38★調査
翌朝、ダンジョンに向かうと、入口に大勢の人がいた。調査団と騎士団、護衛の冒険者が2パーティー。見覚えのある人達がいる。
1組は『宵の明星』。そして、もう1組は、サイモンさんのパーティー?『ライジング』だったかしら?
「ねぇ、ジーク。あれはサイモンさんのパーティーメンバー?」
「うん、そうだね。全員じゃないようだけど」
サイモンさんが、ジークに気が付いたようで、大声でこっちに来た。
「よお!ジーク!お前も調査護衛か?って、ええっ!ミーチェか??」
「おはようございます。サイモンさん……」
サイモンさん、朝から声が大きいですね……。
「おおおっ!ミーチェか!?また、可愛くなりやがって!ああ?ミーチェ、お前が呪われたのか?よし!抱っこしてやろう!」
えっ!嫌ですよ、何で抱っこ?ジークの後ろに隠れようとしたら、ジークに抱っこされた……。
「サイモン、いい加減にしろよ。ミーチェは、僕のパーティーメンバーだと、何回言えば分かるんだ……?ところで、サイモン。ソロじゃなかったのか?」
ジークが、ロリコンに見えません様に……。
「ああ、メンバーが2人こっちに来たんだ。3人だが、ランクAだから声がかかった」
ランクAが3人もいたら、20階なんて余裕だろうしね~。Bランクまでの魔物しかいないしね。『宵の明星』と連携だったら、サイモンさんがリーダーなのかな?
「なるほど。そうだ、サイモン、僕の記憶は戻ったから」
「おお!ジーク、良かったな!いや、良かったのはミーチェか?」
サイモンさん、その通りです。
「はい」
にっこり笑った。
「まあ!あなたが呪われたの~?すっごく、可愛くなっちゃって~」
色っぽい声がした。声の方を見ると、『宵の明星』のエリスさんだった。
「おはようございます」
顔は知ってるから、挨拶しておく。
「まぁ!挨拶してくれるの~?嬉しいわぁ。私はエリスって言うのよ。可愛いわぁ~、仲良くしてね。可愛いわぁ~うふふ」
えっと……。何だか、前と違う?顔が引きつる……。ジークも驚いている。ジークの服をギュッと握って、挨拶する。
「えっと、ミーチェと言います」
名乗られたら、名乗り返すのがこちらのマナーっぽいです。
「まあ!ミーチェちゃんと言うのね!可愛い名前ね~」
「エリス。いい加減にしろよ。怯えてるじゃないか」
『宵の明星』のリーダーが、エリスを窘める。
「まぁ、オーエン!何もしてないわよ!」
「当たり前だ。すまないな~、コイツ、可愛い子が大好きなんだ。女の子には、悪さはしないから大目に見てくれ」
女の子には?これは、何て返事をすればいいのかしら……。
「ミーチェは、僕のパーティーメンバーだから、かまわないで欲しい」
ジーク、相手が女性でも言ってくれるのね……。ありがとう。ジークをギュッとしておく。はぁ~、なんか、もう疲れた……。
揃ったようで、クライブさんに呼ばれた。ジークとダンジョンの入口に向かう。途中の騎士団の視線が怖い……、見られるのに慣れていないからね……。
入口に来ると、調査団の人達から質問攻めです。ジークが、全部答えてくれました。ジーク、本当に頼りになる。
「ジーク、ありがとうね。全部任せて、ごめんね」
私の方が、年上なのにね……。
「ミーチェ、気にしないでいいよ。そうだ今度、あれ!フレンチトーストを作って欲しいな」
ジークが優しく微笑んで言う。
「ジーク、喜んで作るよ!ふふ」
20階へは、騎士団が先にワープする、その後に、クライブさんとジークと私、最後に調査団と護衛の冒険者。
騎士団は2つに分かれる。第一部隊は、20階の魔物を間引きに行った。第二部隊は、私達の前後に配置され、魔法陣のあった部屋まで、魔物を狩りながら移動する。
部屋の前に着くと、ジークがクライブさんに言う。
「この部屋だ。ほぼ、部屋全体に魔法陣が浮かんだ。魔力の多い者は、気を付けてくれ」
「ここか……、分かった。調査団前に!魔力の多い者は、まだ入るな!護衛もだ!」
調査団のメンバーが、部屋に入って行った。護衛は中を伺いながら外で待機している。私達も外で待っていた。
調査団が調べた結果、床に魔法陣は見えないが、あるらしい。一定の魔力がある者が入ると、起動する仕組みになっているそうです。
「ミーチェじゃなくても、起動するんだね」
「偶々、私だったのね……」
ルシーを解放できたから、私で良かったのかもね。1,000年放置されて、殺されるなんて酷い話……。いえ、魔法陣の存在も伝承されていないなら、更に放置される所だったのよね……。私が考え込んでいたら、
「ミーチェ、疲れた?帰ろうか?」
ジークが、心配そうに聞いて来た。
「え?もう、帰れるの?」
「クライブさんに言うよ。僕達の案内は終わったからね」
そういって、ジークはクライブさんに話を通してくれた。ミーチェが、呪いのせいで体調が悪いと、休ませたいと。
ジーク、ありがとね。
「ねぇ、ミーチェ。バッグに、食料は残ってる?このまま、5階辺りで籠ろうか?」
「うん。食料はあるよ。ゆっくりしたいね……」
高級宿より私のテントの方が、ベッドもお風呂もいいものなのですよ。貴族用だからね。
ジークと一緒に、ワープクリスタルに向かう。5階にワープして、小部屋で野営の準備。そして、少し早いお昼にする。
ジークのリクエストに答えて、フレンチトーストを沢山焼いた。パイナップルもどきを添えて、蜂蜜もかける。
「ジーク出来たよ~」
「おお!早速作ってくれたんだ。ミーチェありがとう!」
美味しそうに食べるジークを見ると、ポカポカします。ジークが、記憶を無くした時、どうしようかと思ったけど、元に戻ってよかった。本当に良かった……。
「ミーチェ、美味しいよ!とっても、もぐもぐ……。蜂蜜が、よく合うね。もぐもぐ……」
「ふふ。ジーク、ゆっくり食べてね」
目をキラキラさせて、嬉しいね。
「ねぇ、ミーチェ。この後、魔物狩りをしよう。3~4階で蜂蜜を取ろうよ」
「うん。蜂蜜を集めよう~」
その後、2~3時間キラービーを追いかけた。途中、他のパーティーと遭遇したら、私を見て子どもが?と驚かれていたけど。
夕食は、魔素が多そうな上質肉の串焼きと、コカ肉でお団子スープを作りました。
テントでお風呂に入ると、湯船で寝そうになる。あぁ……、これ、この眠さ、この世界に来て直ぐの頃にもあったなぁ~。
ジークは後で入ると言い、ソファーで、私を膝の上に座らせるが、ちょっと雰囲気がいつもと違う。
「ジーク……?」
「ミーチェ……、記憶を無くしてごめん。ミーチェを、忘れてごめんね……」
あぁ、気にしているのね。思い出してくれたから、もういいのに。
「ジークは、私を庇って頭を打ったのよ?謝らないで、思い出してくれて、ありがとう」
ジークは、私を優しく抱きしめて、耳元で囁く……。
「ねぇ、ミーチェ。キスしてもいいかな?」
ドキッ!えっ?顔が真っ赤になっていくのが分かる……。えっ!?私、今10歳なんですけど……。幼児体型よ?
「あ、あのジーク?」
ジークは、額にキスをした。
「うん?なぁに?」
あ、額なのか、焦らなくても良かった。
「いえ……」
ジークがアメジストの瞳で見つめる。そして、唇に軽く触れる……。
「あっ……」
何度も優しく触れる。
「ミーチェ。キスだけだよ……」
「うん……」
嬉しいよ。
<森の迷宮>1~5階の石壁の迷路(蔦や草花がある)
【魔物のランクとドロップ品・買取り価格】(カッコ)はレアアイテム
・一角ウサギE:魔石500、肉500、角1,000、毛皮1,000
・キラービーD:魔石1,000、針500、(蜂蜜1,000)
・シルバーウルフD:魔石1,000、牙1,000、(毛皮3,000)
・スパイダーD:魔石1,000、糸1,000
1時間に6~10体位の遭遇で計算してます。




