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64 ノアールを知らないか


 船に乗って3日目、朝早くにシーダンの様子を見に行く。この時間だと、誰にも出会わないから……。


「シーダン、おはよう。調子はどう?」

「ブルルルッ、ヒヒーーン!」

「ふふ。よしよし、先に『ヒール』を掛けるね」 


 シーダンに『ヒール』を掛けて、人参や果物を与える。そして、リボンをチェックして魔力を込める。


「ブルルルッ」


 シーダンを眺めていると、飼育係の若い犬の獣人が来た。


「その馬、干し草を余り食べないからどうしたのかと思っていたら、主がエサを与えていたんだな」

「ええ、少しだけね」

「俺はジョン。ジョンと呼んでくれ。君は一人旅かい?」


 飼育係の若い犬の獣人はジョンと名乗り、シーダンに干し草を与えながら話しかけて来た。


「ジョン、私はミーチェ。いえ、旅じゃないの。この子、シーダンと一緒に、攫われたパーティーメンバーを取り返しに行くの……」

「あちゃ~。ミーチェの仲間、獣人に攫われたのか?よくあるんだ……、王族や貴族が、気に入ったのを攫って行くんだよ。男も女もな」

「そうなの?最悪ね……」


 思い出したら、又腹が立って来たよ……。


「あぁ、魔物が多いから強い子どもが欲しいんだとさ。攫われるのは、綺麗な顔ばっかりだけどな~」


 <獣王国>の魔物の討伐は、冒険者に依頼するのではなく、貴族で形成される騎士団が討伐するそう。新しいダンジョンも頻繁に出現するそうで、新規のダンジョンを潰す為に、強い騎士はいくらでも必要らしい……。




「だからって、他国で攫う!?」


 部屋に戻って、大きな声で独り言を言う。あぁ、またイライラして来た……。


 夜、バッグから食事を出して食べていたら、部屋の隅に黒い霧が出て来た……。そして、とても綺麗な……、美形の魔人が現れた……。


「えっ!ルシー?」

「ああ。ミーチェ、黒猫……、ノアールを知らないか?」


 ええっ!ノアール、あれからルシーの所に戻ってないの?


「ルシー、ごめんなさい。私がノアールにお願いして、ジークを守ってもらっています。ノアールは、あれからルシーの所に戻っていないのですね……」


 ルシーは、心配してノアールを探しに来たのね。優しい魔人さんだ。


「ん?ミーチェの(つがい)がどうかしたのか?」

「ジークが……、<港街オース>で<獣王国>の王女に攫われたんです。薬を嗅がされて、意識がないまま船に連れて行かれた様なので、ノアールに探して欲しいと、お願いしました。追いかけるから、それまでジークを守ってと……」


 ルシーは声を少し荒らげて、


「なんだと!番を攫ったのか……。ノアールは船の中なのだな……、それで戻って来られないのか。ふむ。今、ミーチェは一人なのか?」

「馬のシーダンと一緒です。ここは、<獣王国>へ向かう船の中です」

「なるほど、分かった」


 ルシーは、少し考えている様だった。


「ミーチェ。こういう時は、今度からは私を呼ぶが良い」


 ルシーを呼ぶなんて思い浮かばなかった……。


「もしかして……、私、ノアールに無理なお願いをしました?ごめんなさい……」

「いや、大丈夫だ。ノアールは、海の上だと移動が出来ないだけで力が弱まる事はない」


 ノアール、海の上は移動が出来ないのね。だから、ルシーの所に戻れないのね。悪い事をしちゃったな……。


「ふむ。ミーチェが一人なら、私が番の所まで付き添ってやろう」

「えっ!ルシー、付き添ってくれるのですか?心細かったから嬉しいですけど、いいんですか?」

「かまわん」


 ルシーが、手伝ってくれたら鬼に金棒よ!手伝ってくれるとは言ってないけど……、いてくれるだけで心強い。ジーク待っていてね、助けに行くから。


「ところでミーチェ、ここは狭いな。少し、いじるぞ」


 ルシーは、部屋が狭くて汚いと魔法を掛けた。一瞬で、どこかのスィートルームみたいになりました。ええ~!凄い!広くて快適すぎる……。私のテントの豪快バージョンだ……。


「うわぁ~!ルシーの魔法は凄いですね!ありがとうございます」

「ミーチェ、この程度は凄くはないぞ。フフン」

 

 ルシーは、なんだか機嫌が良くなりました。



 そして、港であった出来事を詳しくルシーに伝えると、また、腹が立って来た……。


「ミーチェ……、怒り過ぎて魔力が溢れているぞ」

「えっ!怒ると魔力って溢れるんですか?ルシー、ごめんなさい。王女の言動が余りにも理不尽で、許せなくて……」


 魔力があると、周りに迷惑を掛けない様に、感情をコントロールしないといけないのね……。


 ルシーは、目を細めてゆっくり答える。


「あぁ……、その気持ちは良く分かるぞ……。好きにすると良い」


 そっか……、ルシーは間に合わなかったのね?だから、この気持ちとは比べられない怒りを……、暴走させたのね……。


「ルシー、ありがとう」


 船を降りたら、真っ直ぐにジークを追いかける!その為に、感知魔法を強化しよう。遠くでも、ジークの居場所が分かる様に……。感知魔法を、いっぱいに広げて練習を繰り返す。鑑定さん手伝ってね。


【分かりました】




 ◆    ◆    ◆


 

 ミーチェ、一人で大丈夫だろうか……。変なのに絡まれたりしてないだろうか……。


『ニャ~ン?(ジーク、船を降りたらどうするの~?)』

「武器もバッグも取り上げられているからね。逃げるのは、それを取り戻してからだね」


 あれは、ミーチェが僕の為に作ってくれた大事な物だからね。手放せないよ。


『ニャ~ン、ニャ~(ミーチェの魔力が付いているから、どこにあるのか分かるよ~)』

「ノアールは凄いな!船から降りたら、どこにあるか調べて欲しい」


 ノアールに手伝ってもらえば、逃げられそうだけど。追手が掛かりるのも面倒だし。


『ニャ~!(まかせて~!)』

「ノアール、頼むよ」


 早くミーチェに会いたいけど、ミーチェと合流してから逃げた方が良いかな?







誤字報告ありがとうございます。ルシーとジークを間違えているとは……すみません。

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