078 ヒジカタ錬金堂
やっとタイトル回収。
がちゃがちゃがちゃ。
バカ。ほんとバカなんですから。馬鹿マスター。
ねー、シロ。
夕飯すませて洗い物してるんですけどね。
力が入りすぎてお皿が欠けちゃいそうですよ。危ないじゃないですか。
「店の準備が楽しすぎて忘れてた。スマン」
スマンで済めば警察要らないんですよ。
警察あるかどうか知りませんけど。
しかたないから明日はマスター抜きでオープンすることに。
まったくもー。
そう決めたら決めたで「大丈夫か? できるか?」って、不安になったみたいで。
いま、工房で『傷薬☆2』作りまくってますよ。
今夜は外でオオカミ狩りするつもりだったそうですけど、それも中止。
ミライナさんは夕飯をご一緒してから組合に戻りました。
また明日の朝からここで『マナポーション』作りに励むそうです。
よろしくお願いしますね。
お店も混雑したら手伝ってくれるそうなので足が向けられませんね。
なのでわたしも『先生』って呼ぼうとしたら完全拒否されました。
困るそうです。可愛いのに、『ミライナ先生』。
ミライナさんには、帰り道に冒険者ギルドに寄ってもらうようお願いしました。
情報掲示板にチラシを貼って欲しいのです。
宣伝しないとこんな町外れにはヒトは来ませんし。
住むにはいいトコなんですけどね。
チラシはマスターが書きました。
お店の地図とポーションのイラスト、そして大きな字で、
「『マナポーション☆2』あります。1日限定10本」
のシンプルなチラシです。
シンプルすぎる気もしますけど、マスター曰く、
「まずデカい絵と字で目を引くことが大事」
らしいです。ホントですかね。
お店の名前は『ヒジカタ錬金堂』に決定。
正直モメました。
だってマスターってば『イズミ屋』とか『シロイズミ薬局』とか推すんです。
誰のお店ですかって話ですよ。
コワイお客さんに「店長を出せ」とか言われたらどうするんですか。
この店の店長はマスターです。マスターが対応してくださいよ。ホント。
わたしとシロはただの従業員。気楽なパートタイマーなのです。
キチンと働きますけどね。
工房。
マスターが作業台に張り付いてます。一心不乱にゴリゴリ作業中ですね。
わたしが素材屋さんから仕入れてきたのが薬草200枚に毒キノコ40個。
コレ全部『傷薬☆2』にするって言ってます。
やり過ぎです。
「徹夜でもする気ですか、マスター。そんなに必要ですか?」
コーヒーを置きます。
夕飯食べてからずっと調合です。ちょっとは休憩してください。
「ああ、ありがとな。いや、チラシ貼って速攻品切れじゃ恥ずかしいだろ」
美味そうに口に運びます。ただのインスタントですけど。
「お客サマが来たとしても、きっと『マナポーション☆2』目当てですよ?」
「それは間違いないな。
だけどさ、『☆2以上しか置かない店』ってカッコイイじゃないか。なんか」
高品質路線ですね。たしかに高級感ありますけど。
「取らぬ狸の皮算用、ですね」
「いいだろ。夢ぐらい見たって」
夢見がちなマスターって、眷族にとっては最悪じゃないですかね。
しかし『☆2以上しか置かない店』ですか。
じゃ、それお店のキャッチコピーで。
わたしの料理も☆2が出来たら考えましょうか。今はまだ無理ですが。
「わたしとしては明日の夢よりも、今夜の義務の方が気になるんですけど」
あ、それもあったか。みたいな顔をしてますね。ムカつきます。
「とにかく、カンオケ部屋で待ってますので。1時間後に」
「え、あそこでするの?」
だって、シロに見られたら恥ずかしいじゃないですか。
じゃ、先にお風呂いただきますね。
遅れちゃイヤですよ?




