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ウォー・オブ・ザ・黒月【伍】

誤字、脱字、おかしな文章は見つけ次第修正します。

あとちょっとグロいかも……。

血が出た時点でアウトならこれはもうやばいです。完全にアウトです。

 

 その声は、なんとも気色の悪い、甲高かんだかい生き物の声だった。

 

 ――断末魔のような、叫び。

 

 生物の本能的な部分が萎縮する。

 嫌な汗が全身から噴出す。

 恐怖が、悪寒が、背筋を走る。


 そしてそれは姿を現した。


 ◇◆◇


 どうも秀兎です。

 気持ちよく眠っていたのに、ルールフォンによってたたき起こされました。

 で、誰かなぁ〜なんて思いながら通話するとそれは我が祖母からでして……。


「………………え〜と、何、その、実験中の兵器が暴走したから止めて欲しいって事?」

 

 俺が、恐る恐る確認すると……。


《あぁおおむにぇそんにゃ感じだ〜。だから早くしろぉいクソガキぃ〜》


 と、そんな声が返ってくる。

 やけに呂律の回っていない声で、そう言ってくる。

  

「テメェ、クソババァ。酒飲んでんじゃねぇぇぇぇぇ!!」


 しかし、その時にはすでに切られてました……。






 というわけで急遽作戦会議です。


「で、秀兎は作戦をはやめると?」


 シャリーは眠たそうに瞼をこすりながら聞いてくる。俺も眠いけど放っておいたらその暴走兵器にやられるそうなので頑張りたいと思います。


「そう。どうせここが見つかるのも時間の問題だし、だったらもう手っ取り早くその兵器をぶっ殺して敵のリーダーを潰す。いやもうリーダー潰されてたりしてね」


 まぁうちの姉が簡単に倒されるはず無いけど。


「やっぱり雪魅さんの仕業……」

「やっぱり血を感じますね〜」


 やっぱりババァはババァ。

 騒がしいの大好き、やっぱり母さんも血を濃くひいているなぁ。


「あ、そういえば秀兎さん。エレアさんはどうするんですか?」


 とヒナが聞いてくる。そういえばエレアはアルノアード軍だったんだっけ。

 

「ああ、それは心配ないよ。ババァに頼んでエレアをうちのチームに移籍させたから」

「え!?」

「ま、秀兎さんてば手が速いんだから☆」

「そういう誤解を招く発言は止めてね」

「これで貴方も秀兎の愛人に……」

「だから止めてよ。俺を陥れるの止めて」

「あ、え?あぅ、よろしく……」

「よろしくです〜」

「……みんなノリノリだね…………」

 

 やめよう。かまってたらきりが無いから。

 

「あ〜、なんかもうめんどくさい。このまま帰っちゃ駄目かな?」

「駄目ですよ、休みがなくなりますよ」

「……………………。……やるしかねぇ!」

「ですねぇ」


 休む為なら何だってやるぜこの野郎!

 ……でもまぁ、やるって言っても俺は特に何もしないんだけど。


「え?じゃあ私たちって何するんですか?」

「いや、何もしない」

「は?」

「大体作戦て言っても、

 1.シャリーがこの日のために作った魔術を使う。

 2.最初は対人用だったけど、もうめんどくさいんでその暴走兵器ごと倒す事にする。

 3.まぁシャリーが勝つんで俺らは見物。

 4.終わったら敵のリーダーを倒して終わり〜

 て感じだからまぁぶっちゃけやること無いんだよね」

「ていうか、もう話すことないし行こうよ」


 シャリーは眼を輝かせている。自分が活躍できる事が嬉しいっぽい。

 ま、たしかに話す事も無いし俺もちゃちゃっと終わらせて帰りたくなってきた。


「でも、具体的にシャリーさんどんな魔術を使うんですか?」


 シャリーは、鋭い、獰猛な笑みを浮かべて言った。



「魔法による超広域爆撃」

  

 

 わ〜、超物騒。

 

 ◇◆◇



 四人はすぐさま森を抜ける。

 といっても、身体能力が比較的高い俺がヒナを、シャリーはエレアを背負って森を突っ切ったのだが。


 すぐに森はひらけ、今回の最大の戦場である廃墟が眼に映った。

 しかしその光景を見て四人は……。


「「「「…………は?」」」」

 

 

 

 ……………………………。

 なんだろうあれは?

   

 

 

「…………え〜と……」

 

 全身が真っ白で、真っ白な翼の生えた、三十階建てビルみたいな、巨人。

 顔には泣いているような不気味な仮面がつけられている。

 頭の上には、淡く発光する丸い輪……。


 《天使》です。

 

 《天使》のような意味不明の物体が、三体。廃墟で暴れまわっています。

 その動きはかなりゆっくりとしている。

 しかし、

 デカイ手のひらで地面を叩き、人間たちを潰している。

 魔法を使って人間たちを攻撃している。

 たった一回の攻撃で、数十人を一気に屠る。

 


 ……………なんか、軽い悪夢の類を見ている気がする。



 《天使バケモノ》が、人間を駆逐していた。

 

「なんだろうあれは」

「なんでしょうあれは?」


 駆逐されていく生徒たちはルールフォンによって大きな怪我をする前に病院送りにされていた。

 

 しかし、その光景はあまりにも異常すぎです。

 人が、ゴミのように駆逐されていくその光景。

 真っ白な謎の生き物。

 あの異常なまでに白い身体がキモチワルイです。

 あの泣いているような仮面がキモチワルイです。


 と、


 その気持ちの悪い仮面をした気持ちの悪い物体が、こちらを向いたのを、俺の目はとらえた。

 ここからあの気持ち悪い物体までの距離はおよそ2キロ。

 その気持ち悪い物体の仮面は、少し見難いのだが……、


 ――その仮面が、笑ったような表情に変わる。


 翼を広げる。その、純白の翼が、さらに白く発光する。

 あの生き物の口元に、光が収束していくのが見える。


 ――口が、きらりと光る。

 

 それは反射的な行動だった。

 自分でもびっくりなくらい、反射的に俺は魔法を使っていた。



 ――それは、光の線。真っ直ぐに、俺たちを呑み込もうとした、光の巨槍。



「光よ集まり決して侵されぬ加護の壁となれッ!」


 俺は、それを魔法の壁で受け止めた。


「……ッ!は、はぁ!?なんだよこれ……!」


 光学系広域攻撃魔法、《光天火きらめき》。

 それをはるかに上回る射程距離、魔力の濃度、速度、魔法陣の展開も無しの極太ビーム。

 ……ていうか、最近の天使はビーム吐くんだ…………。

 


 ビームの照射は約5秒。

 《天使》は、一度吐いて満足したのか、それとも俺が消え去ったのかと思ったのか、どちらにしよ標的を廃墟にいる人間に戻した。


「……大丈夫か?」

「え、ええ、まぁ大した事ないですけど……」

「あれは、何……?」


 呆然としている。そりゃまぁ、そうなるよね。

 だって、神聖な雰囲気と印象が売りの天使が、人間を虐殺中なんです。

 しかも、ビームを吐きました。

 かなりシュールな光景です。


「え、えと、…………まぁ計画に変更は無しなんで……シャリーやちゃって!」

「アイアイサー!」


 シャリーはポケットから何かを取り出した。


「何それ?」


 それは、紅い宝石が埋め込まれた首飾りだ。


「え〜と、これは飛行魔法の発動と効果を持続させる……ああ、あれですよ、霊装?いや魔装みたいなもんです」


 それを首につけると、背中にプレート状の白い羽が生える。今度は黒い宝石がついた腕輪をつけた。


「これはレイア様から頂いた物なんですよ」

「母さんが?それなんに使うの?」

「これをつければ魔力がほぼ無限になるって」

「…………すごいね」


 無限ってなによ、チート?チートですか?

 

「さぁさぁ準備も整ったことですし……」


 シャリーはクラウチングスタートの姿勢をとった。


「陛下カウントダウンお願いします〜」

「はいはい。んじゃいくよ〜5、4、3〜」

「ごー」

 

 ドバァッ!と、土を巻き上げて、シャリーは飛び立った。


「……………」


 かかりましたよ。土が。俺にね。

 しかもカウントダウン無視されました。

 ……なんか、俺の扱い酷くない? 


「ってちょっと速すぎるぅぅぅぅぅぅ!!」


「「「………………」」」


 ……なんか、心配だなぁ色々と。


 ◇◆◇


 この日のために開発した飛行魔装。

 少量の魔力によって生成される薄い膜のよな飛行翼が重力を推進力へと変換。

 魔装に付随している自動バランスコントロール機能によって安全な飛行が約束され……、


「ってちょっと速すぎるぅぅぅぅぅぅ!!」


 てませんでした☆

 おかしい。ちゃんと計算して製作したはずなのに。

 思ったよりもコントロールが難しかった。

 重力変換を推進力から揚力へ。空中浮遊の体勢をとる。

 

「…………」 

 

 性能テストをすっ飛ばしたのがまずかったようです。

 仕方が無いのでまず少しだけ慣らしをしよう。


「えーと、まず……」


 旋回テスト。右左、右左、左右、半回転に一回転……。

 

「うんオーケー。次は……」


 と、そこで目の前に白い何かが迫っている事に気付く。


「わわ、ちょっとくらいまてやこらー!」


 慌ててその迫ってくる何かを避ける。あ、これ手じゃん。

 見ると天使っぽい奴の腕が伸びていた。


「うわ、ゴム人間……」

 

 ゴム天使?どちらにせよキモチワルイよ……。


 他二体の口が煌めく。ビームだ。

 慌てて急上昇しビームを回避。

 飛行魔装で出せる最大速度は550m/s。

 一般拳銃の弾丸速度とあまり変わらない。

 私の意識に反応して、スピードを0から100、100から0と瞬時にいききできる。

 風圧問題、平衡感覚やいわゆる『乗り物酔い』は魔装に付随している魔術により解消されていた。

 

 私は上昇を止め、飛行翼を四角錘の形状に変形させる。

 その四角錘を私の前方に配置、固定。

 そのまま《天使》に向かって超高速突進+超高速回転。

 飛行翼は濃密な魔力によって生成された超硬度パネルだ。

 まさに、一つの弾丸のように《天使》の腹を貫く。おびただしい血が溢れ、天使は断末魔のような叫びを放つ。

 思ったよりも生物を貫いたような感触に顔を顰める。


「兵器って、生物兵器ですか……」


 これでは巨大な人間を相手にしているのと変わらない。

 まぁ人間を殺すことなんてなんでもないけど。

 

「でも残骸を見るのはいやですねぇ……」


 廃墟に血の雨が降っている。

 私は天使に捕まらないように飛び回りながら考える。

 腹をぶち破られた天使は荒々しい呼吸で自分を叩き落そうと暴れていた。

 腹からは黒いパイプやらコードがたれ下がっている。


「うぇ、こいつもしかして消化器官が……」


 しかし、それに気を取られていた所為か。不覚にももう一体の天使の存在に気付かなかった。

 天使の笑った仮面の口が開く。

 よだれをたらし、獣の牙が無数に並んだ醜い口、そして真っ暗な喉。

 そのまま口で覆れてしまう。


 つまりシャリーは天使に食べられてしまった。


 視界は真っ暗。


「くさぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃーー!!」


 立ち込める死臭とか錆の匂いとか、とにかく精神的に参る。

 しかし、これしきの事で諦める私ではない。 

 精神を集中(といっても臭いのでそれほど集中できないが)し、唱える。


「我、まばゆき光を持って暗闇を葬る。光は剣。光は槍……《光穿華せんか》」


 呪文。魔法陣の展開をより精密に、緻密に、素早くするための言葉。

 魔法陣が展開され、魔法陣の中央に光が生まれる。

 やがてその光はバスケットボールほどのサイズに膨れ上がり……、


「さぁ放て!」


 解き放たれる。

 四方八方に光が放たれる。

 無数の光が、暗闇を突き破る。

 天使の頭を、突き破る。

 

 私は最大全速でそこから脱出、上空に急上昇した。


「一体ずつ相手をしていたらかなりメンドくさいので計画を変更しましょう」


 体勢を立て直し、地上を見下ろす。

 本当なら、ここで数百個の《雷天輝》をぶっ放す予定だったのだが、それでは倒せそうに無いので。


 腕輪の宝石が光る。

 この腕輪―― Epilas error ――は魔力を造るのではなく、その辺に漂っている魔力を集める収束器の役割をする。

 魔力とは、生物が自然に生み出す生きる為の力だ。

 それを腕輪は、《大地》に宿る魔力を奪い集め、そのまま自分の魔法に注ぎ込むことが出来る。

 つまり、


「天空に閉じ込められし断罪の光よ、契約に従い我が敵の存在をかき消せ!」


 今のシャリーにかなう魔術師はいない。


 魔法陣が展開される。複雑な模様、図柄、文字、それらの配置を丁寧に、緻密に、精密に。

 中央に、淡く黄色い光が集まる。

 それが膨らむ。大きく、大きく、さらに大きく、膨らんでいく。

 

 そして、その光球は、巨大な弾丸となって、



 

 地上に放たれた。




 天使たちは、ゆっくりとした動きで私に光線を吐こうとしていたが……。


 その光の弾丸が、着弾と共に爆発する。

 巨大な光が、ドーム上に広がり、天使たちを呑み込む。

 

 それは破壊の光だった。

 

 全てを破壊する、断罪の光。

 直径1キロメートルの、ありとあらゆる物が壊される。

 

 あらゆるものを破壊し蹂躙し、その光は砕けた。

 


 後に残ったのは、大きく穿れた大地だ。



 天使たちは、跡形もなく消し飛んだ。


 ◇◆◇


 シャリーは、そんな光景を見て、ちょっと溜息を吐く。


「んー、まだやっぱりこれは慣れないですねー。あイテっ!イタタタッ!まずいよぅ腕が痛いようぅ」


 身体にちょっと負荷をかけ過ぎた。膨大な魔力はやっぱり扱いが難しい。

 もっと頑張って強くなろうと心改めるシャリーだった。

シャリー強すぎるよぉぉぉぉぉ!

……なんて叫んでみたくなる今日この頃。

これ以上強くなってどうするんでしょう?

あと謝罪です。

すみません、文章が長すぎて二話じゃ終わんなかったよー!(泣)

頑張って次回には終わらせたいけどまた伸びるかもしれないよぅ……(泣)

ホント力不足ですみません……。

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