Dr.紅葉の非情実験。
誤字、脱字、おかしな文章は見つけ次第修正します。
馬鹿と天才は紙一重だという。
どんなに天才でも、自分を過信しすぎれば馬鹿。頭がよすぎて奇行にはしるのも馬鹿。
狂気とは。
度が過ぎた感情を狂気と呼ぶ?
狂気とは、その人物の特定の精神が暴走状態にあることらしい。
無邪気と言う感情が暴走し、それは狂気にみえるのだろうか。
結局は、他人がどう見るかなのだが……。
しかし天才の少女は、無邪気に狂い、力を欲する。
自覚するほどに無邪気に狂い、知識を吸収し、力を求める。
その理由は……。
◇◆◇
ついに、ついに完成しちゃったよ……。
やっぱり私天才だね!
長かった。もうホントに長かった。
だけどもう大丈夫!だって私にはこれがあるんだもん!
ふ、ふふふ、ふふふふふふ…………。
◇◆◇
始まりは、ちょっと大きめな爆発音だった。
城全体に振動が伝わる。
魔王は、魔王城の西側、図書館にいた。
ちょっと古ぼけた本から思わず咳をしてしまうほどかび臭い本、保存状態のいい本様々な本が山積みになっていた。
図書館の机の一角に、その要塞のように積み重なっていた本。
その本の山が倒れて……
「いてぇ!」
見事に脳天にヒット。
しかも、分厚い表紙のヤツだったのでかなり痛かった。
「あ〜、…………何事?」
なんだか外が慌しい。
それが爆発の振動の所為だという事は気付いていた。
だけど、まぁなんかめんどくさそうなんで無視していたのだが。
と、そこで、
ドカァンッ!
と壁を突き破って侵入してくる物体。
猛スピードで逆側の壁に衝突、突き破る。
そして今度は物凄いスピードでバックしてきて……。
それは秀兎の目の前で急停止。
「…………」
なんだろう、これ。意味不明だ。人間じゃない。
全長、5メートルくらい?
丸い、銀色の球体。装甲の一部が鋭い足のようになっている。その足は四本。
例えるなら、はさみが無くて胴体が真ん丸で足が超短いカニだ。カニは四速じゃ無いけど。
秀兎の目の前に、目、だろうか。やたらとフォーカスをあわせながら、クイクイと赤いレンズのカメラが上下に動いている。
と、その謎の物体がいきなりガタガタと震えだしたではないか!
足はぐらぐら、目はグイグイ、正直言って、かなり気持ち悪かった。生物が痙攣しているようだ。
と、そんな事を思っていると謎の物体の痙攣がピタリと止む。
ブシュぅー!と蒸気、いや冷気を噴出させる。
…………。
もう、何がなんだかわからなかった。とにかく気持ち悪かった。
そんなキモチワルイ物体の頭頂部が突然、パカリと開いた。
そこからニョキッと顔を出したのは……。
「……ああ、なるほどね。あ〜あ〜そういう事ですか……」
鮮やかななピンクブロンド。
丸々くりくりとした、可愛らしい朱色の瞳。
柊紅葉だ。魔王城技術開発部長、IQ300(正確には344)の超天才児。
そうつまり……、
「どう!私の造ったこのマシンは!カッコいいでしょ?カッコいいでしょ?」
目がキラキラしている。
そうつまり、この意味不明な物体は紅葉が造った新兵器だ。研究室にこもりにこもって作り上げた、新兵器だ。
その新兵器で現れたという事は。
これが何を意味するのか……。
実験が始まる。
簡単に言うと、オレガイヂメラレテシマウジカンノヨウデス。
「さぁ、さぁさぁ秀ちゃん!私が寝る間も惜しんで造ったこのマシンの実験台になってちょうぉぉぉぉだいっ!」
「嫌に決まってんだろうがぁぁぁぁぁああああ!!」
◇◆◇
四足歩行型の戦闘用モービル(実験機)。
合成希少銀によって造られた特殊装甲パネルは、衝撃が強ければ強いほど瞬間的に強固になる。
移動手段は四足歩行、しかしこれでは速度があまり出ないため足にはタイヤがついており高速移動が可能だ。最高速度は200キロメートル。バイクより速い。
動力源は魔力結晶。魔力を電気に変換し運用する。
武装は9mm口径の短機関銃二丁に誘導弾(6発×3セット)、高周波カッター内蔵の鋏型アームが二本etc...。
否が応でも試したくなる。
「嫌に決まってんだろうがぁぁぁぁぁああああ!!」
秀ちゃんが逃げてしまう。まぁ予想通りの展開だ。
私は再びコックピットに乗り込む。
防護範囲の関係上、どうしても外部情報をレーダーとカメラで収集しなければならないほどのこのコックピットは密閉性が高くなってしまった。
その為に独自に高性能なレーダーやカメラを開発した。そっちの方が一般品よりはるかに高性能だったのだ。
コックピットには四台のモニターが設置され外部の装甲内蔵カメラとリンク。操縦機構は座席式ではないく前項姿勢になる。まるでオートバイを運転するようだが、こっちの姿勢のほうが座席よりも連動性が高いらしい。
私はハッチのロックを確認してから目の前のモニターに設置してあるタッチパネル式のキーボードで《歩行モード》から《走行モード》に移行させる。
しかし私が操縦するわけでは無い。そこはターゲットを自動追尾してくれるプログラムを使う。
モニターには『Ledy?』の文字。
私は左手で操縦桿を握る。
「にひひ、そう簡単に逃げられないよ〜!」
さぁ、実験スタートだ。
◇◆◇
人間、巨大な物体が背後から迫ると、やっぱり恐怖を感じてしまう。
しかしそれがただ追って来るだけならまだいいのだ。
と、そこでまたミサイルが飛んで来る。
多少の追尾性を備えた誘導弾だ。着弾と同時に小規模爆発を起こす。
その数三発。
「だぁぁぁぁもうっ!無理!めんどいんだよぉぉぉぉぉ!」
闇を使って壁を展開爆発して城を壊されても直す方が大変そうなんでそのままミサイルを食う。
ミサイルは壁に吸い込まれ、壁はすぐさま霧散させる。
しかし、まだあの銀色の球体は追って来るわけで……。
中には紅葉がいるのだ。迂闊に攻撃なんて出来ない。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
結局反撃など出来ないのだ。
◇◆◇
旋回性能は予想を上回る数値を記録。
自動追尾も文句無し。
誘導弾は改良の余地あり。発射してからトップスピードになるまでのタイムラグは改善したい。
座り心地はまぁまぁいいほうだ。
衝撃吸収装置はもう少し性能を高めた方がいいか。
そんな事を考えながら、目の前の獲物に向けて次の攻撃を仕掛ける。
「ほらほら〜秀ちゃん!逃げてばっかりじゃ実験にならないでしょ!」
この声は外部にもちゃんと届いているはずだ。
その証拠に、秀兎は走りながらこちらを振り向きその声に答える。
「無理!無理だから!ていうか死ぬ!抵抗する前に俺ひき殺されちゃう!」
嘘っこだ。ちゃんとわかっている。私がいるから迂闊に攻撃できないのだ。
しかし、科学にそんな甘っちょろい事は通用しないのだ。
私はその甘さを利用する。
「もう軟弱さんなんだから〜!じゃあ攻撃しちゃうもんね!」
キーボードで攻撃パターンEを選択、実行。
鋏型アームから高周波カッターが射出される。
秀兎はそれをぎりぎりで避ける。
「うもぅ!なんで当たんないのー!」
なんだかイライラしてきた。
攻撃パターンCを選択、実行。
前頭部についている二丁の機関銃が弾丸をばら撒く。片方百発、機械によるオートリロードの機関銃だ。弾丸の最大数は合計千発。
しかし弾丸は秀兎に当たらない。秀兎はジグザグに走る。コンピューターはその動きを完全にとらえられない。ここも改良しなければ。
曲がり角、コンピューターが瞬時に現場のデータを収集、解析、もっとも効率のいい旋回行動を行う。
曲がると、そこは一直線の道だった。謁見の間に続く一本道だ。
そこで、秀兎が加速する。さっきよりも数段速い。たぶん身体強化の無声魔術を使ったんだろう。
チャンスだ。
「次こそは!」
攻撃パターンA、《特殊閃光砲台》、選択、実行。
モービルの走行が停止する……。
◇◆◇
『うもぅ!なんで当たんないのー!』
紅葉のイライラした声が聞こえる。
しかし振り返るわけにはいかない。振り返っていては上手く走れないから。
と、妙なモーター音が聞こえ……、
次に連続する発砲音。
「うわ、ここで掃射かよッ!」
少しスピードを上げてジグザグに走る。
しばらく弾丸を避けていると曲がり角。右、左。どっちににする?
えぇい迷ってる暇はない!右だ!
そこを曲がると……、
―― 一本道だ。
たしか、謁見の間に直通で繋がる一本道だ。他の廊下よりも広い。しかも謁見の間までは一直線。
という事は、もっと狙われやすくなるのだ。
左に行けば、まだ曲がり角はあったんだけどな……。
これも俺の不幸の所為?
「……まずい」
仕方が無いので魔術を使う。
無声魔術。
思い描くだけで発動できる、ちょっとした反則技。
(悪夢の魔獣と神秘の精霊を喰らう……)
それだけで、身体に魔術がかかる。身体能力が一気に数倍に跳ね上がる。
これなら謁見の間まで二分くらいだ。
――とそこで気付く。
「ん……?」
もう、あの意味不明な物体が追ってこない事を。
ていうかもう100mくらい離れていた。
「あぁ……?」
秀兎は怪訝そうに目を細める。
すると、なんだか変な動きをしているあの意味不明物体が見える。
足を床に深く突き刺して、どうやら機体を固定しているようだ。
四本の足を刺し終えると、今度は丸い本体部分の下が左右に割れる。
そこから何かが出てきて、そこに光が灯る。
丸い筒のような物の奥に、光が灯り……、
「まさかッ……!」
煌いた。
反射的に闇の防御壁を展開。
その防御壁に、《光線》がぶち当たった。
しかし、勢いが強すぎてそのままふっ飛ばされる。
慌てて展開したため闇をそのまま物質化してしまった。これではこの光線を喰えない。
秀兎はそのまま勢いでふっ飛ばされる。
防御壁ごと光線に押され、謁見の間の正門をぶち破る。
そして秀兎は、玉座に突っ込んだ。
◇◆◇
《超光粒子指向砲》
周囲の光を吸収、収束、圧縮。指向性を持たせて対象に照射するビーム兵器だ。
そこらじゅうの科学の文献を引っ張り出して読み返して造った《兵器》。
最高出力での射出初速は秒速450m。
たった7%で最大射程距離は300m。
……失敗した。
こんなものでは無いはずだった。
がっかりだ。
もっとこう、かなりすごい破壊を期待したのだが。
やっぱり実戦結果は貴重だ。
自分の過信を思い知らされる。
「ん〜、実験終了」
もっとがんばろ、頑張って強くならないと。
紅葉はまた、決意した。
◇◆◇
……『また』、決意した。
◇◆◇
少女が力を求める理由は何?
《少女たち》が強くなりたいのは何故?
理由はそれぞれの心の中に。
分野は違えど目的は同じ。
強くなりたい。《力》が欲しい。
純粋な願い。純粋な欲望。
そう願う理由は何?
そう決意するのは何故?
しかし、少女たちは話さない。
そして、少年は……。
◇◆◇
「…………」
「痛いいたいいたたたたッ!」
秀兎は紅葉にアイアンクロー。幼児虐待?こっちは殺人未遂の被害者だ馬鹿野郎。
「いつもの事じゃん離してよー!」
「お前なー。今回は少しやばかったんだぞ!ていうか何度も言うけど俺で試すのやめろー!」
「やーだよーん」
二人は仲が良かった。
いつもの光景だ。
そう、ヒナが来る以前から続く光景の一つ。
平和で平穏な光景だ。
この光景の為なら……
とそこで、
「あ、秀兎さんが紅葉ちゃん虐めてる!」
「あ、陛下なにやってるんですか!」
「「これはあの人を呼ぶしかない!エルデリカさぁん!」」
「あ、マジ?そうい展かぎゃぁぁぁぁぁぁぁー!!」
そんな感じで、魔王の周りは今日も変わらず賑やかだった……。
こういう一話完結にもちょっとした謎々みたいなものがあるから気になった人は読んでくださいねー。
ていうか、どうも一話完結って感じがしなようなきがするなあ……。難しいなぁ一話完結(泣)。