ありがとう
誘拐事件の後、ジークと2人で、色んな所へ旅をした。<西の共和国>へ行ったり、ルシーの住む<魔の森>へも行った。
私は、ダンジョンコアと魔力が多いせいか、年月が過ぎても容姿は余り変わらなくて、10代後半のままです。(ステータスの年齢は毎年1つ増えているけど……)でも、ジークはゆっくりだけど年を重ねて行く……。段々と、ジークとの別れを感じる様になった。
ジークとの別れは、覚悟していたけど凄く悲しかった。ジークが衰弱していくのに、魔法ではどうする事も出来ない。とても辛くて歯痒かった……。ジークは、私を一人置いて逝くのが嫌だと、毎日の様に言う。まだ、私の事を大切に思ってくれているのが嬉しくて、悲しくて……。来世で、また私を拾ってねと。お願いした。
光の日の最後の時、ジークが私に残してくれた言葉。
「また会いに来るからね……。愛しいミーチェ……」
悲しくて、悲しくて毎晩泣いた……。夢であって欲しいと何度も思った……。追いかけたいと何度思った事か……。
ジークはエルフの血が入っているせいか、普通の人(70~90歳)よりも長生きでした。享年121歳。随分と永く一緒にいたなぁ。容姿も余り変わらず、ゆっくり年を重ねて皺が増える程度だった。銀髪だったからか、白髪も分からなかったし……。そして、ずっとイケメンでした。私だけが、そう見えていたのかもしれないけど……。
そして、ジークを見送って5年。晩年ジークと過ごした<魔の森>の小さな家に、今も一人で住んでいる。この家は、ジークと初めて出会った川の側にあり、私が現れた岩場にジークのお墓を作った。私は、まだまだジークを追いかけて逝けそうにない……。
私がここから離れないので、ルシーは、時々ここに遊びに来てくれます。ノアールは、毎晩夕食を食べに来てくれる。
鑑定さんとは時々話をして、コアはいつも寝ています。コアは、育ったら私の中から出て行くだろうと思ったけど、起こさない限りずっと寝ている……。
シーダンは、旅の途中でバイコーンと言う幻獣に進化して、一緒に散歩したりしている。
毎週、光の日には、お弁当を持ってジークのお墓に行き、そこでお昼を食べる。ジークとの旅を思い出しながら過ごしている。
今日も、光の日なので、お弁当を持ってジークのお墓に向かった。すぐそこだけどね。
ん?何かおかしい……。近寄ると、ジークのお墓が倒されている。
「えっ、誰がこんな事を……」
土を掘り起こした跡がある……。そして、ジークを収めた棺が暴かれていた。膝をついて、お墓の跡を見る……。なぜ?酷い……。わなわなと震えて来た。誰が……?
ガサガサガサッ、
近くの草藪から音がした。
音がする方を向くと、小さな子どもが立っていた。5歳位の銀色の髪に黒い瞳のとても可愛い男の子。
えっ?こんな所に子ども?高ぶった気持ちを落ち着かせて、子どもに声を掛けた。
「ぼくは、どうしたの?迷子かな?」
「ミーチェ!」
男の子は、私の名前を呼んで近寄って来た。
「えっ!?どうして、私の名前を知っているの?」
可愛い男の子は、ニコニコしている。
「クスクス。僕、まだ名前がないんだ。ミーチェ、僕に名前を付けてほしいんだよ。ミーチェの1番大切な人の名前をつけて?」
えっ?この子は何を言っているの?男の子の顔をまじまじと見る。銀色の髪で目の色は違う……。けど、似ている……。
「えっ?まさか……」
「ねえ、ミーチェ。ミーチェの1番大切な人の名前を教えてよ」
男の子は、可愛らしくねだる様に聞いてくる。
「まさか!ジーク?」
男の子は、一瞬輝いた様に見えた。そして、パァーっと満面の笑みになって抱き着いて来た。
「やったー!僕の名前はジークだよ。フフフ」
ええっ?な、何が起こっているの……?
「えっ?どういう事?まさか、本当にジークなの?」
「うん、そうだよ!僕はミーチェの眷属として生まれ変わったんだよ。ミーチェが、名前を付けると眷属として固定するんだって」
「ええー!生まれ変わったって、そんな事出来るの?ジークは、人間だったのよ?眷属って……」
ジーク曰く、私を一人置いて逝くのが嫌で、鑑定さんとコアに相談して私の眷属として生まれ変わる事を望んだそうです。
死んだ後に、コアが与えていた祝福と私の魔力を使ってジークの魂を繋ぎ留め眷属として生まれ変わった。そして、私が名前を与える事で眷属として固定化したそうです。
「えっ?鑑定さんとコアに相談って、どうやって話したの?」
「うん。ミーチェが寝ている時だよ。コアには、前からお礼を言いたかったんだ。『ミーチェを連れて来てくれてありがとう!』ってね。それでね、鑑定とコアに手伝ってもらって、ミーチェの魔力を集めて結晶をたくさん作ったんだよ。フフフ」
ジーク?フフフって、笑っているけど……、力が抜けて座り込んでしまった。
「なぜ?なぜ、教えてくれなかったの……?」
また会いに来るって、こう言う意味だったの?あぁ、涙が込み上げて来た……。
「成功するかどうか、やってみないと分からなかったからね。期待させて失敗したら、と思うとミーチェに言えなくて……。あぁ、ミーチェ、ごめん。泣かないで……。ねぇ、僕が悪かったから……、ごめんよ。泣かないで……」
「うぅ、……ぐすっ」
涙が止まらない……。声を上げて泣いていた……。
「うえぇ~~ん!」
驚いたのと、嬉しいのと、秘密にされていたのと、ごちゃ混ぜの感情で良く分からない……。感情が溢れて来て止まらない……。
「ミーチェ、泣かないで……。これでずっとミーチェの傍に居られるんだ」
「ジークのバカー!!言ってよ……。ヒック」
教えてよ。ぐすっ。そしたら、あんなに悲しまなかったのに……。
ジークはビックリして、私の顔を覗き込む。
「ミーチェ、ごめんね。これからは、ちゃんと話すから……」
ジーク、幼稚園児だし……。こんな子どもになってしまって……、声だって天使の様だし……、これ以上怒れないじゃない。ぐすっ。
「ジーク、もう私に隠し事はしないでね。隠し事をされたら、悲しくなるから……」
だんだん、ごちゃ混ぜの感情が収まって来て、今度は嬉しい感情が満ちて来た……。
「ミーチェが泣くと悲しくなってしまうよ……。言わなくてごめんね。チュ」
ジークは、座り込んだ私の額に可愛らしくキスをしてくれた。本当に、天使みたい……。ぐすっ。声も可愛い……。
「うん。ジーク、お帰り。また、会えて凄く、凄く嬉しいよ。ぐすっ」
また、涙が溢れて来た……。ダメだ。
それからしばらく、私は泣いていた。使い物にならない私を、小さいジークがずっと撫でてくれていた……。
ようやく気持ちが落ち着き、ジークに話しかけた。
「ジーク、どうして目の色が変わったの?」
「あぁ、これは主の魔力の影響で変わったみたいだよ。つまり、ミーチェの瞳と同じ色になるんだよ。フフ」
そういえば、ノアールも主のルシーと同じ色の瞳だったなぁ。
「そうなのね。ジークお腹空いている?お弁当を持って来ているけど、食べる?」
「うん!ミーチェ、食べるよ!」
テーブルセットを出して、お弁当とバッグにある手料理を並べた。小さくなったジークは食べにくそうだったので、エアークッションの魔法を掛けた。ふふ。
「ミーチェ、ありがとう!凄く美味しいよ!もぐもぐ……」
幼稚園児のジークが見られるなんて、声も可愛いし!感無量です。大きな目をキラキラ輝かせて、天使にしか見えない~!今なら、言ってもいいよね。
「ジーク、すっごく可愛いね!ふふ」
「ええっ!見た目は小さいけど、中身は前のままだよ?」
ジークは、心外だと言わんばかりに目を見開いて抗議する。そんな表情も、可・愛・い~~!ふふふ。復活した私は、幼いジークの可愛さにメロメロです……。
年を取って出来た子どもが可愛いって聞いた事があるけど、こんな感じなのかな~?ジークを可愛がって甘やかす自信があるわ!
「ねぇ、ジーク。今のステータスを見せて欲しいな」
「うん、いいよ」
名前 ジーク(ミーチェの眷属)
年齢 5歳
HP/MP 500/500
攻撃力 100
防御力 100
速度 100
知力 100
幸運 80
スキル
・鑑定A ・身体強化B ・無属性魔法B
ええっ!ミーチェの眷属ってなっている……。これって、私は魔人になるの?確かに、長生きしているけど……。
「ジーク、本当に眷属になっているし……。年齢が5歳なだけで基本のステータスは既に大人ね……」
「そうだね。でも、このステータスだと弱過ぎて、ミーチェを守れないからもっと強くなるよ!」
「ふふふ。今度は、私がジークを育てるのね~」
「フフ。ミーチェに育てて貰うなんてね」
ジークは、恥ずかしそうに言う。
「ねぇ、ジーク。また旅をしましょうか~。ふふ」
ジークは、パァーっと目を輝かせて言う。
「ミーチェ!それは良いね!」
あぁ、ジーク。興奮するとアメジスト色の瞳になるのね……。
ねぇ、ジーク。また2人でのんびり旅をしよう。
私達の思い出の場所を辿りながら……。
ジーク、ありがとう。
愛してる。
最後まで、読んで頂いてありがとうございました。評価して頂いた皆様、ブクマして頂いた皆様、ありがとうございます。そして、誤字報告して下さった皆様、本当に助かりました。ありがとうございます。m(__)m




