Actor
Actor
学校からの帰り道、
生ゴミを漁っているカラスが問いかけてきた。
「お前は誰だ?」
薄汚い野良猫が話しかけてきた。
「今日は楽しかった?」
道路反射鏡に映った私は、
こちらを指さし声を上げて笑っていた。
家に帰ると、母が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま!」
そう言って気付いた。
私の話し方、おかしい。
無理してる。
こんなの、私じゃない。
考えていると、母が笑いかけてきた。
「学校、どう?」
「楽しいよ。あはは」
何故か、愛想笑いが混じった。
意図したものでは無かった。
それを見た母はため息をつき、言った。
「困った事があったら、
相談すること。分かった?」
私は適当な返事をして自分の部屋に籠った。
急に、自分が恐ろしくなった。
気を紛らわせようとスマホを開いても
興味のあるアプリなんてひとつも無く、
電源を落としベットに投げつける。
流行りのゲームだとかアイドルだとか、
そんなものに本当は興味無いんだ。
ふと、思い出した。
昔から、私は小説を
書くのが好きだったじゃないか。
いつか誰かに馬鹿にされてから
しばらく書いていなかったが、
“小説を書くのが好きな私”は確かな私で、
そうすれば自分を取り戻せそうな気がした。
私は原稿用紙にペンを走らせる。
内容は、「今の私のこと」
タイトルは、「Actor」