単純な奴ら
夜道、二人の男が街灯に照らされながら歩いている。
面長の男と小太りの男。どちらの顔にも笑顔が浮かんでいた。
「ヒヒヒッまったく単純な奴らだ」
「ああ、まったくだ」
面長の男が肩を揺らしながら笑えば小太りの男が同意する。
二人は詐欺師だった。
今日も数人のカモを騙して帰宅する途中だ。
「こんな事じゃあ天国にはいけねえだろうがな」
「そりゃそうだ。他人様に地獄を見せてるんだからな」
趣味の悪いジョークを交わしていると、道の向こうにキラリと光るものを見付けた。近付いてよくよく見ると見事な大粒のダイヤモンドだった。近くに誰も居ないことを確認すると二人は顔を見合わせて今日一番の笑顔を浮かべた。
「今日はツイてるなあ」
「ああ。まったくだ」
二人同時にダイヤモンドへ手を伸ばし手に触れた瞬間、
「「へ?」」
ダイヤモンドが、忽然として消えた。ついでに地面も消えていた。正確には二人を囲うように大きな穴が現れたのだが、それを確認する余裕も時間も二人には無かった。
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地獄の鬼達は地上の様子を眺めながら笑いあっていた。
「まったく、大王の気まぐれには困ったもんだ」
「直ちに人間の魂千人分なんて無茶言ってくれるよな」
「まあ、宝石転がしとくだけだけであっという間だったけどな。まったく、人間ってのは単純な奴らだ」