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アラフォー主婦の異世界転移~この年でありえない・・・  作者: Rapu
番外編

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番外編 西の共和国へ


 第73話「長い一日」の後日談になります。のんびりした、ある一日のお話です。





 ここは、<獣王国>から5日ほど西に来た、国境沿いの小さな街。食材の買い出しとギルドの異動届を出す為に立ち寄った。ジークも私もフードを被っている。<獣王国>で人間は目立つから……。


 <獣王都>を出てから、<西の共和国>へ向かう事にした。<西の共和国>へは、<獣王都>南西にある港街からの航路もあるが、シーダンに乗って山越えをする事にした。


 <西の共和国>は4つの国から成っている。<山の国リッヒ>・<北海の国ナルク>・<森の国グラーツ>・<青海の国ブルデール>。


「ねぇ、ジーク。<港街オース>で、異動届を出していないけど怒られる?」

「ミーチェ、大丈夫だよ。出す時間が無かったと言えばいいし、本当の事を言っても問題ないよ。王女に攫われて来たってね。フフ」


 ギルドの受付でジークが異動届を出す。


「すまない。この後すぐに移動するが、<東の王国>で異動届を出せなかったから、ここで手続きを頼む」

「分かりました。ジークさんとミーチェさんですね」


 受付の犬耳のお姉さんが、手続きをしながら話を続ける。


「ジークさん、2つ連絡事項が届いています。1つ目は、<東の王国>で出されたオークションの売上金が、ジークさんのカードに入金されています。確認して、こちらの書類にサインをお願いします」


 オークション?あっ!体力の実が売れたんだ!忘れていた訳じゃないけど、それどころじゃなかったからね。


「分かった」


 ジークは、入金額を確認して書類にサインした。書類を覗くと金額が書いてあったが、なんと、金貨450枚だった……。凄いよ!日本円で450万だよ!?ギルドが手数料10%取っているから……うわ~、金貨500枚で売れたんだ。


「その半分を、ミーチェのギルドカードに入れてくれ」

「かしこまりました」


 あれ?金貨か白金貨で貰わないのね。


「ジーク、カードに入金するの?」

「今回みたいに、バッグを取られたままだと逃げる時に困るしね。カードにお金が入っていたら安心だろ?使わなくてもいいしね」

「そっか~、分かった」


 いざという時の保険なのね。


「連絡事項の2つ目は、<東の王国>からジークさんとミーチェさん宛に手紙が届いています。こちらに受け取りのサインをお願いします」


 ええ~!手紙?ビックリしてジークと目を合わせる。誰からだろう?


「ありがとう」


 ジークはサインをして手紙を受け取った。そして、ジークは、手紙の差出人を見て中を確認する。


「ジーク、誰から?」

「ああ、<王都>の調査団長だったイグラムさんからだよ」


 確か……、イグラムさんは<東の王国>の宮廷魔術師で、昔の迷い人を研究している偉い人だったね。


「えっ!?団長のイグラムさんは、どうして私達がここに居るって分かったんだろう……」


 ジークが手紙を読んで私に教えてくれた。


「この手紙は、全てのギルドに送っているって書いてあるよ。簡単に言うと、『古の迷い人の情報を何か見つけていないか?』だって」

「ええ~!全てのギルドに手紙を送ったの?いくら掛かるのかな……イグラムさんは、お金持ちなのね」

「何も見つけていないって、返事を出しておくよ」


 私は読めるけど、書くのはまだ無理かな。簡単な文章ぐらいしか書けない。


「うん。ジーク、お願いします」


 ジークは、手早く返事を書きギルドの受付に手紙を出した。そして、ここまでの街道で倒した魔物のドロップ品を、買取りカウンターで換金してもらう事にした。


「あっ!ジーク、私が持っている物も売っておこうかな~」

「ミーチェ、クラーケンの魔石は持っていた方がいいかも」

「そうなの?了解~。じゃぁ、それ以外のアイテムを出すね」


 ほとんど、シーダンが蹴り飛ばして拾ったアイテムだけどね~。


「手に入り難い物は、お金より価値があるアイテムだから、取引用に持っていた方がいいよ」

「そっか~、了解。ジーク、勉強になるよ!」


 <獣王国>に来てからの街道で拾った魔石やアイテムを換金した。


 ギルドを出た後、買い出しをして街を出る。街の宿屋では泊まりません。理由はルシーの時と同じで、ジークが絡まれます……。フードを被ってからは、絡まれなくなったけど念の為です。


 ジークは、ニコニコと嬉しそうに微笑んで言う。


「フフフ。ミーチェが、ヤキモチを妬いてくれるのが嬉しいんだけどね」

「うぅ、ジークの意地悪……」


 ジークへの肉食女子の猛アピールは心乱されるんですよ……。結界を張って、触られないって分かっていても見たくないのよ。雷撃魔法を撃ちたくなってしまう……。


「ねぇ、ミーチェ。ここから山の街道を行くけど、次の街まで2週間以上掛かるから、十分に食料を買うよ」


 この世界の1週間は6日です。なので、12日以上の旅になるのね。パンと野菜を山ほど買い込んでおこう~!肉は途中で手に入るだろうしね。


「ジーク任せて!バッグも大きくしたから沢山入るよ!ふふ」

「えっ?ミーチェ、どれだけ大きくしたんだい?」

「えっとね~、クラーケンが一匹丸々入る様に!って、願いながら何日もバッグに魔力を込めていたら、馬車30台ぐらいになったよ」


 クラーケンの時は、バッグの残りの容量が少なくて後悔したのよ。もう後悔はしたくないから、クラーケン2匹入るまでは大きくするよ!いえ、時間を掛けてもっと……。


「アハハ!ミーチェは凄いね」

「私は、凄くないよ?鑑定さんのお陰だしね。ふふ」





 街を出て街道を進む。この街道は、<西の共和国>の4つの国の1つ<森の国グラーツ>に続いている。


 のんびりシーダンに揺られながら、ふと今までの事を振り返った。


 この世界に落ちて来て、もう半年以上過ぎた。この世界に来た時は、赤ちゃんにならない様に必死だったな~。向こうの世界にいる息子は、独立したから心配いらなかったし、夫には愛人がいた。息子が独立したから、話し合うつもりだったけど……。私がいなくなって喜んでいるかもしれない。息子は心配していると思うけど、連絡も出来ないしね……。


 私は帰らないでと言ってくれたジークと、この世界で生きて行く事を決めた。ここまで色々あったけど、ジークとまた旅が出来る喜びを感じているの。今は、落ち着いて心が満たされているから、振り返る余裕が出来たのかな……。



 そう言えば……ふと、気になっていた事を口にする。


「ねぇ、ジーク。<獣王都>からの追手が来ないね~。絶対に追われるって思ったけど」

「そうだね。僕も追手が来ると思っていたよ」


 何故だか、王宮を騒がしたのに追手が掛からない。ルーカス王子が上手く獣王に言ってくれたのかな。


「あの王子が、追手を止めてくれるなんてビックリね」

「そうだね。ミーチェ、もしかしたら獣王が、賢い王だったのかもしれないよ?」

「そっか、王様か~」


 ああ~、獣王が賢かったのね。<獣王国>の住人が聞いたら怒られそうな会話ね。そんな事を思いながら、シーダンに揺られて草木の生い茂った山の街道に入って行った。



『ニャ~ン!(ミーチェ、来たよ~!)』

「あ!ノアール来てくれたのね~」


 ノアールは、私達が街に入る日には来ない。そして、街から出ると来てくれて、一緒に旅をしてくれる。夜はルシーの所に帰るけどね。ふふ。


 途中で、コボルトが襲って来た。……が、コボルト1体程度ではシーダンが踏みつけて倒してしまう。ノアールがいると、シーダンと倒すのを競争している……。


 コボルト、狼辺りまでは2人?(2匹とは言えない)にお任せです。さすがに、オークが2~3体出て来るとジークが降りて戦うけど、シーダンもオークを蹴り飛ばしに向かって行く。シーダン、強くなったね……。


 山の街道の少し開けた場所で野営をする。ジークはシーダンの世話をして、私は食事の準備をする。夕食が出来る頃には、ジークもノアールもちゃんと席に座って待っている。ふふふ。


「今日は、2種類の唐揚げを作ったからね~。タルタル付けて食べるのと、ニンニク醤油。ヤケドしないでね」

「ミーチェ、今日も美味しいね。もぐもぐ……」

『ニャニャ~ン。ゴロゴロ……(僕は、タルタル・ニンニク・タルタルって、食べるんだよ~。ゴロゴロ……)』


 ノアールは、ルシーにお土産を持って帰ると、籠に唐揚げを詰め込んで帰って行った。



 食後、テントのソファーでバッグを抱えて魔力を込めていたら、ジークが王宮の地下牢の時の話を始めた。


「ねぇ、ミーチェ。地下牢でミーチェに再会した時、ドキドキしてどうしようかと思ったよ」

「えっ?ドキドキしたの?」

「そうだよ。ミーチェは、<港街オース>にいた時よりずっと可愛くなっていたからね。フフ」


 ジーク……、そのドキドキしたのは、私が雷撃魔法を撃ちながら歩いていたからじゃないの?


「うん、ジークありとう……」


 可愛いって、言ってくれるのは嬉しい。


「ジーク、私ね。王宮でジークを迎えに行く時に、迷い人だとバレても良いって覚悟したから、少し変わったかもしれない……」


 あんなに怒ったのは初めて……。


「ミーチェが、僕の為に覚悟してくれたのは凄く嬉しいよ。でもね、迷い人はバレない方がいいな。バレるとややこしい虫が寄って来てしまうからね。僕だけのミーチェでいて欲しいから……」


 ジークはそう言って、頬にキスをする。


「うぐぅ……。僕だけのって……」


 ジークは、まだ私に甘々だ。嬉しいけど、ちょっと照れる。


 そして、ジークは優しく微笑み、顔を近付けて私の唇をついばみ始める……


「ミーチェ、キスを堪能させて」


 うぐぅ……、そんな事を言わないで、心臓がドキドキしてきたじゃない……。




読んで頂いて、ありがとうございます。

番外編1話のみの投稿です。




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