071 朝食
9/6更新2つめです。
「おはようございます。マスター」
ああ。おはよう、イズミ。
朝のリビングには、いつもの素っ気ないジト目少女がいた。
昨夜の狂態はなかったことになってるようだ。
切り替え凄い。
俺もできるだけ合わせないとな。
紐ビキニなんてなかった。うん。
「わうッ」
おう、おはようシロ。今日もカワイイな。
巨狼の牙の調子はどうだ?
どっかでお試ししたいよな。
テーブルの上には朝食が用意してくれてある。おお。
目玉焼きに食パンとコーヒー。
いずれも作りたて。美味そうな湯気を上げている。
「美味そうだな。ありがとう、イズミ。凄く嬉しい」
「ご冗談を。これくらい、ご自分でできるでしょう?」
「作ってくれるのが嬉しいんだよ。ありがとな」
冷めますよ、早く食べてください。と目をそらすイズミ。
ははは。可愛いじゃないか。
足下には木皿に山盛りのドッグフード。
それをシロが美味そうにがっついている。
至福の顔だがそれ、狼としていいのか?
イズミ作のモーニングセットはきちんと美味しかった。
台所がけっこう凄いことになっている。
奮闘してくれたのだろう。
「美味かった。これからも頼むな」
「はいはい。お安い御用ですよ」
食パンをモグモグしながら面倒くさそうに手を振る。
しかし、隠しても無駄だ。頬を膨らませた顔が赤いぞ。
褒められて照れてるな。このツンデレ魔女め。
ご馳走様です。
片付けだけでも手伝おうとしたのだが、ピシャリと断られてしまった。
台所は彼女のナワバリなんだそうな。
カチャカチャと音を立ててイズミが洗い物をしている。
洗い物だけでも『料理』スキルの熟練度は貯まるらしい。リアルだ。
たしかに料理って作るだけじゃないよな。
買い物から食後のあと片付けまで含めて『料理』だろう。
得るものも多いし。
この調子ならイズミの『料理』スキルはどんどん上がっていくな。先が楽しみだ。
オムライスとか作ってくれないかな。好物なのだ。
「もうじきミライナさんが来ますよ。
準備とかはいいんですか?」
背中越しに言葉をかけてきた。
もうそんな時間か。
今日から店の商品作りと錬金術の修行だ。
商品作りは見習い錬金術師のミライナちゃんが担当。
俺はその手伝いをしながら修行をつけてもらう予定である。
まず服装だな。
錬金術師スタイルをイメージして『変身』と念じる。
黒服マントが一瞬光って白衣マフラーに化けた。
くくく、成功だ。
「わうッ?」
見てたシロが驚いている。
振り向いたイズミも怪訝な顔になった。
「あら。言うこと聞くようになったんですか。その服」
「ああ。白衣もカジュアルも自由自在だ。脱げるようにもなったしな」
ポケットからメガネを出してスチャッとかける。
これで完璧だ。




