プロローグ(ラーラ)
人間は皆下等な生き物。
彼と出会うまではそんなことを思いながら生きていた。
いつも人を攫い、死ぬ寸前まで血を吸いその辺に捨てる。
私は生まれた時から本能しか無かった。自分がいつ産まれ、親は誰なのか、自分の名前そんなものはもう覚えていない。
でも、彼は全部教えてくれた気がした。
彼は私に優しさ、愛、そして名前をくれた。そんな彼に私は惹かれた。彼の、ハルキのことが、ハルキのの血が大好きになっちゃった。
「はぁ、ハルキ買い出しに行っちゃった。夜まで血はお預けか」
私はハルキが買い出しに行ってしまい1人部屋に取り残されゴロゴロしていた。
日が出ている時間はあまり外には出たくないのだ。別に火傷したり蒸発したり灰になったりはしない。けどやはり少し目眩だったりはあるのだ。
「ハルキに少し我慢させちゃってるかな私…」
私はいつもハルキに少しわがままを言ってしまう。
私は人とは違い、本能で生きてきたからあまり自分の感情を抑制できない時がある。例えば血が欲しくなった時とか。
「今夜の吸血はほんとうにひとくちだけにしておこう。でその後は2人で熱い夜を……うふふふ」
私が1人で浮かれていると突然机が震え出した。
私は驚き震えている机を見渡すと端っこに携帯が置かれており、着信が来ていた。
私は携帯なんて持っていないのでハルキのものだろうと思い私はそれを手に取る。
「で…んわ?えーっと、上村さ…ん?」
携帯の画面を見ると上村さんという名前が書いてあった。
私はけいたいの使い方なんて知らないので机の上にそっと置いといた。すると
「あ、もしもしハルキくん。休日に申し訳ないんだけどこの前の話で」
携帯から女の人の声が聞こえる。
おそらく電話の相手は上村という人間。
女?電話…浮気。
いやいや、ハルキに限って浮気なんて…しないよね?
私はハルキの携帯を持ち相手に話しかける。
「誰?ハルキの知り合いか?」
「ん?誰?ハルキくんじゃない?……あ、もしかしてラーラさん?」
「そうだ、私がラーラだ。ハルキの妻にして誇り高ききゅー」
吸血鬼まで言おうとしたが、ハルキにその事は誰にも言わないと約束してあるので言う寸前で言うのを辞めた。
「やっぱり。ハルキくんの奥さんだ。あ、ハルキくんは今いますか?」
「いないぞ、それよりお前は誰なんだ?」
「私?私はハルキくんの同僚の上村です。よろしくお願いします。そっか、ハルキくんに伝えといてください、私から電話があったと。では」
「ちょ、ちょっと待つー」
携帯から上村の声が聞こえなくなる。
電話が切られた。
結局相手と上村の関係は聞けなかった。ドウリョウ?どういう意味か帰ってきたらハルキに聞いておこう。
でも、ハルキが浮気をするなんてありえないのだから、その辺は心配しなくて平気だろう。
電話が切られ、その後は1時間ほど1人でゴロゴロしていると玄関のドアが開いた。
「ただいま」
ハルキが帰ってきた。
「おかえりー!何を買ってきー」
私は袋の中から香る強烈な匂いに目眩がする。
「な、何を買ってきたんだ!?」
「あ、ニンニク胡椒が食べたくて買ってきたけど、胡椒にしてもダメかな?」
「捨ててこい!」
私はハルキに言いつけた。
人間のことは理解できない。
ハルキも私のことを理解できないのだろうか?
そんな嫌なことばかり考えてしまう。でも、私はハルキを愛し、愛し続ける自信がある。その気持ちだけは決して変わらない。
私はニンニク胡椒を持って返品してくるというハルキを見送りながらそんなことを考えていた。
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