表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/59

拾八.最強の母の母は最凶。

魔王の教室。

女王の教室みたいだなぁ〜。

 

 日本は元々、前科や様々な理由で社会復帰、日常生活が出来ない人達が集まり、暮らしていた本当に小さい集落だったそうだ。

 

 そして、それが今から八十年前。正確には八十二年前。

 そのたった八十年で、日本は帝国に匹敵する『暮らし』、『国家的地位』を得る。


 その時の先導者が、『黒宮雪魅くろみやゆきみ』。俺の祖母である。


 日本を引っ張り、『集落』から『国』に変えた、超人女性。


 その祖母が創った学校が、我が母校である。


 ――黒月学園。


 中高一貫。広大な敷地。来る者拒まず。

 

 有能な人材をいくつも輩出してきた、日本で最も有名な学園だ。


 ◇◆◇


 一年十組。それが魔王の教室。


 黒宮秀兎。学園長の孫であり、現生徒会長の弟。ちなみに現在生徒を牛耳っているのは美烏だ。生徒会の権限を増やしまくり、職権乱用も良い所な活動をしているのです。もうアイツが魔王でもいんじゃね?と思う位の暴虐ぶりだ。


 まぁそれはおいといて。


 黒宮秀兎オレは、右手で両方のこめかみを押さえた。


 眩暈めまいがする。 

 

 本格的に、眩暈がする。

 

 目の前の光景が、ぐにゃりと歪む。

 

 何でだろう?本当に、何でなんだ。

 

「……………………」


 目の前の、俺の前と右斜め前の悪友たちが超騒ぎまくってる。


「なぁ秀兎!見ろ見ろ!見なきゃ損だぞ!」

「いいな〜。あんな子に好かれてみたいっ!」


 ああ、そうだね、可愛いね。


「あ!あ!こっち見た!ぜってぇ〜俺見てくれたよ!」

「俺!俺!あの子に詩書いちゃう!」

 

 ちょっとそれ恥かしくない?もう気持ち悪いよ?


 と、そんな感じの突っ込みも入れる事が出来ない俺は、げんなりとした顔で前を見る。


 そこには、




 そこには『金髪』で『童顔』で『蒼い瞳』の人が立っていて、




 あれ?この人めっちゃ見覚えあるわ〜って感じの人が立っていて。


 

 

 その人を連れてきたくそったれ教師が、


「は〜い『転校生』は女の子でした〜。おめでと〜野郎共、残念でした子猫ちゃん達〜」


 と、ちょっときいたことあるわ〜な発言をする。


 そして、


 そしてその転校生は、


「今日からお世話になります、『白宮』ヒナです!皆さん、よろしくお願いします!」 


 あああ、何で居るのぉぉぉぉぉ〜…………。


 ◇◆◇


「そっか白宮さん帝国から」

「はい、貴族の父が死んだ為に向こうでの生活に問題が……」


 なんて、ちょっと悲しいよみたいな顔をした瞬間。


「きゃぁぁぁぁかわいいぃぃぃ!!」


 と女子から黄色い声が上がり。


「えぇ白宮さんて魔法つかえるんだぁ〜」

「えぇ、特に治癒系魔法は得意です」

「僧侶みたいだねぇ〜」

「淑女たるもの、男性をサポートするのが使命ですから」


 なんて、嬉しそうな顔をした瞬間。


「されてぇぇぇぇぇぇ!!」


 と男子から奇声が上がり。


 

 とにかくヒナが大人気だ。



「……はぁ……………」


 そんな、自分の嫁の人気ぶりを遠巻きに感心していると、

 突然、真っ黒な物体が視界に入ってきた。


「うお……」

「自分のお嫁さんが大人気で嫉妬ですか?」


 シャリーだ。真っ黒な、艶やかな髪のロングを、無造作に流している。あれだ、海坊主だ。陸地に生息する海坊主だ。


「お前、折角の顔がそれじゃ見えねぇぞ……てこれ俺何回言ったけ?」

「さぁ?私よく言われますし、一々数えてません。で?で?秀兎はやっぱり嫉妬してるんですか?」


 と、黒髪の間からキラキラ光る目に、ちょっとうんざりしながら、


「あのなぁ、俺はそういうのしません。俺に独占欲なんて、あると思う?」

「……ありませんねぇ」


 まぁ、大半の人生を一緒に過ごしたこいつなら、そう言うだろう。


「欲と言っても旺盛なのは主に『性欲』『睡眠欲』『食欲』『だらけ欲』ですかねぇ」


 ん?


「ちょっと待ってよ。何?俺そんなに性欲旺盛じゃないよ?」


 しかし、シャリーはにやりと「しめた」という様な顔になって。


「じゃぁ棚の中のエロゲーは捨てる方向で」


 グハッ!?


「待って!それだけは!エロゲーって言っても泣きゲーとかもあるから!結構感動するよ?だからやめて!」

「泣きゲーですか。まぁそれは私もやりたいので免除しますが、……そうですねぇ〜『飼い主日記』と『宮殿の悪魔』はぼつですかねぇ〜。結構歪んでますし」

「あー、あれは俺もさんせ〜。『飼い主日記』は主観が女のマゾ向けだし、『宮殿の悪魔』はバッドエンドが多すぎるしな〜。全滅エンド、国崩壊エンド、殺戮エンド、ヒロイン殺しエンド、主人公死亡エンド、主人公がヒロインに殺されるエンド、その他。まぁハッピーエンドも大して感動できなかったし別にいいよあんなクソゲー」

「ですよねー」

 

 ……ん?


「……なんで知ってんの?なんで内容知ってんの?ていうか何でそれがある事知ってんの!?」

「ははは、それは乙女の秘密って奴ですよ」

「コワッ!乙女の秘密コワッ!……ていうか何?人が居ない時に無断で部屋に入って物色するってどういう事?」

「乙女の秘密がばれた!?」

「いや大体想像が付くでしょ……」

「まぁ無断で入ったり無断で物色したのはすいません。まぁいいじゃないですか、ほらアレですよ、幼馴染の特権」

「だから俺の小説の位置も知ってたのか。納得納得、……と行きたい所だけど念のため聞いておこう。他には何もしてないよな?」

「すいません、パンツの匂い嗅ぎました」

「大胆告発ぅぅぅぅ!!」

「ははは、残念な事に洗い立てパンツでした」

「いや俺放置とかしないし……」

「今度はゴミ箱の中身でも嗅いでみようかと……」

「止めてぇぇぇぇ!……ていうか何?何がしたいの?幼馴染だからってそういうことしていいの?」

「はっはっは」



 と、ひとしきりバカ話して、



「…………ははは」

「…………ははは」



 と、二人で笑って、



「……とりあえず、学園長ババァんとこ行こうぜ」


 恐る恐る、提案する。


「ですね。あの人、今回は何を考えてるんでしょうか……?」


 心なしか声が震えてるぜ。


「わからん。でもきっとおかしな事だ」

「……『遺伝』って言葉知ってます?」

「……当たり前だろ」



 あー、うん、そうなんです。



 もうほんとに悲しいことに、




 学園長は母の母のなのだった。


 ◇◆◇

 

 母の名前は、『黒宮・竜輝・レイア』。

 俺の祖父(先々代魔王)が、ややこしい事に『レイア』の名前を付けたのだ。

 なんでも、『レイア』という言葉には『神秘』『穏やか』なんて意味があるらしいのだが、まぁ知ってのとおりでそんな言葉はあの人には身につかなかった。

 

 そして学園長室前。

 

 超小声で話す二人。

 

「シャリー、マジで行くの?」

「陛下をみすみすこんな危険地帯に行かすわけにはいきません。とりあえず、私から入ります」

 

 なんかシャリーが公私の公なモードになり、王様思いの良い部下になっている。

 

「気をつけろ。あの人見境無く襲ってくるから。捕まったら最後かもしれないぞ……」

「分かってますよ……」 


 コンコンとノック。返事はすぐに返ってきた。

 

「どうぞ〜」

 

 その声に、二人の背筋を、「ぶわりっ」と得体の知れない何かが走る。

 

「し、失礼します!」

 

 震えながらも、ドアノブを回し、ゆっくりとドアを開け……

 

 

 ドゥン!!「べぶぅッ!」


 

 そんな音を聞いた瞬間、シャリーの姿が消えた。


 いや、良く見たら丸い鉄球が腹に直撃したシャリーが真後ろに吹っ飛んでいた。

 

「!!??!??!?!!」 

 

 戦慄。

 

「あれ〜?ほんとにシャリーじゃん。っかしぃな〜確かに秀兎の気配だったのに……」

 

 と、到底齢八十を超えてもいなそうな女性の声が聞こえる。

 

「おーい大丈夫かシャリー。すまんすまん!」

 

 ぺたぺたぺたと、変な足音が聞こえる。

 

「!!!!!」


 あ、 

 

「なんだいるじゃぁ〜ん」


 と、ドアから出てきた『鬼』が言う。

 無邪気に笑って、そして邪悪に笑う。

 

「ははははは。二人とも、来い」

 

 シャリーがふわりと浮く。そのままふよふよと学園長室に引き擦り込まれる。

 

「や、やだぁぁぁぁああああ!!!!」


 そんな声も、聞いてくれる人はもちろんいる筈も無く……。


 程なくして、


『ぎゃぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!』


 断末魔が、響き渡るのだった。

と、言うわけで、次回から楽しい楽しい学園生活が始まる、かも知れない☆

 まぁぶっちゃけ不幸な出来事書いていく予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ