073 MP補給戦
MPが心細くなってきた。
『傷薬』調合に移ってもいいのだが。
いや、作成できた『蒸留水』はまだ必要量に達していない。
ここは『蒸留水』を優先すべきだろう。MP補給だ。
マンドラゴラをはじめとした『マナポーション』素材の下処理に先生は集中している。
まだまだ時間が掛かりそうだ。
今なら抜けても問題なかろう。
俺はミライナ先生に断ってフィールドに出た。
暇そうにアクビしてたシロも引っ張ってきている。
ついでに運動させてやろう。
ちなみにイズミは店舗の細かい準備に大わらわ中だ。頑張れ。
「俺は『影縛り』『吸血』で敵1体に張りつく。
シロは他のヤツを頼めるか?」
「わうッ」
まかせろって感じのいいお返事。頼もしいぞ。
まぁ、シロもけっこうLVが上がっている。
この辺の植物シリーズ相手なら何体いても後れは取るまい。
さて、急がないとな。
今日のメインは生産だ。遊んでる暇は無いのだ。
さっさとMP満タンにせねば。
お、向こうにエネミーがいるな。
草1体にキノコ2体。
「いくぞ、シロ。
俺は奥のガジガジ草。お前は前に2体いるキノコだ」
「ワンッ」
俺の指示にひと声吠えてシロはダダッと駆けだした。速い。
俺はポツリと取り残されている。
慌てて後を追う。えっちらおっちらと。
おーい、待ってくれぇ。
俺、いまステ1なんだって。
MP補給はサクサク進んだ。
『吸血』のスキルLVが上がったお陰だ。
一度の『吸血』で回復できるHPとMP量が格段に増えている。
非常に助かる。
シロも大幅に攻撃力が上がっていた。
『巨狼の牙』の威力だな。
かなり強力な装備なようでキノコなら一撃で仕留めてしまう。
持ち前の素早さも相まって、あっという間にキノコ2体を沈めてしまった。
うーん。強い。
俺の方は『影縛り』の効いたガジガジ草に絶賛『吸血』中である。
シロが早くも手すきになってしまっている。
ヒマさせるのもナンだ。
そうだ『雄叫び』スキルも試してみるか。
「ワオーンッ!!」
『影縛り』を破ろうともがいていたガジガジ草がビクンと硬直した。
昨夜、俺が『ボス狼』に食らわされたのと同じ技だ。
迫力はさすがに及ばないが。
割と広範囲に足止めの効果があるようだ。
ただ、脅かして足止めを誘う技だからレジストもされ易いか?
大勢の敵に先手を打てる状況なら、かなり期待はできそうだ。
例えば足が止まったところでイズミの『ファイア・ボール』を放り込んでやるとか。うまく嵌まれば一撃必殺も狙える。
素早いシロならその機会も多いはずだ。
これは使えそうだ。
「シロ。『雄叫び』はどんどん使って鍛えてくれ。
いいスキルだ」
「ワンッ」
いいお返事ですね。素直な子で助かる。
おっと。『影縛り』がそろそろ外れる。
いったん離れてかけ直しだ。




