39★ランクE
朝、ジークの寝顔が……、寝顔もイケメンなのね。しばらく、眺めていよう。ふふ。
目が覚めたみたい……にっこり微笑んで言う。
「おはよ、ジーク」
「ん……、ミーチェ、おはよう」
ジークが、一瞬眠そうな顔をして、にっこり微笑む。ジーク、可愛い。
「ねぇ、ミーチェ。ステータスは、どうなってる?」
「うん、ちょと待ってね。ん~、(かっこ)が取れてる」
ジークに、ステータスを見せる。
名前 ミーチェ
年齢 10歳
HP/MP 108/ 80
「ほんとだね。ミーチェ、今日は昼頃まで、もう少し強めの魔物を狩るよ。その後、1度ダンジョンを出てギルドに行くからね。昨日の調査が、どうなったか知っておいた方がいいだろうから」
「うん。分かった」
MPは減ったけど、HPとか他のステータスは、前のままだしね。魔法も、ランクFだった頃に使っていた、風魔法を使えば問題ないだろうし。
朝は簡単に済ませて、10階を目指して進む。開幕に私が風魔法を放って、ジークに仕留めてもらう。10階に着く頃には、11歳になっていた。見た目は、あまり変わらない。身長が少し伸びたかな?程度です。
「ミーチェ、いい感じだね。思った通り、魔素の取り直しだね」
「うん。ジークの言う通りだった。良かったよ」
本当に良かった。戻らなかったら、どうしようかと思ってた。
ダンジョンを出て、ギルドに向かう。専用カウンターに行くと、テッドさんが私を見て。
「んん?嬢ちゃんが呪われたのか!災難だったな~。ジーク、面倒見てやれよ!」
テッドさんが、からかうように言う。
「テッドさん。ジークは、面倒見がいいんですよ」
私は、ニッコリ笑顔で答える。
「ガハハハッ!そうか!ジーク、カードとアイテムを出せ」
「ああ」
今回は金貨118枚と銀貨4枚でした。
「そうだ!お前ら、ギルド長が顔を出せと言ってたぞ。伝えたからな!」
「分かった」
受付に行き、ギルド長が呼んでいるのか確認する。しばらく待ち、2階の応接室に連れて行かれた。中で、ギルド長とクライブさんが話をしていたようで、ギルド長が声を上げる。
「おお、来たか!こっちに座れ」
そして、クライブさんが優しく話しかける。
「ジークとミーチェ、案内ご苦労だったね。まだ、調査中なんだけどね。分かった事だけを、先に共有していたんだよ」
ジークは先に座り、私はジークの横に座る。ギルド長が、
「あの魔法陣は、かなり昔に作られた物のようで、魔力があれば、勝手に起動・発動してしまうらしいぞ」
やっぱり壊れているんだ……。それとも、罠になっていたのかな?
「報告してもらって助かったよ。下手をすると閉じ込められるからね。君たちが帰った後、あの魔法陣を起動させたんだ」
ビックリした。洞窟に飛んだんだ……。
「壁に文字が書いてあったそうだよ。まだ、解読されていないけどね」
日本語だもんね……。ここは冷静に、知らないフリをしないとね。封印の部屋は、まだ見つけていないのかな?それとも秘密にするのかな?考えていると、ギルド長が、
「そういう事だ。ジークとミーチェ君、魔物の事、何か思い出したら知らせてくれ。ああ、それとミーチェ君!君は、今日付けでランクDに昇級だ。ランクEで、いくらMPだけ無くなったと言われても、その容姿ではダンジョンには入れられんからな」
なんですって!ランクDになったら、ジークが育成クエストを、達成してしまう。
「それにだ。ランクEで、ダンジョンの20階に、入ってるヤツなんていないぞ!」
「そ、それはジークがいるから……」
弁解しようとしたけど、それでもだ!と言われる。うぅ……。
「たしかに、ランクEで、その容姿はねぇ……。まぁ、入口で止められない様に、警備騎士には僕からミーチェの事を申し送りしておくよ」
クライブさんが、微笑んでそう言った。
「分かった。もう話はいいか?しばらく、ダンジョンに籠る」
ジークは素っ気なく答えて、部屋を出て行く。私はペコリと頭を下げて、ジークを追いかける。
1階に降りると、酒場の方が賑やかだ。
「まあ!ミーチェちゃん、会いたかったわぁ~。今日も可愛いわね!」
この声は……。エリスさんが、酒場から両手を広げて走って来る。私に抱き着こうとしている?えっ?思わず身構える。ジークが、グイッと私を抱き上げ、エリスさんから隠す様にする。
「困るんだが。ミーチェが潰れるだろ……」
ぐっ!今、私が潰れそうだよ……、ジーク。
「もう~、そんな事しないわよ!ねぇ~、ミーチェちゃん。うふふ」
と、エリスさんが私ににっこりと微笑む。キレイな人……、ちょっと怖いけど。酒場の方で、サイモンさんとアイーダさんの笑い声が聞こえる。賑やかだぁ……。
「ミーチェ、受付に行くよ」
ジークに抱っこされたまま受付で、ギルドカードを出す。受付のお姉さんが、不思議そうに私を見ている。そして、思い出したように、
「あ!ミーチェさんですね。ギルドカードお預かりします。昇級の手続きをしますね」
受付のお姉さんは、手早くカードを処理してくれた。
「お待たせしました。こちらが、ランクDのプレートになります。ミーチェさんは、育成クエストの対象者から外れました」
渡されたギルドカードは、銅になっている。おぉ、中堅の冒険者の印。ちょっと嬉しい。けど、中堅って言うほど冒険してないんですけど……。
「ありがとうございます」
ジークを見ると、微笑んで見ていた。釣られて微笑む。
「ジークさん、育成クエストが終了しましたので、ギルドカードを出してください」
お姉さんは、ジークからギルドカードを受け取る。
「ジーク……、クエストが終わってしまったね」
ジークは、耳元で小さな声で言う。
「ミーチェ、大丈夫だよ。ここでは、強要されないと思う」
受付のお姉さんは、ジークにギルドカードを渡すと、
「ジークさん、育成クエストお疲れ様でした。Bランクに昇格を希望されるなら、申請書を提出してください」
「いや、まだ希望しない」
ジークは、手を上げて受付から離れた。そして、私にウインクしながら、
「ね、ミーチェ」
ジークの予想通りで、一安心です。ここ<森のブラージ>では、実績を積んでいないから、言って来なかった様です。
「ねぇ。ジーク、帰ろ?」
ジークがおでこを引っ付けて。
「あぁ。ミーチェ、帰ろ」
それを見て、エリスさんが、
「ホント仲がいいわね~、妬けちゃう~!」
おかしな言葉が聞こえる……。まだ、そばにいたのね……。
「エリス!2人パーティーに構うな、って言ったのお前だろー!」
酒場から怒鳴り声が聞こえて来る。
「アイーダ、うるさい!ミーチェちゃんは別なのよ~!」
エリスさん、酔っぱらってるのかな?
「ミーチェ、行くよ」
ジークの言葉に、頷いた瞬間。
「ミーチェちゃん、お願い~!顔を見せてね~」
エリスさんが、手を伸ばしてフードを取った。
「えっ?」
「キャー!!なんて……、可愛いの~!サイモンの言う通りだわぁ~!黒髪が、輝いてるわぁ~。ミーチェちゃん、可愛いわねぇ~。うふふ」
ジークが、エリスさんを睨んで、何するんだと怒りながら、フードを被せる。ジークを宥めながら、
「ねぇ。ジーク、行こう……」
ジーク、そんなに怒らなくても。やっと、ギルドから出てダンジョンへ向かった。ふぅ……。
最近、ダンジョンの5階で野営するのが、当たり前になってきた。今夜も、魔素が多そうなコカ肉で唐揚げを作る。そして、卵入りキノコのスープ。ジークにだけ、パンを切ってチーズを乗せて焼く。
「ねぇ、ミーチェの料理スキルは、AじゃなくてSじゃないの?」
えっ、私としては、最高の褒め言葉ですよ!素直に嬉しい。自然と、にっこりと笑顔になる。
「ジーク、ありがとう!」
「ん?僕の方こそ、ありがとう。ミーチェ」
今夜も、優しくキスされる。ベッドで寝るまで、ジークが絡まってくる……。このまま、のんびり出来たらいいな~。
翌朝、ジークに驚かされました……。
誤字報告、本当にありがとうございます。m(__)m




