表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/75

37★呪い


 目が覚めると、ジークに抱きしめられていた。


 あぁ、ジーク……、本当に記憶が戻ったのね。そっと、抜け出そうとすると、ぐふっ、抱きしめられた。


「ミーチェ、おはよう」


 ジークは、優しく微笑む。


「ぐふっ、ジーク、苦しい……おはよう……」


 ジークは、力強かった?ごめんねと言う。2回目だよ!3回目かもしれない……、うん、許してあげるけど……。


 ジークとの話が終わったのは夜遅く、魔力の使い過ぎで疲れていたのか、随分と遅い朝食になりました。


「ジーク、お腹空いた?遅くなってごめんね~」


「いいよ、気にしないで。ねぇ、ミーチェのMPどうなっているかな?」


 ジークに言われて、ステータスを見せた。


 名前   ミーチェ

 年齢   10歳

 HP/MP 108/ 40(80)


「昨日の夜、食べた料理かな?やっぱり、魔素で回復しそうだね。食事が済んだら1回ダンジョン出ようか、昼前なら、ギルドにも人が少ないだろうしね」


「うん。分かった」


 このまま、ダンジョンで籠ってもいいんだけど、あの魔法陣を何とかしないとね……、他にも誰か飛ばされるかもしれない。


「入口の警備騎士に止められるかもしないけどね。子どもが、ダンジョンから出て来たら、おかしいからね」


 私が、小さくなった経緯をまとめる。

・20階の部屋で野営しようとしたら、魔法陣で飛ばされた。

・飛ばされた先で、魔物に呪われて、魔力を取られ子どもになった。

・帰還石を使って戻って来た。

・魔物狩りをすれば、その内に戻るだろう。


「ジーク、凄い!秘密の部分もちゃんと隠れているね」 


「そうなんだけど……。これ報告したら、20階の部屋に連れて行けと言われるだろうね」


 そうだよね~、調査するだろうね。


「私もだよね?」


「ミーチェを、置いてはいけないよ?」


 ありがとう、ジーク。街に行ったら、服を買いに行かないと。ローブの裾を結びあげる。それでも、歩きにくい……。


「ジーク!お願いがあるの。今着ている服が、ぶかぶかなの……子ども服を買いに行きたいの。はぁ、子ども服を早めに……」


 ジークが愛おしそうに見つめて、


「うん。ミーチェ、すぐに買いに行こうね。フフ」


 ジークが、歩きにくそうにしている私を抱き上げて、ダンジョンを出る。


 ダンジョンの入口に、騎士のクライブさんがいた。


「えっ!子どもが、ダンジョンから……?ジークだったかな、その子、どうしたんだい?まさか……?」


 クライブさんと、もう1人の警備騎士が、慌てて近寄って来た。


「ああ、ジークだ。彼女は、僕のパーティーメンバーのミーチェなんだ。」


「えっ!どういう事だい?」


「ギルドでも話さないといけないから、詳しい話はギルドでいいかな?」


「あぁ、分かった。一緒に向かう」


 クライブさんは、後の事をもう1人の騎士さんに任せて、一緒に付いて来た。


 3人で馬車に乗り、ギルドへ向かう。クライブさんは、私をジッと見ている……。ジークに抱き上げられたまま、ギルドに入ると一斉に視線を浴びる。恥ずかしい~!思わず、顔を隠す。


 受付でクライブさんが、


「ダンジョンで、報告の義務が生じる事例が出た。詳しい話を聞きたいので、部屋を貸してもらえるかな?それと、ギルド長も呼んでくれ」


 受付のお姉さんが慌てて、


「クライブ様、ご案内いたします。こちらへどうぞ」


 クライブさんて、偉い人だったのね。だから、みんな見たのね。


 2階にある、応接室に連れて行かれた。


「こちらで、少しお待ちください。ギルド長を呼んで参りますので」


 バタバタと足音が聞こえる。ドアが勢いよく開かれ、顎髭を蓄えた、白髪交じりの40代かな?ギルド長らしき人が入って来た。


「クライブ殿、どうされました?」


「あぁ、ギルド長。忙しい所すまない。先ほど、ダンジョンから子どもが、出てきた。子どもがだ……」


「はあ?子どもが、ダンジョンから?」

 

「そうだ。しかも、その子どもは、彼ジークのパーティーメンバーだと言う。詳しい話を聞く必要があるだろう?本人達もキルドに報告すると言うから、一緒に付いて来た。ギルド長にも、話を聞いてもらおうと思ったんだよ」


「なるほど。それで、そちらの子どもが、ダンジョンから出て来たんですね。彼のパーティーメンバーだと……」


 ギルド長は、私をまじまじと見る。ジークは頷き、ダンジョンでの経緯を話した。秘密の事以外を……。


 ギルド長とクライブさんは、目を見開いて聞いている。


「なんだと!魔物がいる部屋に飛ばされたのか!」


「魔法陣がある部屋なんて、聞いたこともないよ……」


 魔法陣の部屋を知らないなら、封印されている魔人がいた事も知らないんだろうな……。 


「ミーチェが飛ばされた後、床を調べたけど、魔法陣なんてなかった。でも、発動したんだ……」


 私は3人の様子をじっと見ていた。私に質問が来ると、ジークが答える。それに私は頷く。


「ミーチェは、魔物に魔力を奪われ、呪いを受けて子どもになってしまった……。彼女は16歳だったが、今は、見ての通りだよ」


 2人に、その魔物はどうしたのかと聞かれた。私は、走って逃げたから分からないと答える。


「彼女には、倒す力はないよ。ミーチェは、ランクEだからね」


 ギルド長とクライブさんは、うーん、と腕を組んで考え込んでいる。


「取りあえず、魔法陣があった部屋を案内してくれるかな?調査団を連れて行くから。ギルド長、高ランクのパーティーに、調査団の護衛依頼をお願いする。いいかな?」


「はい、クライブ殿。早速、2パーティー集めます。明日の出発でよろしいですか?」


「あぁ、頼む。20階の調査だと、ついでに騎士団も出して間引くか」


 明日の朝、ダンジョン入口まで来るように言われ、解放された。


「私、ずっと緊張してたよ。ジーク、疲れたね~」


 ずっと説明してくれたのは、ジークなんだけどね。


「フフ。ミーチェは、ずっと僕の袖を掴んでたね。さあ、ミーチェの服を買いに行こうか」


 その後、ジークと服を買いに行った。10歳の女の子が、装備出来る防具なんてないし。取りあえず、白っぽい普通のワンピースを買いました。下着も買ったよ、ズレてくるし……。


「ミーチェは、何でも似合うね。可愛いよ。あ!ミーチェ、着替えもいるよね?」


 ジークは、なんだかご満悦です……。


「ねぇ、ジーク。恥ずかしいから下ろして?手を繋ごうよ……」


「ダメだよ。消えちゃうかもしれないだろ?」


 それを言われると、何も言えないです。


「……」


 その日私は、宿屋に着くまで、ずっとジークに抱っこされたままでした……。


 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ