21 最後の迷宮ダンジョン
ダンジョンに入って、25階へワープする。今日は、セーフティエリアで野営するつもりです。
25階は、最短距離で通り抜けて26階に降りた。ジークが、30階までの地図を持っているので迷わなくていい。
26階では2時間ほど狩り、早めにセーフティエリアへ行く。使用できるパーティーが、限られているので早めに場所取りです。
部屋に入ると、まだ誰もいなくて好きな場所を選べそう~、と思ったら、ランクの低いパーティーは、エリア入って直ぐの左右で野営するのがルールなんだって。へぇ~。
入って左側を陣取り、野営の準備をした。テントは2つ。入口を見えない様に壁側に並んで置いた。奥が私のテント。
夕食を作り始めようとしたら、
「ミーチェ。夕食は少なめで、簡単なのでいいからね。変なのが、寄ってこない様にね」
「はい。じゃぁ、シチューとお肉を焼くだけにするね」
と言う事で、今夜は2品作ります。具だくさんカエル肉のトマトシチューとコショウを効かせたオークのステーキ、きのこソースで。そして、果汁水。
「ジーク、出来たよ~」
「ミーチェ、美味しいよ。このシチューカエルなの? 簡単なの? 凄いね~、もぐもぐ……」
ジークは、いつも褒めてくれる。フフ、嬉しい。魔法使うから、煮込み時間とか要らないんですよ。
「うん、魔法使うからね。時間かからないのよ」
仲良く食べていたら、パーティーが入って来た。若い男3女2の5人パーティー。入って直ぐ右側に行った。1人足を止めて、
「右使う」
リーダーらしき男の子が、右手を上げて言った。
「分かった」
ジークも、右手を上げて答える。
入口付近で野営するって事は、ランク低いのね。20~30階は、パーティーランクB・C推奨なので、ランクCパーティーなのかな。
あれ? 私達は? 何ランクのパーティーなのかな? ジークに聞いてみた。
「そうだね~。初めから2人だし、実績評価される前に街を出たから、パーティーランクはないね。パーティー名も付けてないしね。強いて言えばDランクかな」
ジークは、ニコニコしながら言った。
「ミーチェ、パーティー名つける?」
「付けないとダメなの?」
「2人パーティーは特殊だから、別に付けなくてもいいんだよ。たまに、付けてるパーティーいるけど」
ジークは付けるなら、幸運の女神とか、幸運の料理とか恥ずかしい名前を言うし……。何も付けない! と答えた。
テントの側に、魔道具の明かりを付け、私が先にテントに入る。装備は付けたままで寝た。そして後から、ジークが手前のテントに入る。
しばらくして、ジークが私のテントに来た。えぇ?
「ミーチェが、そばに居ないと眠れないから。添い寝させてね」
そう言って、装備を付けたまま私の横で寝ころんだ。ジーク、ここは、ダンジョンのセーフティエリアなんだけど……。
寝静まった頃、もう1組パーティーが来たようだ。物音1つ聞こえない話し声も聞こえない。でも……、何故か感知魔法に引っかかる……。ジークも気が付いて起きた様なので、その事を伝えた。
「うん、分かった。きっと1パーティーだったら、襲われてたよ。十分に警戒するから。ミーチェ、寝ていいよ」
そう言って、ジークは私の頭を撫でた。
翌朝、起きたらジークは寝ていた。朝方に寝たんだろうなと思い、ベッドからそっと抜け出す。テントから出ると、若い男女のパーティーしかいなかった。
朝食を準備する。残りのスープをバッグから出して、焚火にかける。パンはスライスして、サンドイッチにする。具材は、ゆで卵を潰してマヨネーズで和えたもの。定番のたまごサンドです。
お昼用に、オーク肉をハム風にして、トマトとたっぷりのハムを挟んだハムサンドを作る。たまごサンドも付けるよ。
準備が終わった。
ジークが起きて来るのを、お茶を飲みながら待っていると、隣のパーティーがエリアから出ていった。最後にリーダーさんが、こっちに顔を向けて、手を上げて行く。私も手を上げておく。
少ししてジークが、起きてきた。
「おはよう、ミーチェ。起こしてくれれば良かったのに」
「ジーク、おはよう。朝方まで、起きていたんでしょ? 急いでないし、ゆっくり寝てても良いと思ってね」
ジークは、微笑んで私の額にキスをした。
「ありがとう。ミーチェ、お腹が空いたよ」
「うん、朝食出来てるから食べよう~」
ジークは、たまごサンドに夢中です。朝から目がキラキラしてます。そう、みんな好きなのよね~、たまごサンド。ふふ。
ゆっくりめの出発、2時間ほどで27階に降りました。
ドロップが、凄い数になるので、私が先手で攻撃するのは、ジェネラルオークとオーガだけ。後は、適当です。
ステータスが上がったからか、毒クモと手長猿は、私の魔法でも1発で倒せる様になった。オークも弱めの個体なら倒せる。ジークも指輪の効果なのか、オーク瞬殺してます。
順調に進んでいたら、叫び声が聞こえた。感知魔法を使うと、女の子が追われてる。セーフティエリアで一緒だったパーティーの子だ。男の人に追われているみたい……。微かに見えるし……なぜ? 見える?
「ジーク、女の子が追われている。正面300m先、追ってるのは魔物じゃない、男の人」
「そうか……、ミーチェ。助けようか、いい?」
「うん。人相手は、初めてなんで指示してね」
「ミーチェ、面倒だったら殺しちゃっていいからね。あれ、サルに使った魔法を使って。麻痺と雷のヤツね」
ジークは、怖い事を言いながら、ウインクしてきた。
「ええー! それって犯罪じゃないの?」
「いや、ダンジョンの中でパーティー狩りするヤツは、魔物扱いなんだ。ミーチェ、行くよ」
そう言って、ジークは助けに行った。
「えー! 魔物なんだ、人権ないんだ……。あっ、待って、ジーク」
ジークを追いかける。100mほど走ると、女の子が見えた。その後ろに、剣を持った男の人。ジークが叫ぶ。
「助けは、いるか!?」
「助けて!! お願い!!」
女の子が、必死に叫ぶ。追いつかれそう……。
「ミーチェ! 狙って!」
「はい!!」
雷撃魔法を放つ。今、名付けたよ!麻痺と雷って長いから……。無唱和だけど……。
ビリビリ! ドッーン!! ……ピクッピクッ
上手く命中した。間に合って良かった~。
「ミーチェ、上手い」
女の子が、倒れこんだ。荒い息遣いでこちらを見上げた。
「ハアッ、ハアッ、ありがとう。私はイリア。仲間も襲われているの、助けて、お願い!」
「分かった。案内してくれ」
ジークは、転がってる男の手足を紐で縛り放置した。えっ?ここに置いてくの?私がオロオロしてたら、
「ミーチェ。おいで行くよ。……ミーチェ、結界かけておくかい?後で、消してもらうかもしれないけど」
ジークが、私を気遣って言う。うんと頷き、ごめんと謝った。
人に向けて魔法打つのも初めてだけど、それを放置って……、キツイ。でも、きっと私が間違ってる……ギゼン。
気を取り直して、ついて行く。しばらく行くと、対峙している2組のパーティーがいた。今朝セーフティエリアを出て行ったパーティーと厳つい盗賊みたいなパーティー。
イリアが、自分のパーティーに走り寄っていく。メンバーの1人が、背中を切られてうずくまっていた。あっ、最後に手を上げて行った、リーダーさんだった。
「マーク!!」
「イリア、大丈夫だったのか!」
ジークが、2組のパーティーに声をかける。
「おまえ達、何してるんだ?」
野営していたパーティーメンバーが叫んだ。
「こいつらが、狩り中に襲ってきた!」
「お前らが、魔物を横取りしたんじゃねーか!」
厳つい冒険者が、答える。
「じゃぁ、ケガして座ってるヤツは、なぜ背中を斬られてるんだ。後ろから、襲ってるな……」
「チェッ」
厳ついスキンヘッドが、悪態をつく。
「お前ら、パーティー狩りだな」
「うるせー! お前も覚悟しろや!!」
厳つい冒険者が、叫ぶ。
「ミーチェ、一緒に野営してたパーティーを助けるよ」
「はい、ジーク。1人に雷撃したら、リーダーさんを回復してもいい?」
「うん。ミーチェ、今叫んだヤツの辺りを範囲で打って。その後、突っ込むから」
「わかった、行くよ!」
ジークに強化魔法をかけて、雷撃を打った。
ビリビリ! ドッカーン!! ……ピクッピクッピクッピクッ
魔法を打った後、ジークは素早く倒しにいった。それを合図に乱闘になる。私はリーダーさんの所に行って、背中に手を当てる。ヒールをかけて、様子を窺う。
「すまない、ありがとう」
そう言って、リーダーは戦いに向かった。私は、ジークを探す。既に、決着がついたようで、ジークがこっちに向かって来た。
「ミーチェ。大丈夫?」
私は、頷く。私の顔を見て、安心した様に微笑んだ。こういう戦闘は初めてなので、心配してくれているんだ……。
「ジークは? 怪我してない?」
走り寄って、大丈夫だと言うジークにヒールをかける。かすり傷でも、怖いよ……、毒塗ってたら! キュアもかけとこ。ジークは、気が付いたようで目を見張って、微笑んだ。
リーダーのマークさんが、お礼を言う。
「助けてくれてありがとう。本当に助かった」
「ああ、間に合ってよかった」
「礼をしたいんだが、落ち着ける場所で……」
ジークは、マークさんの言葉を遮って言う。
「いや、礼をしたいなら、後の処理を頼む、あっちにも1人転がってるから。それと、僕達の事は言わないで欲しい」
「えっ! それは……」
「僕たちが困るんだ、色々とね」
ジークとリーダーさんが、話をしている時に感知魔法が反応した。ジェネラルオークだ。
「あ! ジーク、近くにオークがいるよ。危ないから、狩りに行こう?」
「彼女が、追われているイリアさんを見つけたんだ。ギルドで、聞かれたら困るからね。礼がしたいんなら、僕達の事は言わないで、君たちで倒した事にしてね。じゃぁ、後よろしく」
ジークは、素っ気なくそう言って、その場を後にした。リーダーさんは、言葉を返せず呆然としている。
私達は、ジェネラルオークを狩りに向かった。
「そうだ、ミーチェ。結界を外して欲しいんだけど……」
「うん、外したよ。ジーク、気遣ってくれてありがとね」
ジークは、優しく微笑んだ。
「ねぇ、ミーチェ。お腹すいたね、お昼どうする?」
「う~ん、ジェネラルオーク狩ってから、土壁作ろうかな?」
ジークが、オークじゃなくてジェネラルオークなんだねと笑う。
「今日のお昼はね~、たまごサンドとハムサンドですよ」
ジークの目が、もうキラキラしてる。ふふふ。




