魔法のステッキ
「遂に……遂に手に入れたぞ!」
男の歓喜の声が暗い洞窟の中で反響した。
彼は所謂蒐集家、それも不思議な物ばかりを集めていた。
そして今、彼の目の前にあるこのステッキは彼の部屋に飾られているコレクションに引けを取らない、いや、それらの中でも最も不可思議で神秘の力を秘めた逸品といえる。
男は長年の悲願であった魔法のステッキを前に興奮を抑えきれない。
「さて、どんな願いを叶えてもらおうか。慎重に選ばなくては──」
自分に言い聞かせるように男は呟くとステッキを手に取った。
「ステッキの先端で床を三回打ち鳴らす、だったな」
コッコッコッ、と三回床を叩けば──なんと、ステッキの先から煙が登り始めた。一瞬で洞窟が煙で充たされて──
「私を呼んだのはお前か」
煙の中から現れた大男──魔人が男に問う。
男は小躍りしたいのを堪えて願いを告げた。
「まずは金だ! 山のような金銀財宝を出してくれ!」
それを静かに聞いていた魔人は青色の肌を真っ赤に変えて怒鳴った。
「バカヤロウ! とっくの昔に三回分人間の願いは叶えてやっただろうが!」
呆気に取られて立ち尽くす男を残して魔人は煙と共に消えたのだった。