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沖縄

 次の日は班ごとのレクリエーション。俺はシーサー作りの班。葉月もいたが、不安しかない。川田が葉月の隣りでオロオロしている。


「は、葉月。そんなに真っ赤でいいの.......?」


「.......なぜ可愛くならないのかしら?」


 血染めのシーサーが誕生した。俺のシーサーも赤っぽいが結構可愛らしい。姉にあげよう。


「葉月.......手拭いてからじゃないと.......全部赤くなっちゃうよ?」


「.......通りでさっきから塗っても塗っても赤いわけだわ」


 男子は全員その一角を見なかったことにしていた。


「和臣、和臣」


「ん?」


 クラスの男子が声をかけてきた。


「なんだ? 可愛く作るコツか? それはな、まず下塗りを」


「違えよ。水瀬ってさ.......水着着ないのかな?」


「天誅」


 不届き者の顔面をシーサーにしてやる。


「うわあああ! 聞いただけじゃんかー!」


「玄関に縛り付けてやろうか? 安心しろ、隣りにお前のシーサー置いてやるから」


「だって午後は濡れてもいい格好でってしおりにあっただろ!?」


 よく見れば大量の不届き者達が聞き耳を立てている。


「たとえ着ても貴様らには1ミリも見せん」


「「悪魔め! 最後に思い出作らせろ!」」


「最期でいいんだな?」


 立ち上がって赤い絵の具を持つ。


「「ケチー!」」


 不届き者達はシーサー片手に涙した。かつては俺もそちら側だった。だが同情はしない。最大限の敬意をもって1人の不届き者の額に肉と書いて今回は手打ちにした。


 そして午後。磯観察という名の水遊び。


「おお.......海」


「和臣って海好きね」


 葉月はTシャツに短パン。不届き者達は涙した。嬉しさと悲しさが混じった男の涙を。


「葉月は海嫌いか?」


「好きでも嫌いでもないわ。昔から当たり前だったもの。でも、こんなに綺麗な海は素敵ね」


 その後も葉月と話していたらいきなり不届き者どもに海に落とされた。俺もやり返し男子は全員水浸し。ぎゃあぎゃあと騒ぎながらホテルに戻った。


「お、和臣おかえりー」


 部屋には先に高瀬が帰っていた。高瀬と田中は、歴史遺産巡りツアー的なものに行っていた。山田はハイキングコース。野球部の顧問が引率で、無理やり引き込まれていた。


「おー、ただい.......ま.......」


 思わず持っていたペットボトルを落とした。


「ん? どうした?」


「.......えーっと。高瀬は今日どこ行ったんだっけ?」


「なんか色々行ったぞ。古民家とかパイナップルランドとか.......」


 パイナップルは歴史的なのか。


「他は? なんかすごい所とかなかった?」


「んー? あ、ガマはすごかったな。ぞわっとした」


「それかー」


 俺はびしょびしょの服のまま、高瀬に近づく。


「高瀬、あんまりそういう場所でふざけちゃダメだぞ。あ、まさか田中が騒いだとか?」


「はあ? さすがにあそこじゃ騒がねぇよ。そんな雰囲気じゃなかった」


 高瀬の後ろにへばりついた黒いドロついたものに触れようとして、ん? と思った。


「何もしてないのか?」


「ああ。全員当てられちゃってな。田中も真剣に説明聞いてたぞ」


 それはおかしい。何もしてないのにこんなに悪い物が憑いてくるはずがない。


「なんか壊したりとかも?」


「するわけないだろ」


「んー?」


 とりあえず高瀬の背中のものをひっぺがし、そのまま霊力に物を言わせて消し飛ばす。


「本当に何もないのか? 何か持ち帰ったりとか.......」


「してねぇ。和臣、どうした?.......あ」


「お、やっぱり心当たりありか」


「.......俺達じゃないんだけどな。なんか知らないおじいさんが居て、ブツブツ何か言って聖水だとか言って水撒いたり数珠みたいなので祈ってた」


「.......わーお」


 完全にそれで変なもの呼び寄せちゃってるじゃないか。しかも他人にまで着いてくるレベルで。


「先生もやばいなって思ったらしくてな。目合わせるなって言われた。俺達が出ていってもまだガマに入ってたんだ」


「ガマ行った奴らってどんぐらい居る?」


「さあ.......20人くらいじゃないか?」


「.......俺ちょっと田中んとこ行ってくる」


「おい! 着替えてけよ! あとたどり着けるのか!?」


「多分大丈夫!」


 急いで着替えて田中の部屋に向かう。俺は迷わなかった。なぜなら。


「めっちゃ溢れてるな.......」


 1つの部屋からじわじわと黒いものが溢れている。


「おい、田中!」


「あ? 和臣?」


 部屋の中は凄まじかった。田中の後ろにいるのは完全に人の霊で、同室のやつにも黒いものが憑いている。部屋の空気は最悪。


「はいちょっと失礼ー」


 田中の頭ごと叩いて霊を還す。大人しく、人を害する気はなさそうだった。


「はあっ!? なんでたたくんだよ!」


「お前もごめんなー」


 もう1人の背中も叩いて黒いものを落とす。


「「和臣!」」


「じゃ、失礼しましたー」


「「はあ!?」」


 その後何部屋か回って、もう男子は大丈夫だろうとなった。問題は女子。葉月に連絡しようかと思った時、ちょうど葉月から電話がかかる。


「あ、もしもし? あのさ、今日ガマに行った人達が」


「ええ。全員ひっぺがしてきたわ。抵抗もしないから楽勝ね」


「.......さすがですね」


「和臣、ガマにいたおじいさんの話は聞いた?」


「ああ、危ないじいさんだな。総能には連絡入れるよ」


「.......危ないで済むのかしら?」


「多分一般人だからな.......しょうがない」


「そう。何かあったら連絡するわ」


「おう」


 その後総能に電話をかけて、その謎のじいさんについての対応を頼む。


 翌日、引率の教師に憑いていた霊を忘れていたことに気づいて、慌てて叩きに行った。めちゃくちゃ怒られた。

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