079 お話ししましょう
9/14更新2つめです。
挿絵が増えたので短めです。
約束の時間。
俺はカンオケ部屋、つまり自分の寝室に入った。
ドキドキ。
なんで自分の部屋入るのに、こんな緊張せにゃならんのだ。
「あ」
「なんですか、その顔は。
ナニか文句でもあるんですか?」
いや。やっぱ似合うな、その服。
イズミは昨日買ったあの私服だ。
「そうでしょうとも。
気合い入れて選びましたからね」
ふんすと胸を張る。頬がほんのり紅い。
「………。
『義務』の前にちょっとお話ししましょう。
ここに座ってください。マスター。
はい、正座で」
……正座ですか。
はい、わかりました。だから睨むなって。
イズミも靴を脱いで正座。
俺たちはベッドの上で正対?した。
「マスターは明日から3日間休暇を取られるワケですが。
開店初日も放り出して。イイご身分ですね」
そんな繁忙期に有給申請したゆとり社員みたく言われても。
「すまん。
だけど仕方ないだろう。コレばっかりは」
「それは分かっています。
廃人になれとはわたしも言いません。
ですけど、寂しいじゃないですか。わたしが」
あれ?
なんか可愛いこと言い出したぞ?
「わたしは3日前、今の『わたし』に転生してマスターにお仕えするようになりました。
そして明日から3日間放置ですか。
ちょっと薄情じゃありませんか?」
うーむ。そう言われるとそうか?
イズミがググイと顔を寄せて圧迫してくる。近い。
「マスターは眷族にとって、とても大事な存在なのですよ。
その自覚を持ってください」
「わ、わかった」
これから気をつけます。だから落ち着いてくれ。
イズミから風呂上がりの良い匂いが。
「ログアウトは仕方ありません。
その代わりわたしにキチンと指示をください」
いや、やりたいようにしてイイぞ?
食べ歩きとかどうだ?
「それは有難うございます。
ですけど自由の方はいいのです。充分いただいています。
この場合わたしに必要なのはむしろ束縛。
具体的には短、中期的な目標設定です」
自由より束縛だとか、LVが高すぎて俺にはわかりません。
「性癖の話じゃないですよ?
マスター不在中の行動指針が必要だというコトです。
例えば『魔法スキル強化優先』とか『商売利益優先』などです」
なるほど、そういうのね。
よかった。ちょっとビビったぜ。
「マスターはわたしの自主性を尊重してくれてますが、それが一番困ります。
マスターの希望に添うのも眷族の義務なので」
ナンデモイイが一番困る、とか聞いたコトあるな。
ならばお言葉に甘えて希望を述べさせてもらうか。そうだな。
「『料理スキル強化優先』で頼む。
ただし、お店の方もちゃんとした上で。
先生にもキチンと加工賃とか渡したいし」
「当然です。
お店を開くからには黒字経営を目指します」
あと将来的には『オムライス』とか作ってくれると嬉しい。好物なので。
「洋食の中級レシピですね。了解です。
『オムライス☆5』を長期目標として設定します」
そこまでしなくていいです。
☆1でいいから食わせて。




