魔王の過去。
誤字、脱字、おかしな文章は見つけ次第修正します。
「く く く く く、く、く く くっ、くひっ、ひゃははははははははははははははは!」
狂った。
頭のネジがふっ飛んだ。
思考回路が暴走した。
表現は自由だ。
何だっていい。
重要なのは行動が、性格が、いつもの物とは全く別になっているという事だ。
「うし!いっちょラールゼンを潰しますかー!待ってろラールゼン!この俺様が、ちょちょいとぶっ潰してやるからなぁああああああああああ!」
あきらかに、そこにいる黒宮秀兎は狂っていた。
◇◆◇
一人の少年が玉座から立ち上がる。
黒を基調とし、銀色の装飾がよく映えている鎧に、外は黒で内側は赤いマント。
真っ黒な髪に、吸い込まれそうなほど黒い瞳。
威風堂々とした態度。体中から覇気が溢れ出る。
まさしく王。彼こそが全ての闇を統べる、魔の王。
「いいか!皆の者!よく聞け!」
はきはきとした、威厳に満ち溢れた声だ。
魔王の側近である騎士団長エルデリカと魔術師団長のシャリーがひざまずく。
それに合わせて、騎士団の騎士たちと、魔術師団の魔術師たちがひざまずく。
最前列から最後尾まで、順に、前から後ろへ波打つように。
「知っての通り、商業街ラールゼンの人口は約百人。
しかし、ラールゼンは卑劣な奴隷制度で栄えた街、ラールゼンの商業ギルドは私利私欲を尽くしている!
我らはラールゼンの商業ギルドを潰し、虐げられし奴隷たちを救う!」
その声に、騎士、魔術師たちは震え上がる。
「今日この日、ラールゼンという街は世界の地図から消えてもらう!」
恐怖ではない。これは畏怖。その声は心に響き、彼を畏れ、敬う。
「その為に!君たちの迅速で正確な行動により奴隷は見つけ次第各自に配備された転送魔術用の札を使え!商業ギルドの人間も同等だ。丁重に扱え、粗相があっては失礼だからな。
ラールゼンにある金品類は全て回収しろ!
奴隷だからといって手を出すな!彼らにだって人権はあるのだ!
我らは盗賊でも、義賊でも、ましてやテロリストでもない!
お前たちはの魔王の使者!私が、この魔王が、世界の間違いに鉄槌を下す為に必要な使者だ!」
そして締めくくる。
「ゆけ!我が使者たちよ!ラールゼンという世界の間違いに、魔王の鉄槌を下すのだ!」
『承知ッ!我が身は全て魔王様の為に!』
消えてゆく。ヒュンッと、騎士団長と魔術師団長から消え始め、最前列から順に消えていく。
そして魔王も消える。
目的地は、奴隷売買で栄える街、ラールゼンだ。
◇◆◇
ラールゼンは街といっても、外見は豪勢な宮殿だ。
人口約百人。うち十数人が主人で、残りが奴隷。
天候や立地条件、土地も豊か。
十数人の主人には力の強い私兵が居る為、奴隷たちも中々逆らえないらしい。
なにより卑劣なのは、奴隷たちに生ませた子供を奴隷にして資金源にするという営業方法だ。
自分たちで孕ませ、その子供を売りさばく。
もはや人間の所業ではなかった。
だから潰す。
奴隷商業は卑劣だから。
もちろんそんな者はたてまえで。
理由はラールゼンがムカつくからだ。
◇◆◇
「何者だ貴様!」
謁見の間、玉座にてふんぞり返る恰幅の良いひげヅラオヤジ。
ラールゼンは今、大混乱だ。
警備の固い宮殿にに来た不法侵入者。
しかも一人。
黒と銀の鎧にマント。
黒髪黒瞳。
「何者とは心外ですねラールゼン・バルスカル。私の顔を知らないとはよほど俗世に興味が無いのでしょうな」
「ふん、どこの小童か知らないが命知ら……」
「うるさいぞ豚ハゲ。貴様の気持ちの悪い声など聞きたく無い。耳が腐る」
ラールゼンが激昂する。
「な、き、貴様、不敬だぞッ!」
「ほぅ、不敬、ね。たかが百人の国民で威張り散らす惰弱な偽王、不敬罪なのは貴様の方だろう?このムシケラが」
「だ、黙れ!速くコイツを殺せ!」
ラールゼンの私兵たちが、槍のような武器で彼を貫こうとする。
四方八方から、槍のような武器。
しかし彼は避けない。
「馬鹿が」
突如、彼を貫こうとしていた槍の先端が砕かれる。武器が、使い物にならなくなる。
振ってきたのだ。人が。
目にも止まらぬ速さで槍の先端を破壊したのだ。
――魔王騎士団長、エルデリカ・ヴァーリエ。
私兵たちは、不覚にも彼女の美貌に見惚れてしまう。
「陛下、お怪我は?」
「無い。いらん心配だ」
「はっ」
ラールゼンは、顔を、真っ赤に、それはもうだるまよろしく真っ赤にして
「一体なんだというのだ貴様は!」
しかし、そんな言葉にエルデリカが反応する。
「貴様、誰に向かっての言葉だそれは!無礼だぞ!」
「よい。彼は俗世に興味が無いそうだ。知らぬのも無理は無い」
彼は、礼儀正しく、背筋を伸ばし、ラールゼンを見る。
「申し遅れましたラールゼン殿。私は、最凶最悪にして悪逆非道の王、魔王でございます」
ラールゼンの顔が、恐怖で染まっっていった。
そして、瞬く間にラールゼンは制圧された。
◇◆◇
こうして、ラールゼンは世界から消えた。
奴隷たちは皆、魔王城にて生きる為の術を学ぶ。
悪逆非道の限りを尽くしたラールゼンたちは、日本政府に引き渡した。
その後どうなったのかは知らない。知る必要も無い。
ラールゼンという街はシャリーによって跡形も無く消し飛ばされた。
そして魔王は、
「さぁ、明日も張り切って世界の間違いを潰すぜぇええええええええええ!」
玉座で高笑いしたのだった。
〜完〜
◇◆◇
と、言うような映像を見て、
「…………」
秀兎はもう、なにも言えなかった。
「かっけぇー」
「うーんもう見る影も無いですねー」
「この時が最盛期じゃないかなー」
「そのようだ。ここから陛下の堕落日記が始ま……」
「始まらないから!ていうか何これ?いつ撮ってたの?ていうかこれ俺じゃねぇよ!」
「いやいやどう見たって秀兎さんですよ。かっけぇー」
「今じゃ完全に仕事しなくなったニートですよ」
「いやいや俺学業してるし!ていうかこの時13歳だし!」
「わずか13歳でこんなに立派だったのにね」
「もう誰?って感じです」
「でもホントかっけぇー」
「ゆけ!我が使者たちよ!とかねー」
「……酷い。酷すぎる……」
しかし彼の恥かしい過去が記録されたDVDはすでに何枚も量産されていたのだった(笑)。