33★光の先に…
眩しい光に目を閉じる……、フッと身体が浮いた。
「えっ!」
慌てて目を開けると、そこは真っ暗な洞窟みたいな所だった。
「ここは……、落ちたの?それとも、飛ばされた?私だけ……?」
光魔法で灯りを作り、周りの様子を窺う。洞窟の壁に何か書かれていた。
「日本語だ!」
そこには、浮かび上がる様に、日本語が書かれていた。
「これは、先輩の迷い人が書いたのね」
『ここに封じているのは、悲しみの余り、怒りに支配された魔人。国中を破壊し、滅ぼそうとした。余りにも強すぎて討伐する事が出来なかったので、ここに封印する。
力の無い者は近寄らないでくれ、魔法陣で魔人の魔力を吸収し、ダンジョンに放出している。魔人を倒す事が出来る者が現れるまで、結界と魔法陣で封印する。封印に、綻びが出ないことを祈る』
えっ?だから、ここのダンジョンの魔物は強いのね。領主さんは、知ってるのかな?う~ん、最初の言葉が引っかかる……。
『悲しみの余り、怒りに支配された魔人』
何だろう、悪い魔人ではないのね……。いつ封印したんだろう……。止めておこう、触らぬ神に祟りなしだよね。嫌な予感しかない……。
どこから、戻ればいいのかな?動いてもいいよね?こんな時に、頼れるジークがいないなんて……。
『ニャー!』
えっ?振り返ると、真っ黒い猫が座っていた。イヤイヤ、怪しすぎるんだけど……。可愛いです!私が猫好きって、知ってるんでしょ?猫アレルギーだから、触れないけど……。きゃ~、可愛いよ!黒猫ちゃん!
黒猫は、ゆっくり近寄って私の足元に座り、頭を擦り付けてきた。
「きゃ~!可愛すぎる!あぁ、蕁麻疹でちゃうよ……。ぐふっ、可愛い……、動けない……」
『ニャ~』
可愛い鳴き声で、呼ばれた気がする……。黒猫は洞窟を歩いて行き、振り返って私を見る。
『ニャ~!』
「えっ?私を呼んでるの?そっち出口だったら嬉しいけど……」
黒猫は少し進んで、また私を振り返る。
『ニャ~?』
「あぁ~、付いて来いって事ね?」
そのまま、黒猫に付いて洞窟の奥に進んだ。段々道が細くなってる気がする…。騙されたかな?
暫く歩いて行くと、あぁ、来てしまった。封印の間かな……?黒猫ちゃんめ!出口に連れて行ってくれると思ったのに……。
床には魔法陣のような文字が描かれていて、そこから光の柱が立ち上がっている。光の柱の中にクリスタルがあり、クリスタルと魔法陣の光で、キラキラしていている。とても綺麗、見とれてしまう……。
光の柱の中央に、クリスタルに囲まれた、俯いた真っ黒い魔人?がいる。髪も服も黒い……、人に見えるけど……。私に、気付いてる様子……。
「人間か……。一人で、私を滅ぼしに来たのか?」
穏やかな声……。恐怖は感じない。
「いえ、違います。ダンジョンの部屋に入ったら、飛ばされて……。黒猫に付いてきたら、ここに来たんです」
顔を上げて、私の方を見る。長い光沢のある黒髪に、真っ赤な瞳、少し色黒で、なんと表現すればいいのか分からないほど美形……。イケメンじゃなくて美形です!うわ~、はい。人間じゃないです。綺麗すぎる。
「魔法陣で転移してきたのだな。フフ、その黒猫は、私のこぼれた魔力から生まれた眷属」
ん?普通の猫じゃないの?じゃぁ、触っても蕁麻疹でない?
「私は、偶然ここに来たんです。貴方を倒すつもりはないです」
「そうか……、久しぶりに誰かと話をしたな……。来た道を戻って、真っ直ぐ進めば、戻りの魔法陣があるはずだ。そこから、出られる」
えっ!何も聞いてないのに、出口を教えてくれる。優しい人じゃない。なんで、今も封印されているの……?
「あの~、気に障ったら申し訳ないのですが……。魔人さん、いつから封印されているんですか?」
魔人さんが、不思議そうに私を見る。
「そうだな……、そろそろ1,000年になるだろうか……」
「えっ!1,000年……」
1,000年!独りきりって酷いよね~。早く倒すか、解放してあげればいいのに……。生殺しだ……。うぁ、同情してしまう……。
「そんなに長く……、一人で?まだ、誰かを憎んだりしてます?」
「もう、誰も生きてはいないだろう……」
魔人さんは、穏やかに、何かを思い出す様に話す。
あぁ、この人は……、この魔人さんには心がある。
「もし、私が貴方を解放する事が出来たら、封印を解く事が出来たら……。罪のない人を傷つける事なく、穏やかに過ごしてくれますか? 」
魔人さんは、びっくりした顔で見つめてきた。
「お前は、私を解放すると言うのか?」
「まだ、出来るかは分からないんですけどね、試してみたいと思って。1,000年も一人なんて、十分に罰を受けたと思うんですよ」
「私に同情したと言うのか?」
「はい。同情しました。今の穏やかな魔人さんは、もう解放されてもいいと思うんです。だから、もう国を滅ぼさないと、約束してくれませんか?」
「約束?もし、破ったら?」
「魔人さんが、約束を破ったら……、私が、また封印します。出来るか分かりませんけどね」
私の鑑定さんに、お願いすれば教えてくれるはず!鑑定さんは、何でも知っているからね。もしかして、鑑定さんは、あの時ぶつかったコアかも知れない……。私が、壊して能力を貰った?融合した?共存している?ん~、ややこしいから、今は考えるの止めておこう。
魔人さんは、優しく微笑む。
「フフ、面白い。約束しよう。あぁ、お前と契約してやろう」
魔人さん、そんな優しく微笑むんだ……。
「ちょっと時間が、かかると思いますけど、待ってて下さいね。私、魔法は好きなんですけど、上手くはないんですよね」
ミーチェは、光の柱に両手を触れる。
鑑定さん!お願い!この封印を解きたいの。この魔人さんを解放したい、どうすればいいかな?
【今のミーチェでは、この封印を解く事は出来ない。知力は足りているが、魔力が足りない。それでも、封印を解きたいならば、体内の魔素を使い、魔力の補充をすれば解く事が出来る。ただし、時間が掛かる】
おぉ!鑑定さんから返事が来た。出来そうね。魔力を込め続ければいいのかな。鑑定さん、ありがとね。
両手に魔力を集める。だんだん、嫌な汗が出てきた……。
どれぐらい経っただろうか……、何かが割れる音がした。
パリンッ、・・・・・・光の柱が消える。
その音が聞こえると、立っていられず、座り込んでしまった。
「ふぅ~、出来たかな?魔人さん、どうですか?動けますか?」
封印解けたかな。はぁ~、すっごく疲れたぁ~。このまま横になりたいぃ……。お腹も空いたぁ……。
「ああ。封印が解けた様だ……」
「良かった。これで自由ですね。世界を滅ぼさないで下さいよ?ふふ」
へたり込んでしまった私に、魔人さんが近づいて来た。
「約束しよう。罪のない者の命を取らないと。そして、契約しよう、お前と。どうしても助けが欲しい時、私を呼ぶといい」
「えっ?契約?」
魔人さんを見上げると、優しく微笑んでいた。
「ああ。お前の頑張りに報いて、気が向いたら助けてやろう」
「ふふ。気が向いたらなんですね」
言い方が可愛くて、つい微笑む。可愛いと言ったら怒られそうね。
「ああ。私の名は、そうだな……、ルシーと呼んでもらおう。お前の名は?」
「私は、ミーチェと呼ばれています」
魔人さん、本当の名前じゃないのね。
「私の名前は、人前では呼べぬからな。呼ぶのは、私と2人の時か召喚したい時だけだ」
「分かりました。貴方の名前は秘密なんですね」
魔人さんは、私を抱き上げ名前を呼んだ。
『ミーチェ、お前と契約する。私はルシーだ』
そして、私にそっと口付けをした……。えっ!?息が止まる……。口付けされた唇が、一瞬熱くなる。
「ミーチェ、お前は懐かしい匂いがするな……。血に連なる者か、迷い人なのだな」
魔人さんは、優しく見つめて言う。そうか……と。
そんな綺麗な顔で……、ぐぅ、キス……された、契約するなら仕方ないの?うぅ、顔近すぎますよ……。え?今、なんと?
「ええっ?匂いで迷い人って分かるんですか?」
フフ、秘密だ。そう言って、ルシーはクスクス笑う。
私が匂うのかと思い、浄化魔法をかけようとしたけど出来ない。……魔力を使い切った?
「ミーチェ、今は魔法を使えないぞ。子どもになったからな」
「えええっ!!」
今なんて、言いました?子どもになっていると?あぁ……、そう言えば、鑑定さんが体内の魔素を使ってと、言ってた様な……、マズイ……。
子どもだから目線がおかしいのね……。マズイ。
えっ!服がダボダボです……。マズイわ!
慌てて、ステータスを見る。
名前 ミーチェ
年齢 10歳
HP/MP 108/ 10(80)
攻撃力 67
防御力 63
速度 90
知力 155
幸運 96
スキル
・鑑定S ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法S
・火魔法A ・土魔法A ・風魔法A ・水魔法A
・光魔法S ・闇魔法A ・無属性魔法S
・雷魔法A ・氷魔法A ・聖属性魔法S
・短剣D ・回復魔法A ・時空間魔法S
な、何!このステータス……、10歳!MPの10(80)って何?MPは80ですが、使っちゃって10しかないって事?それとも、後MP10使うと9歳になるって事?16歳だったのが10歳って、6歳分の魔素を魔力にしたって事?
うわぁ……、頑張って集めた魔素だったのに……。う~ん、また集めなおしたら、元に戻るかな?困った、ステータスの10歳は隠せるけど、見た目が子どもは隠せない……。どうしよう、魔力ないと帰れないんじゃないの?
「あ、あの魔人さん……」
「ルシーと呼んでくれ」
「はい、あのルシー……、魔法使えないと帰れないですよね?」
「そうだな。魔法陣は、魔力を使って起動するからな」
勝手に起動して動いた、あの部屋の魔法陣は、壊れてるんじゃないの?戻ったら、あの部屋を土魔法で埋めておこう……。ああ、今、魔法使えないんだった……。うぅ。
「ルシー、お願いがあるんです」
「うん?早速か?」
「はい、ここへ飛ばされる前の部屋に、パーティーメンバーが残されているんです。そこに戻りたいんです」
「もう、居ないかもしれないぞ?」
「それなら、それで良いんです。でも、きっと心配してるから、そこに連れて行って欲しいんです」
ジーク、心配してると思う。それに、この状態を相談できるのはジークだけだし……。
MP無くなってしまって10歳って、どうしよう……。
見た目も10歳らしいし……。
ジーク、どうしよう……。服と下着がダボダボです……。
※ ※ ※
??:「呼ばれた……。起こさないで、ここ気持ちいいのに……」
??:「ありがとう?……うん」
誤字報告ありがとうございます。




