40★黒猫ちゃん
翌朝起きると、ジークが驚くことを言う。ステータスの祝福の数字が増えているって言うの。おかしい……。だって、あれからキスしかしてないのに……。
「ねぇ。ミーチェの鑑定スキルが上がったから、何か教えてくれるかもしれないよ?ミーチェの鑑定に聞いてみて?」
ジーク、聞きたくないけど……。
「うん、聞いてみるね……」
ジークは、ステータスを開く。
名前 ジーク
年齢 22歳
HP/MP 580/223
攻撃力 118(+6)
防御力 122(+5)
速度 108(+3)
知力 61(+2)
幸運 72
本当だ。攻撃力と防御力が増えている……。ジークに言われて、ステータスの攻撃力部分に、触れる様にして聞いてみる。
「鑑定さん。ジークのステータスに書いている、(+)表示の祝福はどういう仕組みになってるの?教えて!」
ジークのステータスの横に小窓が開く。
【ジークの攻撃力は、118+ミーチェの祝福(+6)分、加算された値124になる。ただし、祝福の部分は、本人と格上の鑑定持ちにしか見えない】
ジークの言う通り、鑑定さんが教えてくれた。
「ほぼ自分にしか見えないのは良いけど、なぜ、祝福が増えたかは教えてくれないんだね」
そんなの、知りたくてもジークの前では聞けない。恥ずかしい回答の予感しかしないもの……。キスでもランダムに祝福を与える事があるとかね。
朝食を済ませて、魔素狩りに向かった。今日は、10~15階で狩りをする。夜、ステータスを確認したら、12歳になっていました。
名前 ミーチェ
年齢 12歳
HP/MP 108/100
「ジーク、12歳になったよ。順調に戻ってる」
「そうだね、強めの魔物を狩れば、早く16歳に戻るんじゃないかな」
今夜もジークの膝の上に載せられ、ハグされている。
「ミーチェ、10歳の時の幼さが少し無くなってしまったよ。ミーチェ、こっち見て。12歳のミーチェを良く見せて」
ジークが、愛おしそうに見つめる。うぅ、見つめられると、恥ずかしいじゃない。ぐぅぅ、これが溺愛されるってやつかなぁ……。違う?
翌日、一度ダンジョンを出て、アイテムを換金しに行く事になった。10歳から、一気に16歳に戻ったら、びっくりされるもんね。そろそろ、食材も補充したいしね。
今回は、買取りカウンターで、上質肉も全部換金してもらった。
「おう!ジークとお嬢ちゃん。ん?嬢ちゃん、少し大きくなったか?」
身長が伸びたら、気が付くよね~。胸も少し育ってきたし……。
「はい、元に戻れるように頑張ってるんですよ。次に、ここに来る時は、もう少し大きくなってると思います」
「そうかそうか、頑張れよ!」
私は、にっこり微笑み、テッドさんにペコリと頭をさげる。
「ミーチェ、行くよ」
今回の換金額は、金貨46枚と銀貨5枚でした。私の取り分は金貨23と銀貨2枚。
その後、市場に行き、パンと野菜を大量に買った。ジークが、服屋に行くと言い出した。
「ミーチェ、その服小さくなって来たから、新しいの買うよ」
うん?小さくって、膝は隠れてるよ。マントも来ているから、見えないのに……。
「ジーク、膝も隠れているから、まだいいよ」
「ダメだよ。ミーチェ、足が見えてるじゃないか……」
そうなの?膝下も、見せたらダメなの?そういえば、行きかう女性の服装は、みんな足首まである。足を見せてるのは、冒険者の女性ぐらいです。あれ……?私、冒険者よ……。
ジークに連れられて、高級店の服屋に来た。試着を始めると、ジークがニコニコしている。
「ミーチェ、そのピンクの服、すっごく可愛いよ!さっきの水色も可愛いかったけど。両方買おうか」
「ジーク、ありがとう。私ね……、すぐに大きくなるから1枚でいいの」
今回は、淡い水色の足首まであるワンピース。ピンクなんて、着た事がないから、水色を選びました。ジークからのプレゼントです。早速、着替えて屋台の食べ歩きに行った。ふふ、食べ歩きは楽しい~。
今日は、宿屋に泊まりました。最近はずっと、ここの部屋風呂付の宿です。宿に食堂が付いているので、食事に出かけなくていいから、楽なんですよね。
夕食を終えて、部屋でゆっくりしてます。もちろん、今日も膝に乗せられてます……。ジークの泣いた顔を見たから、断れない……。
「ミーチェが、大きくなったら出来ないからね~。ミーチェ、可愛いよ。フフ」
もう12歳よ。2人きりだからいいけど……。でも、イチャつくのは照れる、中身12歳じゃないから。
「ねぇ、ミーチェ。明日から、ダンジョンに入るけど、15歳まで頑張るからね」
「うん。分かった、ジーク」
ジークは耳元で囁く。
「ねぇ、ミーチェ」
「ひやぁ~!ジーク、くすぐったいよ」
「早く15歳になって。もう、キスだけじゃ……」
ジークは、耳たぶを甘噛みする。ぐふっ、噛んだぁ……。
翌日は、15階からダンジョンに入って、狩りの様子を見る。問題なかったので、その日は18階で野営をした。
「ミーチェ、ステータス上がった?」
「うん、13歳になってる。MPは200になったよ。ここからが、上がりにくいんだよね。確か、12から16歳になるまで、4か月ほどかかってたし」
「この辺りの魔物はランクBだから、前ほどは、時間掛からないと思うよ」
そっか~、<始まりの街>の依頼は、ランクEとかDの魔物だったもんね。
翌日は、18~20階の間で狩りをした。20階へと降りる階段で、お昼を食べようとしたら、鳴き声がした。
『ニャ~』
鳴き声の方を見ると、階段の下から黒猫が登って来た。
「えっ!黒猫ちゃん?」
「ミーチェ!離れて!」
突然現れた黒猫に、ジークが、剣を抜こうとするのを慌てて止める。
「ジーク!大丈夫よ。この子は魔人さんの眷属で、襲ってこないから。前に話した、洞窟にいた黒猫ちゃんよ」
そうだよと、言わんばかりに尻尾を揺らして、近寄って来る。
「か、か、可愛い~」
『ニャ~!』
ゴロゴロ鳴いて、頭を擦り付けて来る。これは、たまらない……。
「く、黒猫ちゃん。ど、どうしてここにいるの?魔人さんに付いて行かなかったの?」
「ねぇ、ミーチェ。その猫と話せるの?」
「話せないけど、話しかけたくなるのよ。ジーク、猫好きはね、みんなこうなのよ……」
ジークに弁解しながら、黒猫ちゃんの頭を撫でた。可愛いよ~、癒されます。
お昼を食べ終わる頃、黒猫ちゃんはスッと何処かへ行った。ちゃっかりお昼を、食べて行きましたよ。
お昼からも、地道に狩りを続ける。夜は19階で野営をした。夕食は、上質肉のステーキとコカ肉とキノコのシチューにしました。
「ミーチェ、美味しそうだね~。いただきます」
目をキラキラして食べるジークは、何度見ても癒されます。その様子を堪能していたら、鳴き声が聞こえた。
『ニャ~。ニャ~!』
黒猫ちゃんが、部屋の前で鳴いている。結界石で部屋に入れないのね。ジークも黒猫を見ている。
「ジーク。黒猫ちゃんが、ご飯を食べたいみたい。結界内に入れてもいいかな?」
「そうだね、ミーチェがいいなら、いいよ。ミーチェの料理を食べに来たんだろうしね」
ジークの許可が下りたので、黒猫ちゃんを迎えに行った。手を伸ばすと、黒猫ちゃんは待っていたと言わんばかりに、飛びついて来た。
「ぐっ、か、可愛すぎる。黒猫ちゃん……」
「ミーチェ。その猫は魔物だからね。忘れないでよ」
ジーク、分かっていても、可愛いのは可愛いんですよ~。黒猫ちゃんは、ステーキとシチュー両方ぺろりと平らげて、
『ニャ~ン!』
一声上げて、野営部屋から出て行った。かまって欲しい時だけ、近寄って来て……、なんて猫らしい魔物!可愛い~。
※ ※ ※
「ん?どこに行ってたんだ?」
『ニャ~ン。ニャ~!』
「フフ。そうか、旨かったのか」
『ニャ~!』
「そうだな。あれは、助けは呼ばぬだろう。お前の好きにするといい」
12/22 第2章から、手直しを始めてます。すみません。




