容は――


【エルスターくんと婚約させることにした――】


領主から――つまり、ネルカの義父からの手紙だった。




【皆さまへ】


コチラの作品を読んで楽しんだら、高評価をしてくださると嬉しいです。


そして、何よりも嬉しいのは作品に対する直接の言葉です。

なので、コメントしてくださるともっともっと嬉しいです。


よろしくお願いします!


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