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拾.嫁の激憤。でも魔王は気にしない。

無人島と書いて不幸と読みます。

 

 【無人島】 文字通り、無人の島である。

 

 その島は意外にも広かった。

 鬱蒼と生い茂る密林だけかと思えば、そよ風が心地よい草原の丘があったり、小規模の砂丘があったりもした。

 

 二人は、風通しの良い草原の丘にいた。


「人っ子一人いませんねぇ……」

「そうだな〜」

「こんな大自然なのに、動物もいませんねぇ……」

「そうだな〜」

「優しいようで、どこか寂しいですねぇ……」

「そうだなぁ〜」


「って、なんでそんなに落ち着いているんですか!?」


「いいじゃねぇかー」

 魔王は草原の上に寝っ転がっていた。


「良くないですよ!人っ子一人、動物も居ない状況でよくそんな平然としていられますねッ!?」


「へ?これそんなやばい状況かな?」


 魔王は、あっけからんと、なにかすごい事を言い放った。 


「ヤバイですよ!食べ物が無いんですよ!私たち餓死しちゃいますぅ!」


「弁当があるじゃんか」


「サンドイッチが六個にリンゴが二つですよ!?そりゃ今日は耐えられますけど今日中に救助が来るとは思えないですし……」


 そう、救助が来る事は絶望的だった。


《門》が繋がった先と直結している際は、繋がった先にも《門》が現れる。


 しかし、その《門》が何処にもない。

 

 という事は、何かのはずみに門との接続が絶たれた、という事になる。

 しかも、今回は偶然この場所に送られてきた為、もう一度この場所に《門》を接続するのはかなり難しいだろう。

 

 救助は絶望的、動物はおろか、人っ子一人見当たらない。という事は、当然食料も絶望的。

 こんな、不幸のどん底みたいな状況。

 

 ――なのに、


 魔王は、まるで「こんな状況屁でもねぇよ」と言っている様に寝っ転がっている。

 

「大丈夫、なんとかなる」

 

 とか言いながら、あくびしてやがる。


 ヒナは、なんか「もうちょっと危機感を持って欲しい」というか「この状況解ってんの」とか、とにかくちょっとイライラした。

 

「のんきにあくびしている場合じゃないですよ!どうするんですかのこの状況!」

 

「焦らず騒がず、ゆったり行こうやないか〜い」 

 

 そのゆったり精神が無駄にムカつくッ!


「エセ弁使ってる場合じゃないですよ!なんでそんなに悠長なんですか!」


「はっはっは〜」


「はっはっはーッ!?なんでそんなに上機嫌なんですか!?こっちはもうイライラしてイライラしてー!!!!うあ”ぁぁぁうむ!!!!!」


 ヒナの怒りのボルテージはもうMAX!もはや人にも理解できない言語を放っている!

 

「せりゃぁぁぁあああああああ!!!!」

 

 『光の拳』ならぬ、『光のつま先』が放たれた。

 

 目標は鳩尾。目的は腹いせ。それいけ私のスペシャルキィィィック!!!!

 

「あうぼぁぁああああああ!!??」


 魔王はそのまま三十メートルくらい吹っ飛ばされ、光の属性の所為でそのまま気絶(多分)。地面を回転しながら最終的に黒芋虫の屍のようになった。


「たくっ!ふざけんなって感じですよ!」


 それだけ言って、ヒナは歩き出す。とりあえず、食料だけでも確保したかった。


 ヒナが去った後、しばらくして魔王は起き上がる。


「ふー…………」


 後を追う事もせず、魔王は仰向けに寝っ転がるだけだった。


    ◇◆◇

 

「……と、勢い良く飛び出したのはいいものの…………」


 当然、食料なんて見つかるはずも無かった。


 人が生活していた痕跡はある。今に比べると乱雑だが、人が行き来できそうな整備された道はあるし、街の残骸らしき物も見つけた。


 しかし、人の、いや動物の気配がない。


 鳥も鳴かない。獣道も無い。人の声も聞こえない。


 包み込むような自然、ただそれだけがこの島に存在する。


 優しいようで、すごく寂しい。本当に、そんな感じだった。


「う、うぅ〜」

 

 今更後戻りは出来ないな〜、とか、今戻っても気まずいな〜、とか思ってしまう。

 

 あと、あののほほんとした態度を見る位なら、行動していた方がまだいいかなぁ〜という気持ちもあった。


「……うぅ、秀兎さぁぁん…………」


 でも、結構寂しがっていたヒナだった。


    ◇◆◇


 ――いいのか?放って置いて。


 大丈夫。俺の予想だと十五分くらいで帰ってくるよ。


 ――ふむ……。まぁお前の行動に意見する訳ではないが、ああいう時の女は結構しつこいぞ?

 

 大丈夫だって。そのうちスンスン泣いて帰ってくるよ。


 ――まぁ、別に私は気にしないがな。それより、そろそろ私も外に出たい。


 いつもインドアなアナタがついにッ!?


 ――勘違いするな。そろそろ外に出なければ『我慢出来なくなる』という事だ。


 …………発情期?


 ――ばっ!違うに決まっているだろうっ!馬鹿か貴様はぁ!いや馬鹿だ!変態だ!エロだ!


 初心うぶだね……ちょっと!なにこれ!?なにこのイメージ!?危ないって!俺死ぬって!


 ――死ね死ね死ねッ!カス!馬鹿!ハゲろ!っ!やめろ!私にそんなイメージを送るな!


 おらおら!ふざけんな!そっちがその気ならこっちも仕返しだ!


 ――やめろー!う……あ、くっ!負けるかぁぁああああ!!


 いやぁぁぁあああああああ!!!!首がッ!首がちょん切れたー!

 

 ――……!………!……………!

 

 ………!……!


 そんな感じで。


 〜十五分後〜

 

「あ、帰ってきた」


 予想通り、なんかスンスン泣いて帰ってきた。


「お帰り〜」

 

 魔王は笑って出迎える。改めて思うけどかわいいなぁ〜。


「秀兎さぁぁぁん。結局何もありませ……………」


 ヒナは、秀兎に飛びつこうとして、しかし止めた。


 なんかもう自分は幻覚を見てるのかと思った。

 それ位に目の前の光景はふざけていた。

 いやもう自分が泣いているのが馬鹿らしくて、その上目の前の光景に自分は忘れかけていた彼への怒りが溢れ出す!

 なんと、魔王は、













「なぁぁあああに『鍋』喰ってんだぁぁああああああああああ!!!!」













 鍋喰ってました♪


鍋です!魔王が鍋を!出るか嫁のスペシャルキック!?

……という事は全くありません。

次回は、《闇》について触れていったり行かなかったり。

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