ロリ先輩とオタク後輩
天人大学の部室棟の一部屋、古い木の標識に相談部と書かれた部室
心地よい昼下がりの太陽の恵みを存分に受けれる配置の窓があり
そして、部室の中で、寄り添って日向ぼっこをする、二人の男女の姿が見える。
男は、眠そうな顔を天井に向けながら、落ちかける瞼と戦闘していた。
女は、眠らないように努力をする男の隣で、気持ちよさそうな寝息を立てていた。
「まったく…長奈子先輩はずるいや」
男の隣で寝ている女の名は、四宮長奈子
男の先輩にあたる人物だが、その要旨はとても大学生とは思えないもので
なんと、長奈子は身長140㎝にも若干満たないくらい小さいのだ。
女性の身長の平均をこの長奈子だけで、2㎝は下げていることだろう
そんな、長奈子を眺める男
男が見るのは、長奈子自身の身長と同じ位に伸びた長奈子の綺麗な茶色の長髪、普段から常に手入れはしているのだろう、長奈子が寝返りをうつと髪の毛がさらさらと擦れ合う綺麗な音が男の耳には届いていた。
男は思う、(本当によく寝ているなぁ)と
男はこうも思う、(かわいい寝顔だな)と
こんなに気持ちのいい昼下がり、部室には木漏れ日の如く優しい太陽の光がデリバリーされるというのに、この男に眠ることが許されないのは、今隣で気持ちよさそうに寝ている長奈子に、時間になったら起こしてと言われたからだ。
長奈子が出なければいけない次の講義は、2時半からだ。
今が12時半過ぎというところだから、後一時間はある。
「あっ、よだれ…」
男は、自身のポケットから、白の綺麗なハンカチを取り出すと
よだれを垂らして寝ている、だらしない長奈子の口元を拭ってやる
体形こそは幼児体形そのものだが、長奈子ははた目から見ても、いや誰から見ても八方美人といわれるだろう
今は閉じてしまっているが、容姿とは似合わないキリッとした目、かわいらしい鼻、そして潤んだ赤い唇
起きていれば、まるで人形のように美しく、そして体格のせいもあるだろうが愛らしくもある。
だが、そんな長奈子も一度口を開けば、美人という事実よりも先に、凶暴という印象を受けるだろう
口は悪いが別に悪気はない
ただただ、口が悪いだけなのだ
そんな、長奈子の最近のお気に入りは、今まさに隣にいる男だ。
男は長奈子の口元を拭った、ハンカチを部室の中に設けてある、手洗い場にて少しばかりゆすぐ
日当たりの良いところに広げておいとけば、次の講義前には乾くだろうと算段し
部室の中にあるちゃぶ台を日当たりのよいところに持っていき、その上にハンカチを広げて置く
すると、気持ちよさそうに寝ていた長奈子がすこしばかり目を開く
隣に男がいないことを知るや否や、バッと起き上がり
周りを確認する
もちろん男は部室にいる、それもちゃぶ台を動かしたことで長奈子の真後ろに
長奈子はちゃぶ台に広げられた、少し湿った白いハンカチを見て
「女子か」
「男です。」
吐き捨てるように言う長奈子に、すぐさま突っ込みを入れる男
「もう…いい感じで寝てたのに、和人のせいだからね、私の安眠の責任を取って」
天宮和人それが、長奈子が言うところの、安眠を妨げた犯人の名前だ。
和人は、いわれもない暴言に特に反論することもなく
すぐに、長奈子の隣に戻ると
「膝枕でいいですか?」
「へっ?私があんたが私の膝で寝るつもりなの?」
「いいえ、俺が先輩に」
「男の膝枕はいい、膝堅そうだし」
「そうですか」
今の会話でわかると思うが、長奈子同様、和人もどこか頭のねじが足りないらしい
そんな長奈子は、視線を部室の和室と洋室の境目に置いてある、バックを見る
その長奈子の細かいしぐさから何かを読み取ったらしい和人が、長奈子の鞄の中からくしを出す。
和人がくしを取ったのを確認すると、長奈子は和人に背を向ける
その背中には(髪を解いて)との意思が込められていることは誰でもわかるだろう
長奈子のその要望に応える形で、長奈子の髪の毛を整え始める和人
そんな長奈子に、和人が問いかける
「ところで長奈子先輩」
「ん?なに和人?」
「呼び捨ては、ちょっと…」
どうやら、呼び捨てで呼ばれていることが気になったようだ、しかし長奈子はというと
振り向いて、髪の毛を解いていた和人に、自身のかわいらしい(自分では自覚はない)ふくれっ面を和人に見せながら
「和人、私が人を呼び捨てにするときは、家族と同等の扱いをすると決めた人たちだけなのよ、いいよく聞いて、この大学で私が呼び捨てにしてる人は、和人と、部長とあとあの女嫌いの男だけよ」
長奈子にそう言われて、心の奥底で少し喜びを感じた和人は、そっと微笑むと
「長奈子先輩、僕の悩み聞いてもらっていいですか?」
「なに?」
「かわいらしい見た目ロリな先輩が、僕を呼び捨てで呼ぶんです…ですから僕もその先輩の事を呼び捨てで呼びたいんですけど、どうです?」
「だめに決まってんでしょ、このオタク」
「ええっ!?」
長奈子が端的に拒否してから、すぐに前を向いてさも、髪の毛を早く整えてとでも言いたそうにもじもじする
少しばかり気が落ちる和人
そんな和人とは違い、すぐ前を向いた長奈子の顔がまるでリンゴのように赤く頬を染めていた。
もじもじしていたのも、恥ずかしさからだ
そして長奈子は思う(私の名前を呼び捨てに出来るのは、未来の旦那だけだから…)
長奈子は、小声で言う
「誰しも、悩みはあるわよね」
「えっ?長奈子先輩なんて言いました?」
長奈子はいたずらっ子のような笑みを和人に向けながら
「ばーか」
和人のオタク心に、笑顔でバーカという長奈子先輩も可愛いという事実が刻み込まれたのであった。
学校の授業のほうで、ハコガキについて学んだため、その練習や応用のためにこの作品を2日に1話、それか3日に1話のペースで上げていきたいと思います。
少なくとも、現在でそれなりにストックはありますので…少しでも楽しんで読んでいただければと思います。
今までやったことのない文体で書いていくということもあり、多少抜けてる部分があるかもですが、よろしくお願いします。