魔王と勇者の(略)
誤字、脱字、おかしな文章は見つけ次第修正します。
陽気の良い昼下がり。
賑わう街道。
活気に満ち満ちた声が飛び交う。
――平和だ。
限りない平和。
戦いも争いも無い、平穏な風景。
それを、オープンカフェのテラスで見詰めて。
「……ふぁあ、眠い……」
魔王は、大きく欠伸する。
いつからか直すのもめんどくさくなった寝癖。
今日は普通の高校生が着るような、ちょっとお洒落(だと思っている)な服を着ている。
しかし、相も変わらず身体からはやる気が感じられず、顔にはいつも眠気が張り付いていた。
「……ていうか暑いなぁ〜。気温は例年以上、さっすが太陽、無駄に頑張ってくれちゃって」
でも実は、周囲の熱を《闇》で奪っちゃってたりとかしちゃっていて、全然暑くない。
テラスにある清涼感バリバリの真っ白テーブルにはカラフルなパラソルがあり、彼は涼しげな顔でパラソルの影の下のんびりコーラを飲んでいた。
「……いやぁ便利だなぁこの力は。ほんと、ルシアさまさまだなぁ」
なんて、小声で言った瞬間
――あ゛ー、あ゛ーう゛ー。
そんな声が直接頭の中に響いてきて……、
「……………………。……聞かなかったことにしよう」
――無視するな!折角私が話しかけてやったと言うのに!
それは久し振りに聞く、魔女の声だった。
どうせ今は暇だ、暇つぶしにルシアの相手をする事にした。
思念には思念で。
どうせ今起きたんだろ?
――……そんな事は無い。私はちゃんと朝7時に……
ダウト。
――ほ、本当だぞ?私は規則正しい生活を……
ダウト。
――う、嘘じゃない!信じてくれ!
……じゃあもう二週間は寝なくていいよね?
――い、いや、そのぅ…………。わ、分かってるくせに!
どうせお前の事だからあの時以来ずっとずっとずぅぅぅぅっと寝てたんだろ?
――うぅ、しょうがないじゃないか!私はそういう体質なんだぞ!
はいはいそれは昔から知っていました〜。
――くっ、お前はいっつも私に意地悪だな。
え、何?優しくしてもらいたいの?
――違う、敬え。そして奉れ。
死んどけ。
――なぜ私を敬わない?私は誰もが畏怖する伝説の魔女なのだぞ?
俺は誰もが恐れる闇の魔王なんですけど?
――誰が貴様なんか恐れるかこの不幸人間。
誰も畏怖しないと思うけどこのアホ魔女。
――何も知らない馬鹿が。
お前が何も教えないからだろっ!
――やーいやーい無知無能ー。
うわ〜なんかむかつくはそれ。
――これだからゆとり教育は……
お前いつの時代の人?ていうか何歳?
――16歳。
ゆとり教育しか受けてねぇだろ。
――そもそも私は教育など受けていない。
だから馬鹿なんだよな、納得納得。
――馬鹿って言うなぁ!
と、魔女と魔王はひとしきりなじり合った。
最後のほうは銃弾で蜂の巣にされるショックイメージを見せられ仮死体験をしてしまう。これもいつもの事。
ただ違うとすれば。
「お待たせしました、秀兎さん」
そう。
いつかは来ると思っていた展開。
そろそろかなぁ〜と思っていた展開。
「んじゃ、いこうか」
俺が人生二度目のデート(しかも街中)に来ているという事だった。
一話完結じゃないですぃー。