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その令嬢、危険にて  作者: ペン銀太郎
第一部:第5-2章:避暑地における休息的アレコレ(後編)
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53話:戻ってネルカサイド

戻って、ネルカサイド――


 ― ― ― ― ― ―


セグを戦闘不能に追いやった後の展開は早かった。


そこにはトーハの首元に鎌の刃を待機させているネルカと、情報を聞くための尋問を行おうとしているエルスターの姿があった。地面にクレーターができるほどの衝撃を受けたセグは、生死こそ調べないと分からないが再起は確実に無理だろう。


「ほら、教えてくださいよ。あなたたちは…どこの…誰の…どんな情報を元に行動していたのかを。時と場合によってはこちらも対応しますよ?」


「魔王の力を使って我らジャナタ王国に攻め入るつもりなのだろう! 国を裏切った売国奴の娘がァ! 我らを滅ぼすつもりなのだろう!」


その言葉に二人は顔を見合わせて、しばらく考える時間を作る。まさかここに来て『魔王』という単語が出てくるとは思わなかったのだ。


「魔王? それって聖女の力に反応して出現するってやつよね…。詳しい話まではマリも知らないようだったけれど…そもそもどんな存在なのよ?」


「ハァ? 貴様らが作ろうとしている魔物だろう! 他と比べられないほど強い魔物を魔王と呼ぶと! 人工的な魔魂喰らいはその研究途中だと聞いているぞ! 俺らの国に失敗作を試験がてらに送りやがって!」


「そんな研究をしている輩がいるんですねぇ。少なくとも濡れ衣ってやつですよ。ははぁ、これは本腰入れて調査すべき事態ですねぇ。」


他国とは言え諜報のためにある程度は調べているトーハは、エルスターという男がどういう立ち位置の人間なのかは理解している。そして、彼はそんなエルスターは王家側の人間であり、ネルカはいいように利用されているだけだと信じていた。


だけど、この様子――演技には見えない。

尋問も忘れて思わず素が出たかのような反応。


「あら…?」


三人共が困惑により沈黙している間、黒魔法の霧が晴れようとしていた。


「ロルディンさんあたりがやってくれたのかしら?」


「ロル…あぁ、私にこのマスクを渡してくれたあの騎士ですか。」


「そうか…リオールドのやつ…リディアを守り切れなかったか。」


しかし、だんだん薄れていく景色に対し、エルスターは空を見上げて何か訝しんでいる様子だった。その姿に釣られてネルカとトーハもまた空を見上げるが、しばらくすると二人は理由に気付くこととなった。


「ねぇ、トーハおじさん…あなたたち、どうやら騙されていたようね。狙いは漁夫の利ってとこかしら。」


「くそっ! ぐっ…その通りみたいだな。」


完全に晴れた視界の中、空には2匹の飛龍が飛んでいた。

派生進化した蛇竜や土竜などではない、王道進化の飛龍種だ。


そして、この距離からだと詳しくは見えないが、なにやらその背中にはそれぞれ人間が乗っているようであった。魔物は魔力を使うとい特殊性があるだけで、結局の根底は生き物――使役は不可なわけではない。

しかし、力を持つ存在ゆえかいずれも気性は荒く、それを運用するとなると割に合わないという結論がされている。それでいて空に飛んでいる存在は龍だ、使役など不可能に近いと言えるだろう。


茫然と空を見上げる三人をよそに、片方の飛龍が近くに着陸した。


「あ~あ、もうちょい消耗しといてほしかったんだがなぁ。さすがにここまで体力残ってっと、俺でも相手すんの手間取りそうだわ。まぁ、問題ってほどではないがな。」


その背から聞こえるのは男の声だったが、降りてきたその容姿に一同は驚く。皮膚には鱗のようなものができており、爬虫類特有の縦長黒目に切れ目、頭部には二本の曲がり角が生えていたのだ。


「まさかトムスと同じ…魔物融合?」


「あ? 融合? ちげーちげー。俺はどっちかってっとよぉ、魔魂喰らいをした元人間って言った方が正しんだわぁ。俺らは【魔人】って呼んでるがな。」


男はそう言って後ろ頭をボリボリ掻くと、ふと何かを思い出したかのように三人を見て口を開いた。


「なぁ『聖マリ』って知ってっか?」


「なっ! なぜそれを!?」


「おぉっとぉ、その反応は当たりってことかぁ? ドゥエルが来たか? 原作者とかいう職のユウジって奴の方か? インチキ転生野郎のアドラって線もあるなぁ!」


「…? 誰かしら? それ…。何を言ってるの? アドラって名前ならどっかで聞いたことあるような。どこだったかしら…。」


「おいおいマジか。ってことはよぉ、アイツら以外に空間転送した奴がいるってことかぁ? それは予想しなかったなぁ。 なぁ、そいつは転生と転移どっちだぁ?」


「空間転送? 転生? 転移?」


「ってことはよぉ…ゲームの話を未来予知の情報として把握とかしてんの? キヒヒヒ! もしそうだとしたら、とんだ見当違いなんですわぁ。物語なんざ所詮は空想、空想じゃない物語があるとしたら…それはただの昔話でさぁ。」


知らない情報や単語が次々に出てくる言葉に、三人は何がどうなっているのか思考がまとまっていない様子だった。男はそんなことお構いなく空を見上げると、もう一対の飛龍が丁度移動を開始している頃であった。


「そうか、あっちは未来の聖女様探しに行ったかぁ。ちょ~っとばかし話すぎたな。ここに聖女がいないと分かったんなら、俺も移動開始するかぁ…。」


その言葉にネルカが反応する。


どこの誰が、何のために、どれほどを知っているかはどうでもいい。


奴らの狙いは将来に魔王を脅かしうる聖女――つまりマリアンネの排除。そのことさえ知ればいい。王だとか国だとかではない、ただの友人一個人が狙われているというだけで彼女の原動力になる。


「フッ!」


気付けば蛇鱗の首に黒鎌の刃が差し迫っていた。

男は片手の三本指で刃の腹を掴むと鎌の動きはピタリと止み、背後に迫っていたエルスターの剣を避けも防ぎもせずただ首で受け止めた。そして、ネルカごと鎌を持ち上げると、振り回してエルスターをぶつけ飛ばし、立ち上がり剣を展開しようとしていたトーハへと投げる。


「まぁまぁ、落ち着けよ。 誰がどうなのかまでは分かっちゃいねぇんだ。今後の邪魔になりそうな集団を排除する予定だったが、いざ来たら魔物が騒ぐもんだから……まさか聖女候補がいるなんて思わなかったんだぜぇ?」


「うるさい、しね、だまれ。」


「おいおい、つれないなぁ。」


男は肩を回しながら首を二度三度コキコキ鳴らすと、三人を見渡して不敵な笑みを浮かべる。そして、挑発するかのように右手を前に突き出して、かかってこいとジェスチャーをする。


「しょうがねぇなぁ、ゼノン教の最高幹部の一人・シュヒ―ヴルが直々に戦ってやる。かかってこいカス共。てめーら三人までなら全員纏めて相手してやる。」


そこにいる四人が動いたのは、ほぼ同時だった。




【皆さまへ】


コチラの作品を読んで楽しんだら、高評価をしてくださると嬉しいです。


そして、何よりも嬉しいのは作品に対する直接の言葉です。

なので、コメントしてくださるともっともっと嬉しいです。


よろしくお願いします!







~~謝罪と開き直り~~


設定に矛盾がありました。


黒魔法は『操作や放出が得意ではない』となっていますが、

バリバリに得意な人たちしか存在していませんね!

特にコルネクスとセグなんて、とんでもない出力を持ってますね!



はい、すみませんでした。



しかし、あくまでネルカ視線での話であり、

母と自分しか黒魔法を知らないというだけであり、

得意な人は得意として存在する………としておいてください。


えぇ、そうですよ、後付けですよ?なにか問題でも?


――ということで謝罪は撤回します。


矛盾はなくなったので、セーフ!




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