59 カニ鍋
翌日、25階のワープを目指しますが、メインはジャイアントクラブ狩りです。午前中は2人なので、ゆっくり進んで23階でお昼にします。
23階にはセーフティエリアがあるけど、ノアールが来るから使わずにいつもの様に小部屋でゆっくり食べます。
「ジーク、ノアール、お昼からも特上カニ身狙いで頑張るよ~!」
『ニャ~ン!?(がんばるよ~!今夜もカニなべ~?)』
「えっ!2日続けてカニ鍋でも良いの?」
ガタッ!
ジークが立ち上がり、私を抱きしめて言う。
「ねぇ、ミーチェ……。僕はカニのお刺身なら、毎日でも嬉しいよ」
カニの刺身は、美味しいけど。抱き締めて言う事かな?よっぽど気に入ったのね。ふふふ。
『ニャオ~ン!(僕も~、うれしいよ~!)』
ノアールは足元に絡み付く。君たち!可愛いなぁ~。ふふ。
「じゃぁ、ジーク。いっぱい取って、魔人さんも夕食に呼んでいいかな?」
ノアールが、仲間になって手伝ってくれているしね。
『ミャ~ン!ニャニャ~(主、喜ぶよ~!ミーチェが呼んだら来るって、言ってたよ~)』
「ミーチェ、……呼びたいの?」
ジークが、ちょっと悲しそうに見る。
「ジーク、魔人さんはノアールの主なのよ。ノアールが仲間になってくれて、助かっているでしょ?お礼を言っておきたいの。勘違いしないでね?」
ヤキモチを焼かないでねと、ジークの頬にキスをする。ジークは、ちょっと目を見開いて頭を傾げる。
「分かったよ、ミーチェ……」
そう言って、ジークはキスを唇に返して来た。うぐっ、ノアールが見ているよ……。
お昼からは、3人なのでサクサク狩りが出来る。実質ランクAが2人だしね~、ランクBの魔物なんて楽勝です。
ただ、各階に他のパーティーが数組いるので、カニの取り合いになっています。流石、特上カニエリア!人気がある。鉢合わせしない様に、遠回りするので時間が掛かってしまう。
25階のワープを取って、10階の辺りの小部屋で野営をする。夕食の準備が出来たけど~、魔人さん来てくれるかな?
「ねぇ、ノアール。魔人さん来てくれるかな?」
『ニャ~ン!(ミーチェが、呼んだら来るよ~!)』
ジークが、心配そうに傍に来た。ジークににっこり笑う。しかし、何て言って呼べばいいのかな……。
「魔人さん、ルシー!カニ鍋を食べに来ませんか~?みんなで食べませんか~?」
こんなのでいいかな?
すると、部屋の隅に黒い霧が立ち込めて人影になる……。魔人のルシーが現れた……。
その姿は、長い漆黒の髪に真っ赤な瞳、褐色の肌をしていて表現が出来ないほどの美形。綺麗すぎる魔人……。気を緩めると、うっとり見とれてしまう……。
「ミーチェ、呼んだか?」
魔人のルシーが、優しい声で言う。なんだか機嫌がいい?
「はい。ル、魔人さん、ノアールが手伝ってくれたから、美味しいカニ身がたくさん手に入りました。なので、一緒にいかがですか?」
『ミャ~オ!(主~!ミーチェの作る料理は、美味しいよ~!)』
ルシーは、少し微笑んで言う。
「そうか、頂くとしよう……」
傍にいたジークは、私を後ろからそっと抱きしめて、ルシーを見据えている。ええ!ジーク、そんな事をしなくていいのに……。
それを見たルシーは、クスリと笑い、
「ミーチェの番よ、威嚇しなくてもいいぞ。ミーチェは、私の番だった者の孫の様な存在だからな。フフ」
ジークは、ミーチェの番と呼ばれて嬉しかったようで、私を離して嬉しそうに自己紹介をした。
「番!そうか……。僕はジーク、ミーチェの番だ。あの時、ミーチェを僕の元まで連れて来てくれてありがとう。礼を言う」
えっ!ジーク、番って挨拶するの?お礼も言っている。仲良くしてくれるなら良い事だね。
「フフ、私の名前は契約者のミーチェにしか教えられない。だが、特別に番のお前に教えてやろう。私の名はルシーと言う。ただし、他の者がいる前では呼ばぬように。ジークよ、私もミーチェに解放してもらったからな。礼を言われる事ではない」
ルシーは機嫌が良いようで、ジークに名前を教えてくれた。
『ミャ~!ニャ~ン!(主~!早く席に座って食べよ~!)』
「ノアールの言う通りね。食事にしましょう~!」
4人でカニ鍋を囲んで食べ始めた。カニの刺身はたくさん用意した。今日は、焼きガニも用意しました。
「ミーチェ、今日のカニ鍋も美味しいよ~。昨日より美味しいかも。この焼きガニも美味しいね~。もぐもぐ……」
『ニャ~ン!ゴロゴロ……(うんうん、美味しいよ~!ゴロゴロ……)』
「美味いな……」
ルシーも、目を輝かせてつぶやく。
「ふふ、良かった。火傷しない様に食べてね~、おかわりはあるからね」
カニの刺身を食べ始めたら、みんな無言です……。カニ味噌がどんどん無くなる……。本当に、ここのカニは美味しい~。特上カニ身なんて、1度食べたら忘れられない美味しさよ~。
気になっていた事を、ルシーに聞いてみた。
「あの~、ルシーに聞きたい事があるんです。黒猫のノアールが凄く強いのは、ルシーの眷属だからですか?」
「ああ、これは私の番が可愛がっていた黒猫で、長い時を生きているからな。それなりに強いのだろう」
「だから、ミーチェに懐いているのか……」
ジークは、納得したように頷いている。
「ミーチェは、料理が上手いな。美味い食事をご馳走してくれるなら、いつでも呼んでくれていいぞ」
鍋でも、褒められたら嬉しいよね~。ふふふ。
「ありがとうございます。ルシーのお口に合いました?良かった~、またお誘いしますので、食べに来てくださいね。ふふ」
カニ鍋パーティーも終わり、ルシーとノアールは帰って行った。
テントの中で、ジークは凄く機嫌がいい。
「ねぇ、ミーチェ。僕はミーチェの番だって。フフフ」
ルシーに言われたのが、そんなに嬉しかったの?ソファーで、ジークは子どもみたいに喜んでいる、可愛いなぁ。
「ねぇ、ジーク。どうして番って言われたのが、そんなに嬉しいの?」
ジーク曰く、こちらの恋愛事情は、日本とは違っていて特定の相手とずっと一緒にいる事はないそうです。恋人がいても、気に入った人がいれば交わったり、相手を替えたりするそうです。えええっ!
「えっ!じゃぁ、王族とか貴族もそうなの?」
この世界は、貞操観念がない?低いの?だから、『宵の明星』のアイーダさんやシャーロットさんみたいな人がいるのね……。横にいる私が無視されるわけだ……。
「王族や貴族は、血筋を守る為に契約魔法で婚姻関係を結ぶんだよ。他の人の子を産まない様にね」
「へ~、契約魔法かぁ。浮気出来ないように魔法で縛るのね……」
ジークが『浮気って何?』みたいな顔している。浮気の概念が無いのね。私が、ジーク以外の人と遊びに行っても浮気じゃないのね……。しないけど。
逆にジークが他の女の人と……、考えてもみなかった。それは、浮気じゃない普通の事。その時、私はどうするだろう……?やめ!タラレバは、止めておこう。その時に考える!
「ねぇ、ジーク。番って夫婦って意味よね?」
私には、動物に使う表現に聞こえるんだけどね。
「ミーチェ。魔人が言う番はね、2人で1人。お互いが替えの効かない存在・相手って事だよ。番に巡り合えたら、魂が満たされるから死ぬまで一緒なんだよ。フフ」
それは、なんだか照れる。くっ、顔が赤くなっていく……。
ジークが優しく微笑んで、手を伸ばしてくる。
「ミーチェ、可愛い……。好きだよ」
「うん、私もジークが好きよ……」
ジークに抱き寄せられて、優しくキスを交わす……。ジークの舌が絡まり、だんだん深いキスに……。
最近、ダンジョンの中とか関係なくなってきたなぁ……。
ジークの求めに応じてしまう……。




