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ウォー・オブ・ザ・黒月【終】大・爆・発!


ヤバイ……!今回の話はかなり……!(汗)

 

 少しだけ時間は戻り……。


「ってちょっと速すぎるぅぅぅぅぅぅ!!」


 猛スピードで飛んで行く少女、シャリークシャーを見て。


「…………」


 エレアは呆然としていた。

 マジスティア魔導国家の貴族だったエレアは、よく父の研究資料やらなにやらを読んでいた。

 昔から好奇心は旺盛だった。

 自慢ではないが、この好奇心のおかげで魔法も一般人では真似出来ないようなくらいまで上達している。

 

 だから、エレアは驚いていた。


 かなり昔、父の研究チームのメンバーが作ったレポートを読んでいる時のことを思い出す。

 レポートには【飛行魔法についての魔導研究、結果考察】と記されていた。

 要するにどうやれば空を飛べる魔法が使えるのか、その実験結果と考察がまとめられたレポートだった。

 私も、その時は生身で空を飛んでみたいと夢見ていたので、そのレポートを読んでみた。

 そして知る。


 今の魔導学で、飛行魔法の実現はとてつもなく、それはもう泥沼から雲を掴むくらい難しいという事。


 だから、素直にエレアは驚いていた。

 そして、またあの疑問だ。

 ――彼らは一体何者なのか?

 エレアの好奇心がくすぐられた。


「…………貴方たちは一体何者なんですか……」

「ん?」

「はい?」

「私の素性は知っているし開発が不可能に近い飛行魔法を使ったり……、一体、一体貴方たちは何者なんですか?」


「「…………」」

 

 そんな質問に、二人は顔を合わせて……。


「「知りたいのか(ですか)?」」


 息ぴったりにそう言ってくる。

 不意に表情が重なって見える。

 二人ともが、同じ表情をして、聞いてきたような感じがした。

 少し影を帯びたような、悲しそうな、それでも平常を取り繕う、そんな顔で。

 エレアの頭の中で、彼らには共通する『何か』があるのでないかという仮説がたった。


「…………ええ、知りたいです」


 すると、ヒナは困ったように笑う。


「ええっと、多分ですけど、これ聞いたら、軽蔑……」


「どうもこういう者です」


「ええ!?そこで何の躊躇いも無く!?しかも名刺!?なんで名刺!?」

「もういいじゃんかよー。隠す必要ねぇよー。だってもう俺ら普通の行動して無いじゃん!」

 

 とかなんとかいっているが、エレアはそんなことよりも名刺を注視していた。


 …………。


 黒宮秀兎。

 職業−魔王。

 住所−魔王城。

 電話番号○○△−××××−△△▽○。


 …………。

 

 名刺にはそう書いてあった。 

 

「は?」


 ええっと、意味が少しわかりかねますが。

 彼は電波な方なんでしょうか……?


「いやだから、オレ魔王やってます」


 まおう、マオウ、…………魔王!?


「魔王って、あの城にこもって「わはは世界を滅ぼしてくれるわ〜」とかいいながらふんぞり返っているあの魔王ですか!?」


 秀兎の心が傷付いた。

 なんだか偏見だ。結構傷付く。


「いやふんぞりかえっては無いけどね…………」

「じゃ、じゃあやっぱり世界を崩壊させる呪文の研究を毎日…………」

「……その類をやっているのはシャリーです」

「シャリーさんはやっぱり魔王さんの部下なんですね!」

 

 なんだかエレアの態度がおかしくなってきた。目が、目が超キラキラしてる。


「やっぱり勇者とか来るんですか?それとも王国の騎士?……はっ!するとヒナさんはどこかの国のお姫様なんですか?」


 わ〜スゲェ。多分予想なんだろうけどことごとく的に当たってるよ。


「そこのところどうなんですかヒナちゃん!」


 矛先が変わる。


「え?私ですか?……そうですね〜、私と秀兎さんが出会ったのは私が五歳、とある貴族が催したパーティーのときでした…………」

「ふむふむッ」

「パーティーといっても大人の付き合い。所詮子供な私はつまらないのでバルコニーで夜風にあたりにいったんです……。

 すると、そのバルコニーには先客がいて……

 『やぁお姫様。こんな所に来て、国王が心配するんじゃないか?』

 その先客こそ、魔王こと秀兎さんだったのです。

 私は、月明かりに照らされる彼の顔に不覚にも見惚れてしまいました……」


 おかしな妄想日記ありもしないおはなしが始まってしまった。

 そしてエレアは異常に興奮中。


「『貴方こそ、こんな所で何をしているんですか?』

 『いや、ああいう大人の催しはめんどくさいからさ。逃げてきた』

 『私も同じなんです。ああいうものは息が詰まりますよね』

 『そうだよな〜。まぁあんたはいいとこの貴族の坊ちゃんが群がってきてたから、なおさらだよなぁ〜』

 彼はおどけた様に笑いました。私も、自然と笑みがこぼれました。

 『そういう貴方も、貴族の女の子に声をかけられているのでしょう?』

 『はぁ〜?まさか。俺みたいな奴に声をかけてくるのはあんたくらいなもんだよ』」

 

 意味不明な作り話は続きまくり、


「『私、そのうち好きでもない人と結婚するのかな……』

 『そうかもなぁ』

 『やだよそんなの……』

 『んじゃ逃げればいいじゃん』

 『え?』

 『逃げればそんな事で悩む必要もなくなるぜ?』

 『でも……、私、外に出たことなんてないし……』

 『じゃあ俺が連れてってやるよ。外に』

 『ほんと?』

 『ああ、いこうぜ。外に』

 そして私は、彼と共に外へと飛び出したのです……」


「きゃー!」


 妄想は膨らむばかりだった。

 




 戦闘が終わる。

 

 圧倒的な破壊で天使三体を滅ぼしてくれたシャリーを俺はねぎらう。


「お疲れさん」

「予想以上に疲れました……」


 よろめくシャリー。この状態ではろくに歩けないだろう。足が震えている。


 まああれだけの魔力を一気に使ったのだ。疲労しないことなんて絶対にありえない。

 俺たちは魔力を扱えるが、それが強すぎればいいという事は無い。

 強すぎる魔力は体を蝕む。諸刃なのだ、魔力というものは。


「やはりもっと強くならないと……」

「あれで十分だと思うけどねぇ?」

「いえいえ、あれだけじゃレイア様にはかないませんよ」


 現役時代のレイアはそれこそ国一つくらいを潰せたらしい。

 今のシャリーには街一つも潰せないそうだ。


 ……怖いなぁ母さん。

 

 とにかく、ここにいても仕方が無いので移動する事にする。

 といってもシャリーはもう少ししなければ動けそうにない。

 

 ……仕方ないよね?


「よっと……」

 

 シャリーをお姫様抱っこする。


「あっ!シャリーさん!」


 さすが、反応が速い。

 

「そこは妻である私の特等席なのに!」

「えへへいいでしょう〜?」


 シャリーは嬉しそうに言う。


「しょうがないだろうシャリーは今歩けないんだから」


 俺はとっとと戦争を終わらせて家に帰って寝たかった。


「キィィィーそうやっていっつも私をないがしろにする!」

「はっはっは〜」


 シャリーはこれ見よがしに高笑い。


「うわ〜んエレアさんエレアさん秀兎さんがいじめるよ〜」

「いやいじめてな……」

「まぁまぁ、そうやって嫉妬させるのもプレイのうちなんですよ」

「なんのプレイだよ……」

「そうなんですか!じゃあこれも愛情の裏返し!?……秀兎さん、貴方の愛情はちゃんと受け取っていますよ!でもその位置は私のものなのにィィィ!」

「いいでしょ〜?」

「ちょ、シャリー、足をバタバタさせ……」

「ほらほら、ここは嫉妬に狂うところですよ!」

「キィィィィィィィィィィー!」

「…………」


 



 

「ふんふんふ〜♪」

「…………うぅ」

「大丈夫ですよヒナちゃん。これもプレイの一部。リアル修羅場ですよ☆」

「…………」

 

 男一人に美少女三人。

 世間はこれをハーレムと呼ぶらしい。

 

 ……これのどこが? 

 

 普通、男がふんぞり返って周りに女の子がはべっているのがハーレムじゃないの?

 あれ、もしかして俺の見解違い?それともこれもハーレムの一種?


 男が女の子をお姫様抱っこして、恨みがましい視線を受けながら、その場をキラキラした目線で見られるのがハーレム?

 

 ……誰か助けて。

 

「……なぁエレア」


 考えてもしょうがないか、と。目的地に着くまで適当に過ごす事にした。

 

「はい?なんでしょうか?」

「エレアってさ〜、なんか普通じゃないよね」

「え!?そ、そうですか?私、普通じゃありませんか……?」

「いやなんていうかさ、魔王って結構嫌われ者だからさ〜、普通の人とは違う反応するなぁ〜って思ったんだけど」

「あ、ああ、そういう事ですか……」

 

 エレア恥かしそうに笑った。

 

「恥かしい話、私、勇者より魔王に憧れていたんです」

「はぁ?憧れていた?」

「ええ、勇者は、周りの人が望むから魔王を倒すでしょう?一方魔王は、自分から望んで世界を滅亡へと導く。周りに流されず、自分の意思で行動する。それって、見方を変えれば自我を持った、強い人間の事じゃないですか。だから私、魔王に憧れているんです」

「……へぇ〜」

「私もそれわかります!」

 

 ヒナは手を上げて共感した。


「やっぱり勇者より魔王のほうがカッコいいですよね!」

「え、そっちの問題?」

「そうですよ!なにが「勇気があれば世界は救える!」ですかッ!今時勇気だけじゃ世界は救えないんですよ!」

「ホントホント!世の中がそれで動いているならお金なんて必要ないんですよ!必要なのは力!エレアさんわかってる!」

「財力!権力!あと誰にも負けない身体能力精神力!」

「そうだー!なのに勇者ばっかり勝っちゃって!意味不明です!勇者は無断で人の家に押し入って押入れとか空けちゃうし一度お城に入れば宝物庫の宝を取っていくし何の罪も無いモンスターを狩って追い剥ぎまがいな事するし!魔王のほうが善人だー!設定では魔王のほうが強いんだー!」

「魔王のほうが勝つべきだー!世の中間違ってるッ!」

「勇気で魔王が倒せるって勇気凄すぎる!お金換算したら0円のくせにー!0円は0円らしく0円でいろー!」

「…………」


 ……あれ、これってつっこまないと止まらない感じ?

 ていうか、エレアのキャラがドンドン崩壊していくのは気のせいだろうか……。

 なんか色々とあって、どれからつっこんでいいのかわからないなぁ……。

 …………。

 

 たった数時間でキャラが激変したエレアに戦慄する秀兎は。

 シャリーはご機嫌。ほか二人は「魔王が一番!」叫びながら小二の遠足テンション最高潮。

 そんな彼女たちを見て秀兎は、思う。


 ……誰か助けて。




 しかし、そんな魔王の切なる願いは作者によって真っ二つだった。




 ◇◆◇


 自らが望んで何かをする。

 

 もし、もし魔王が、世界を滅ぼさず、人の役に立つ事をしていれば、自ら望んでそれをしていれば、人は魔王を魔王と呼ばなくなるのだろうか。


 ……ノーだ。


 世界には、人間には、『敵』が必要なのだ。

 人は特別で、生きていく上で感情が生まれてくる。

 しかし感情は欲望の裏側であり表であり表裏一体、それは常にはけ口が必要なのだ。

 そのはけ口の一つが、『敵』。

 自分の怒り、悲しみ、絶望をぶつける為の、敵。

 それをなす為に武器が、食べ物が、資源が、土地が必要になり、新しい欲望が生まれる。

 王族が自ら欲望の為に民からありとあらゆる物を吸収し締め付ける。

 理由は何だっていい。それを『敵』の所為にすればいいのだから。

 その結果民は絶望し、『敵』を憎み、その敵を滅ぼそうとする。

 そしてまた武器が、食料が、金が生まれる。

 その敵が大きいほど矛先は変わりやすく、絶望が大きいほど莫大な負の感情が生まれる。

 そして、その敵がいなくなればそれが終わるのか。

 ……それもノー。

 人間はまた新たな敵を生み出す。それが嘘でも、絶望に浸る人間がそれを見抜くことは難しい。

 

 負のスパイラル。感情の悪循環。欲望の坩堝。


 俺は、世界の、憎まれ役。俺が、嘘の憎しみを集めて集めて、そして死ぬ。それが、魔王の定め。

 

 …………本当にそうだろうか?

 

 そもそも、自分はこの立場を変える為に何かをしたのだろうか?

 そういう意味では、自分は『勇者』なのか……?

 

 …………いや、そうじゃない。

 

 俺は、別に嫌いじゃないんだ。魔王という立場が。

 俺の周りには、ヒナが、シャリーが、紅葉が、エルがいる。

 魔王城のみんながいる。

 それが心地良いんだ。

 だから俺は魔王をやめないんだ。

 

 それが俺の意思なんだと思う。


 ……………………………………………。





 って何総編集みたいなことやってるんだろう……?

 

 

 

 

 

 ……あれ、もしかしてこれで終わりじゃないよね?





















 その時だった!

 突如黒月学園の高等部校舎が大爆発!

 ルールフォンのおかげで負傷、死者は0。

 原因はミラン・アルノードvs黒月美烏による怪獣大決戦の末の魔術誤爆!

 両者良い所だったのにもかかわらず学園側が仕掛けておいた花火魔術が誤作動を起こして大・爆・発!

 両者は全治一週間の怪我を負い病院へ緊急搬送。

 こうして、大戦記祭は秀兎の勝利で終わった。

 魔王(学園の皆は知らないけど)と言う名に相応しい爪痕を残して……。(一キロ四方に及ぶ自然破壊と校舎を木っ端微塵)



 …………。



「さすが秀兎さん(は〜と)」

「さすが陛下♪」

「さすが魔王様☆」

「ってこんな終わらせ方していいのかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 さりげなく全部秀兎の所為したのは学園長の指示だったりした。

ここで一つ弁解。

ちゃんとこうなる予定だったからね!

無駄に長いからここで終わらせようとかじゃないよ!ほんとだよ!


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