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25★岩山

 

 馬車は<王都>を出発して4日目、補給のため街に寄る。この街は、<森のブラージ>への道と港町への道の中継地になっていて、<始まりの街>より大きい。


 ここで2時間ほど停車。ここで降りる人やここから乗る人もいる。


 みんな食事に行くようなので、私達も、近場のお店に入ることにした。奥のテーブルに座って、ジークが魚料理を頼んでる。


「えっ!ジーク、ここ魚料理あるの?私も食べたい~!」


「ミーチェ、そんなに可愛いく言わないでよ。ここは、港町から魚が届くんだ。塩漬けにされたものだけどね」


 ぐっ、周りに聞かれたらバカップルだと思われるでしょ……。


 ここから港町まで6日ほどかかるんだって、生は無理だね。あ、氷漬けで…、手間賃が掛かって高級魚になっちゃうか~。


『宵の明星』メンバーが、お店に入って来た。


「あ、ジークだ!一緒に食べようよ」


 アイーダさん、目ざとくジークを見つけて、手を振る。アイーダさんは、馬車で移動中も、ずっとジークの見える所にいる。休憩でも、私を無視して、ジークに話しかける。


「アイーダ、お邪魔しちゃダメよ」


「アイーダ、いい加減にしろよ。すまんな」


 エリスさんと、金髪で大柄なリーダーっぽい戦士さんが止めてくれた。


「ちぇっ、みんなで食べた方が美味いのに……」


 ジークは知らん顔してたけど、私はペコリと頭を下げた。アイーダさんの強引なアプローチにイライラしてたから……。


「ジーク、お魚美味しかったね~。時間があれば市場に寄りたいけど、時間がないね、残念」


「そうだね。連れて行ってあげたいけど、市場を見て回る時間ないね。そうだミーチェ、ここで降りて次の馬車にするかい?急いでないし」


 次って、7~10日後じゃないの?


「市場の為に、そこまでしなくていいよ。ふふ、そうだジーク!良いこと思いついた!森の迷宮の次は、海に行こうよ」


 もう次の行先を決めるの?と、ジークと笑いながら馬車に戻った。


 馬車は2台のままで、商人の馬車は6人。定期馬車の方に、冒険者が乗り込んで来て、私達入れて10人になった。


 冬になると、北の方や海が厳しくなるので、暖かい<森のブラージ>に向かう冒険者が、増えるそうです。冒険者の待遇もいいらしい。


「えっ!宿代が、無料なの?」


「うん。聞いた話では、迷宮の魔物が強くて、溢れるそうなんだ。だから、冒険者に長く居て、魔物を狩って欲しいんだって。冒険者なら、宿の大部屋は無料らしいよ。代金は、領主持ちだなんだって」


 大部屋は泊まれないなぁ~、女性ばっかりでもね。


「へぇ~~、風呂付部屋は?」


「あはは!きっと、そのままの値段なんじゃないかな。クスクス」


「そう……、残念」


 高級宿は対象外だよね~。ジーク、そんなに笑わなくても……。


 それから5日目、補給する村に着いた。ここからの山越えに、強めの魔物が出て来るそうです。順調に行けば、後4日ほどで<森のブラージ>。


 村を出て馬車が進むと、ゴツゴツした岩山が見えてきた。岩山を警戒しながら登って行くと、遠くに大きなトカゲが見える。


「ジーク、見て!あそこに大きなトカゲがいるよ」


「あれは、オオトカゲだね。温厚な性格で、何もしなければ襲ってこない。皮と肉は売れるよ」


「へぇ~、食べられるんだ……」


 あれを食べるのか……。もしかして、<王都>の店で食べたのって……。ジークは、ニコニコしてる。聞かないよ。ジーク、クスクス笑わないで……。


 岩山に入って行き、しばらくすると馬車が止まった。魔物が現れたようで、護衛達の声が大きく響く。


「ロックリザード3匹だ!後衛は馬車の警護。それ以外は攻撃だ!」


「「「おおっ!」」」


「「了解!」」


 『宵の明星』のリーダーが、護衛の指揮を執る。手早く倒され、それぞれアイテムバックに入れていた。さすが高ランクパーティー、アイテムバックを持ってるのね。


 岩山を登り切った辺りで、今度はゴーレムが現れた。


「ジーク!あれが、ゴーレム?顔がないよ?のっぺらぼうだね……」


「そうだよ。ミーチェ、危ないから座って。で、のっぺらぼうって何かな?」


 目鼻口、が無い顔の事を言うのよ、と教えながら、戦い方を見ていた。特殊な武器じゃないとダメージを与えられないようで、盾役が引き付けて、魔法使いが攻撃してる。他の前衛は馬車の警護。


 ゴーレムは1体だったので、それほど時間も掛からずに倒された。処理をどうするのかと見てたら、魔石だけ取り出して、後は谷底に落としていた。


「ねね、ジーク。もし私達が、ゴーレムを倒すとしたら?」 


「今見た様に、僕が盾として踏ん張る間に、ミーチェの魔法で倒す感じだね」


 それは、怖いな、私次第って……。


「ジーク!街に着いたら、ジーク用にゴーレムを切れる武器を買いたいです!」


「ミーチェ、そんな良い武器は売ってないよ。宝箱や強いボス戦で出るからね。売りに出たとしても、王都でのオークションだね」


 売ってないのか~、お風呂も絨毯も後回しで買うのに。


「売ってないんだ……。ゴーレムに出会ったら、どうしよう……」


 ジークが、耳元で小さな声でコッソリ言う。


「ねぇ、ミーチェ。さっきの魔法使いより、ミーチェの方が強いから。心配しないでいいからね」


 えっ、そうなの?Bランクのエリスさんよりも?へぇ~、私って案外と強いのね。


 それ……、無駄遣いさせないように言ってるんじゃないの?ジーク?


 そうだ!岩でも切れる魔法を、ジークの剣に付加魔法付ければいいじゃない!財布に出来たんだから、剣にだって出来るはず。そうだ、私の短剣で試そう!


 『宵の明星』のリーダにゴーレムの欠片を貰った。


「ねぇ、ミーチェ。何を思いついたの?」


 えっ!鋭い……、ジークが、じっと見て来る。


「うん。私の短剣に魔法をかけて、石を切れる様に出来ないかなと、試してみようと思ったの」


 ジークに、「なるほど、無理はしないで」と言われた。


 岩山に入って2日目。ゴーレムの出現に慣れた頃、それが現れた……。


「アイアンゴーレムだ!」


「盾役2人、魔法使いと回復前に!後は馬車の護衛!範囲攻撃に気を付けろ!」


 『宵の明星』リーダーは、的確な指示を出す。


 アイアンゴーレムが、襲い掛かってきた。戦闘が始まる。攻撃範囲が広くて、石ころや岩が馬車の方まで飛んで来る。


「ゴーレムを馬車から離せ!」


 誰かが叫んでいる。


 馬が驚いて馬車が揺れる。御者がなだめるが、片側が谷になってるので、避ける事も出来ない。アイアンゴーレムの叫び声に、馬が逃げようと暴れた。


 その時、馬車が傾き、ズルッ!落ちる……、馬も引っ張られる。馬車は馬ごと谷底に落ちていく……。


「えっ、ジーク!馬車が落ちるよ!」


 ええっ!どうしよう……。


「ミーチェ!おいで!」


 ジークに腕を引かれる。ジークは、私を抱え込む様に、頭から抱きしめる。


 ハッ!私は慌てて、強化魔法をかける。


 大きな音とともに、谷底に転がって行った。


 ……。


「うぅ~、痛い、落ちたのね」


 強化魔法かけていても、頭がフラフラする。ジークを見たら、気を失っている。えっ!


「ジーク!!」


 慌てて、ヒールをかける。ポーションも出して飲ませた。どうしよう……、怖い……。ジーク、目を覚まして……。


「ん、うぅ……」


「ジーク!気が付いた?大丈夫?痛い所ない?」


「……」


 声をかけるが、返事がない。私をじっと見てる。


「ジーク?どこか痛いの?」


「……君は、誰?」


 えっ!?




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