学年一の美男子は、夜の方が凄かった。2!
またまた男女逆転ものです。高二ぐらい編。
「葉太ー! お弁当作ったよー!」
「ありがとう」
朝、学校近くのアパートで。料理下手、と言うか家事が全て苦手な葉太のために作ったお弁当を渡す。それと、彼は洗濯機の操作が微妙なので私が回す。本当に心配。お嫁においで、私がやったげるから。
「ねぇねぇ、今日の女子体育何やるか知ってる? 男子のバスケ見てるだけなんだよ! どう思う!?」
「.......体育やりたかったのか? 苦手なのに」
「そりゃあね! 苦手だよ、運動は! でもたなちゃんはバレーやりたかったんだって! 3年がコート使っちゃってできないの!」
「そうか」
何かを錬成した後なのかと疑うフライパンを洗う。何に使ったのこれ。
「あ、今日放課後暇? お兄ちゃんが葉太夕飯に呼んでって」
「お邪魔します」
そろそろ学校に行かないと遅刻なので、フライパンは水につけておいた。無理、なんでこんなにこびりついてるの。
「和子」
「なに? あ、シャツのボタン取れた? 貸して、縫ったげる」
「好きだ」
「ぶっ」
ガシャンっとアパートのドアにぶつかった。急すぎる。
「な、なに急に.......」
「言葉にしたいと思った」
「ひぃ.......イケメン怖ぁ.......平気でそういうことする.......」
しかし、よく見れば葉太の耳は赤い。嘘、可愛い。抱きしめていいかな。
「ねぇ、抱きしめていい?」
「.......」
葉太は、黙って腕を広げた。やだ何この生き物。イケメンとか通り越してる。可愛い。
「え.......好き.......え、こわ、え? 好きぴなんだけど.......」
「.......俺はたまに、君の使う言葉が分からない」
「大好きってこと」
ぎゅっと抱きしめて、抱きしめられる。1年の頃ですら身長差があったのに、この頃葉太はもっと身長が伸びた。女子にきゃあきゃあ言われている。私もきゃあきゃあ言っている。葉太こっち向いて! ピースして!! 撃ち抜いて!!
「.......はっ! ち、遅刻する! 急がなきゃ、葉太走るよ!」
「すぐそこだから慌てなくて大丈夫だ! 転ばないでくれ!」
「大丈夫!」
そう言いつつアパートの階段で盛大に転んで、葉太にめちゃくちゃに怒られた。そのまま朝から保健室だ。
「泣くなよ.......ほら、膝見せて」
「泣いてないし.......葉太、今日バスケ頑張ってね」
「ああ」
葉太に絆創膏を貼ってもらっている間、普段は見られない葉太のつむじをグリグリしてみた。全く反応なし。耳を軽く引っ張ってみた。ピクっと反応があった。
「.......なにか?」
「最近、葉太の頭が遠い。背が伸びすぎ」
「嫌か?」
「嫌じゃないけど、首が痛い」
葉太が顔を上げる。私を見上げる姿を見て。
「うわっ、ギャップ萌え! 可愛いかっこよくてつらたん」
「? つら.......たん?」
「大好きってこと」
葉太の頬を両手で挟む。ちょっと眉を寄せた葉太が、「全部それじゃないか.......」とごにょごにょ言っていた。
その後。3時間目の体育で。
恐ろしい程にかっこよかった葉太は、もう女子全員を虜にしていた。こんなに素敵な彼氏だと、少女漫画的には私はいじめられるはず。すごい金髪のギャルに、「葉太君に手ぇ出してんじゃねえよブス!」と言われバケツの水をかけられるはず。
しかし。
「きゃーー!! 和子、手ぇ振って! そしたら水瀬君も振るから!」
「ウィンクお願いして!! 待ち受けにするから!」
私は葉太の最高の瞬間を引き出す道具として大事にされている。と言うか使われている。まあ、私も見たいのでいいのだが。コートに向かって思い切り声を張り上げた。
「葉太ーー!! ウィンクしてーー!! 」
葉太は、ちらっとこっちを見て。困ったように眉を寄せて、片目を手で覆った。
女子は瀕死。私は致命傷。何それ。好きぴ。
「女子ーーー! 集合ーー!!」
残念だが、もう授業が終わった。その日はふわふわした気持ちのまま過ぎて、夕方家で受け取った仕事の封筒も頭に入らなかった。
「和子、中身は見たのか?」
「うん.......」
「和子」
「はっ! み、見る! 見るね!」
見れば、まあまあ簡単な仕事だった。しかも私個人に向けて。
「.......今チャチャッと行ってきちゃおうかな」
「俺も行く」
「えぇ? 大丈夫だよ、ほら見て、ただの土蜘蛛退治」
「夜だから言ってるんだ」
「心配性」
「彼氏は彼女の心配してもいい」
はぁ。この人なんなんですか! かっこいいんですけど! 結婚して! 私が養うから!
それら、少し遠かった仕事現場で土蜘蛛を退治して。
「きゃーーー!! 揺れるーー!!」
「舌噛むぞ!」
ズレた廃病院の廊下を、葉太に担がれながら走っていた。
「葉太急いで! 閉まっちゃう! でもゴメンね! 私重いのに!」
「一生背負って走れる。和子なら」
やめてよこんな状況で好きぴな事言うの。
「きゃあっ!」
最後、葉太がグンっと跳んだ。滑り込みセーフで、ギリギリズレた病院から飛び出す。
「だ、大丈夫!? 葉太、葉太!」
私を庇って思い切り地面に突っ込んだ葉太が、のそりと起き上がった。腕が血だらけだ。
「ごめん、ごめんね。痛い、 痛いよね.......ごめんね.......足遅くてごめん.......」
「違う」
治療しようと葉太の腕を取ったら、逆に手首を掴まれた。逆の手で顎をつかまれ、ぐいっと顔を上げられる。その鋭い目で、じっと見つめられる。
「君の弟子は、どうだった?」
「.......最高! かっこよかった! ありがとう!」
「君の弟子だから、当たり前だけどな」
その後、何が気に入ったのか分からないが葉太におんぶさせて欲しいと言われて、ジャンケンに負けたので要求を飲んだ。
「なんで?」
「君はすぐ転ぶ。.......あと」
「ん?」
「君が近いから。俺の顔と」
好きぴ。