表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
68/651

068 『カレー?☆0』

挿絵(By みてみん)


 なんですか。マズイならマズイと正直に言えばいいんですよ。


 失敗作カレーを煮込んでます。マスターに言われた通り。

 どうせメシマズの女ですよ、わたしは。ふん。


『誰でも美味しく作れる国民食。手料理最初の第一歩』

って書いてあったカレーをマズく作れちゃう女ですよ。


 出来たのを『鑑定』してみたら『カレー?☆0』て出ました。


 ナンですか『?』って。『☆0』って。

 ケンカ売ってるんですか? 買いますよ?


 ヒトが初めて作ったお料理をそんなナゾ物質みたいに。

 口にしたらナゾ物質でしたけどね。

 マズかったですよ。ええ。


 マスターもね、食べなくていいんですよ。捨てますから。

 一皿完食してからね、足りないモノ買ってくるからって、行っちゃいましたけど。


 こんなナゾ物質どうにもなりませんよ。

 無駄ですよ、無駄。


 それにアタマを撫で撫でとかね。

 子供じゃないんですから。

 恥ずかしいじゃないですか。やめてください。


 そりゃ、ちょっとは元気でましたけど。

 ちょっとだけですよ?


 だいたいマスターがズルいんですよ。

 スキル持ってないクセに料理できるとか。

 チンゲン菜炒めちゃんと美味しかったですよ?


 張り切ってスキル取ったわたしの立つ瀬が無いというか。

 あ、帰ってきました。

 ナニ買ってきたんでしょうか。

 どうせ無駄ですけど。


 甘口ルゥ? 福神漬け? らっきょ? ナンですかそれ?


挿絵(By みてみん)


 生まれ変わりました。


 ナゾ物質が『カレーライス☆1』に。


 美味しいです。超美味しいです。

 ナンでしょうこの美味しさ。


 辛くて甘くてスパイシーで。

 福神漬けがピリッとしてて、らっきょが不思議な甘さで。

 それらが全て調和してて。

 まさにカレーという理想郷。


 ああ、涙が出そう。

 コレ。目指していたのはコレなのです。


 マスターが買ってきた『甘口ルゥ』はスパイスの塊でした。

 リアルでプロが調合したそれを、少しずつ味見しながら鍋に混ぜるようマスターは指示しました。


 わたしは半信半疑でした。

 だって『☆0』ですよ?


 劇的でした。


 味が尖ってシャバシャバだったお鍋の『カレー?☆0』。

 それが少しずつまろやかにトロミを帯びていきました。

 固かった野菜も、よく煮込んだせいかホクホクと崩れるように柔らかくなっています。

 分けていた豚肉も戻してルゥに馴染ませます。

 慎重に味見しました。


 そして誕生したのです。『カレーライス☆1』が!

 感動です。


「カレーは固形ルゥを使うのが鉄板なんだよ。

 本格スパイスカレーはもっと慣れてから。

 あと、味見は小まめにな」


 味見とは『料理の進行具合を舌で確かめる行為』だそうです。

 そんなのゼンゼンしてませんでした。

 レシピの通り切ったり煮たりしてただけで。

 奥が深いですね料理道。


「お前はまだ、素材の味とかゼンゼン知らないからなぁ。

 ひとつひとつ舌で覚えていってほしいんだよ。

『鑑定』と一緒だよ」


 うう。認めざるを得ませんね。

 分かりました。精進しますよ。


 ………ありがとう。マスター。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ