075 『傷薬』作成
腹も膨れたトコロで生産の続きだ。
いよいよ『傷薬』の作成を開始する。
「まず私が作成します。よく見ていてください」
ミライナ先生の模範作成である。
メモを取らねば。
イズミも後学のためにと見学する。
『傷薬』の材料は『薬草』と『毒キノコ』。
この2つを5:1の割合で混ぜ合わせると『傷薬』になるという。
先生、よろしくお願いします。
まず材料をよく水洗いする。
薬草5枚と毒キノコ1本だ。キノコの軸は切っておく。
この2つを包丁でできるだけ細かく刻む。
次に混合用の皿、乳鉢に入れてゴリゴリと潰しながら混ぜ合わせる。
よく混ざったら最後にMPをジワッと注ぐ。
ペースト状になったら完成。
清潔な油紙に包んで5つに分ける。
『傷薬☆2』が5個完成した。
軟膏だ。塗り薬なんだな。
「見ての通りとても簡単です。
包み紙は用意したので使ってください」
「先生、品質を上げるコツは?」
「注いだ魔力が均等に染みこむように混ぜてください。
☆3以上は高品質の素材とより上位の道具が必要です」
『薬草』と『毒キノコ』は☆2がいくつかある。
上位の道具、欲しいぜ。
「このペースだとすぐに素材が不足しますね。
仕入れときますよ」
イズミが進言してくれた。
助かる。特に『薬草』をヨロシク。
「ふふふ。『商売』スキルの見せドコロです。値切りますよ?」
イズミが張り切って出かけていった。
仕入れの他にもイロイロ買い物したいらしい。
値切るのもいいけど、やり過ぎて恨まれるなよ?
お供のシロに期待だ。頼むぞ?
さて、こっちは『傷薬』作成だ。緊張するぜ。
先生の模範作成をマネするつもりで進める。
目指すは☆2だ。
『薬草』5枚と『毒キノコ』1本を丁寧に水洗い。
キノコから軸を外す。
そして両方とも包丁でみじん切りに。
みじん切りにした素材を乳鉢に入れ、セットの乳棒でゴリゴリすり潰す。
これが意外と難しい。
乳棒を垂直に立ててジックリ回すのがコツと言えばコツか。
しかしベストの力加減がどうにも掴めない。ムズい。
ジックリ回しながらジックリMPを注ぐ。
うーむ。先生はいとも簡単にやってたんだが。
遙かに時間が掛かってるな。
「見習い錬金術師の仕事はひたすら蒸留、ひたすら乳鉢ですから。
正直、年季が違います。
スキルLVが上がれば楽になりますよ」
ミライナ先生が珍しく自慢げだ。
錬金術師なら誰もが通る道らしい。
作業を続け、なんとかペースト状になったので包み紙に小分けする。
『傷薬☆1』
くッ。及ばなかったか。この屈辱、次の作成に晴らすぜ。
再度『傷薬』にチャレンジ。リベンジだ!
手順はわかった。
あとは作業の精度だと思うのだが。
丁寧に、慎重に。
『傷薬☆1』
再びの☆1。
初回よりはスムーズにできたハズだ。
慣れだけじゃ足りないんだな。スキルLVも低いし。
もうひと工夫いるか。
乳鉢に時間をかけすぎているのが敗因なのは間違いない。
先生と目に見えて差があるからな。
ここを短縮するには。
うーむむむむ…………。
うむ。その前段階、みじん切りの時点で手間をかけるのはどうだ?
さらに細かく刻んでから投入することで、乳鉢での作業を減らす案だ。
やってみた。
まず薬草。極細のせん切りにして、端から直角に細かく刻む。
次はキノコ。軸を外した傘をまず棒状に切る。
それぞれに細かく切れ目を入れる。それを直角に細かく刻む。
刻む。刻む。刻む。可能な限り刻む。
ザクザクザクザク。
ふー。かなり細かくなった。これ以上は俺の腕じゃ無理。
乳鉢に投入。乳棒をグルグル回す。
おお、スムーズ。かなり楽だ。
落ち着いて乳棒からMPを染みこませる。
ジックリ、丁寧に。どうだ?
『傷薬☆2』
よっしゃぁッ!!
勝ったぜ! 敵なんていないが。
今の俺のスキルLVじゃ、乳鉢でゴリゴリしながらだとMPが綺麗に浸透しないんだな。
しばらくはこの超みじん切りが必須だろう。
フードプロセッサーでもあれば楽できるんだろうが。
いや、あっても使えないか。
金物屋にあったが料理専用だって大書きされてたし。残念。
よし、継続だ。
☆2を当たり前に作れるようにならないとな。
手に感覚を覚えこませるのだ。




