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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
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008 ステ1の実力

ゲームは1日1時間?

知らぬ!!

「とりあえずこの吸血鬼ボディに慣れてから」


 というコトで『魔界飯 新宿』をでた。


 ずっと黙って奥で聞いてた大将が提案してくれたのだ。

 それもそうだね。依頼とか気が早い。


 なんせステオール1。

 ついでにLVも1だ。

 経験値返してください。グッスン。


「陽光ダメージ ヒジカタに1のダメージ」

「陽光ダメージ ヒジカタに1のダメージ」


 建物を出ると陽光ダメージが復活する。

 HPバーがチョコチョコ忙しく動いている。

 この減った端から満タンに戻ってるのは『再生』スキルの仕事なんだろうな。


 ありがとう。

 これからもヨロシクな。


 『再生』スキルが頑張ってるおかげで、こうやって俺は日の当たる世界を歩いていられるのだ。

 『再生』サマサマだな。鍛えよう。


 それにしても陽光ペナルティよ。

 マイナス100はキツ過ぎだろう。

 ステータス値を102まで上げて、やっと2になれるのか。

 どんだけ先なんだ。


 いっそ昼はジッと隠れてて、日が暮れてから活動するか?


 うーん、それもなぁ。


 せっかく面白いゲームなんだから昼も夜も楽しみたい。

 ゲームは1日1時間? 知らぬ!!


 とにかく、今の状態でどこまで戦えるかだな。

 それを基準にして今後の算段を立てよう。スキルはあるし。


 バトルに関しては俺も結構慣れたつもりだ。

 まぁ、瞬殺はなかろう。



挿絵(By みてみん)



 瞬殺でした。


 お相手はキノコと草の植物コンビ。


 初バトルと同じ相手。

 つまり、『ヒューマン剣士LV1』で良い勝負をした相手だ。

 『吸血鬼無職LV1陽光ペナ中』ではどうだったかというと。


 まず紫キノコの突進頭突きを避けられなかった。

 みぞおちに食らって悶絶。

 HPバー7割減。

 次にガジガジ草のムチ蔓攻撃直撃。

 HPバー消滅。


 俺はぶっ倒れた。


 戦闘不能を示すドクロマークのアイコンが頭上に出ている。

 普通のソロプレイならこの時点で死に戻り。

 デスペナルティ付きで最後のログアウト地点からやり直しだ。


 しかし俺はそうならず、ぶっ倒れたままだ。

 身体は動かないが意識はある。


 植物コンビが立ち去ってから1分後、俺は復活した。


 ゼロになってたHPバーがジワジワ回復していく。

 再生スキルが頑張ってくれてるようだ。

 死に戻らなかったのは吸血鬼がアンデッド系のモンスターだからだろう。

 戦闘不能状態で心臓に杭でも打たれたら死に戻るのかもしれないけど。

 そこまでされちゃうコトは滅多にないはずだ。そうだよね?


 しかし、予想以上に弱いな俺。

 弱い。超弱い。ルナティック弱いぞ。





 さて、俺は無様に惨敗を喫したワケだが。


 得るモノがとても多い一戦であった。

 変更点が幾つかハッキリした。


 ・攻撃を食らうと被ダメージが大きい。(低ステのタメ)

 ・殴っても与ダメージが小さい。(低ステのタメ)

 ・動きが遅い。(低ステのタメ)

 ・HPがゼロになっても死に戻らない。一定時間経過で復活する。(アンデッド系であるため)

 ・所持金品にデスペナルティはない。(アンデッド系であるため)

 ・再生スキルによるHP回復量は陽光ペナダメージより大きい。


 そして最初の3つ。低ステによる弱体化なのであるが。

 実際に戦ってみてわかった。

『ステータス値オール1』というのは、ステータス値による補助が全くない状態。

 素の自分の身体能力だけの状態。

 つまり、『リアルの自分そのまんまである状態』、だというコトだ。


 ……いかん。絶望的だ。


 リアルの俺はタダの高校生で帰宅部である。

 たったいま、植物コンビと戦って惨敗した俺の身体能力はまんまソレだった。

 弱い。

 勝てるワケがない。


 …………………………………………いや。そうか?


 リアルの俺にはなんの心得もないがココはゲーム世界だ。

 スキルがある。

 スキルをもっと活用すればどうだ。

 転生してから得たスキルを、俺はまだロクに使っていない。


 キノコの突進を食らった際に殴り返したが『怪力』は発動しなかった。

 発動条件はなんだ?

『影魔法』スキルは呪文リストを確認してもいない。

 攻撃呪文とかあるんじゃないのか?

『吸血』ってなんだよ。

 戦闘中に血を吸うの? 回復技か?

 帰宅部だが回避ぐらいはできそうな気もする。

『回避』スキルもあるし育てればイケるんじゃないか?

『見切り』は、よくわからんな。ただ無駄スキルでもないだろ。


 ……よし。

 なんかイケそうな気がしないでもない。


 リトライだ。

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