065 『料理』スキルとドロップ品
9/1更新3つ目です。
戦術に課題を残したボス戦であった。
まぁ、考えとこう。
ただ、待ちスティックやガーディアンに比べるとそこまで厳しい相手ではなかった。
初めてのパーティボス戦には相応しかったかも?
「LVアップしました! 『料理』スキル取得します!」
イズミの鼻息が荒い。
俺が返事する前に取得は済んでた。いいけどさ。
「ふふふ、これでわたしも料理名人……」
そこまで都合のイイもんか?
期待が一人歩きしてるな。心配だ。
俺もLVアップしてイロイロ上がった。
スキルポイントはとりあえず保留だ。
『錬金術』スキル取得に何ポイント必要か分からんしな。
『査定』スキルみたいに、必須じゃ無くてもお役立ちなスキルもあるかも知れない。
そう思うと無駄遣いできん。
そしてドロップ品なのだが。
その中にあったのが『巨狼の牙☆3』。
これはボス狼のレアドロップなのかな?
最初から☆の多い奴はその傾向がある。多分そうだろ。
イズミに鑑定してほしいのだが、今彼女はなにやらブツブツ唱えていてちょっとコワイ。後で頼むか。
「わう?」
お、興味あるのか?
珍しいな。シロがアイテムを見たがっている。
お前もオオカミだもんな。見るか? 飲み込むなよ?
しゃがんで見せてやるとフンフンと匂いを嗅いでいる。
すると不意に『巨狼の牙☆3』が光って消えた。
え? うそ、食っちゃった?
光った巨狼の牙が消え失せて、代わりにシロの口内が光っている。
慌ててシロの口をこじ開けた。
こんな尖ったモノ飲み込んだら大ケガして動物病院行きだ。
「わう~?」
口の中にアイテムは無かった。
光っていたのはシロ自前の牙だ。
いや、ちょっと違ってるか?
輝いてるのは2本の犬歯。それだけ他の歯と質感が違う。
まるでさっきの巨狼の牙に生え替わったかのような?
ある可能性に思い当たってステータスウィンドウを開く。
確認するのはシロの装備だ。
思った通り、『なし』の文字が『巨狼の牙』に変わっている。
これ、シロの、いや犬系従魔の専用装備か。
なるほど。
そうするとボス狼の出現自体がシロのイベントだったんだな。
オオカミ一定数撃破が出現フラグなら、この前、ソロで暴れたときにそうなっているハズだ。
『支配する杖』と戦ったあの晩だ。
しかしボス狼は現れなかった。
それはシロがいなかったからだ。
きっと犬系の従魔を連れたプレイヤー、テイマーやサモナー向けの小イベントなんだろう。
犬系以外にもそれぞれ同様のイベントがあるに違いない。
楽しそうだな。羨ましい。
しかし『巨狼の牙』だけなのかね。
『巨狼シリーズ』として他にも防具系とかあるんじゃないか?
ボスのドロップ品として。
ふむ。あるなら揃えたいな、『巨狼シリーズ』。
ゲーマー心が疼くぜ。
『巨狼シリーズ』有無の検証をやってみたいのだが。
「さっさと帰りますよ! はい、ハウスハウス!!」
イズミさんがバンバン両手を打ち合わせて帰宅を促している。
一刻も早く料理スキルを試したいようだ。
この情熱に水を差す勇気を俺は持たない。
スマンなシロ。続きはまたな。
「わう」
うん。空気の読める賢いワンコだ。あとで骨ガムやるな。
夜の草原を後にし、俺たちはイズミに引っ張られるように帰宅した。
といってもすぐ近くだけどね。
こういうときホームが町外れというのは楽でいいな。
「じゃあ、わたしは台所にいますので。
後はヨロシク!」
店のドアを開けるなり、高らかに宣言した。
すぐさまリビングに飛び込むイズミさん。
はい、分かりました。イズミさん頑張ってください。
マスターってなんなんだろうね。
シロは台所でイズミを見守るつもりなようだ。
よく出来たワンコだよ。
商店街で買っといた骨ガムを渡す。
それを咥えてシロはイズミを追いかけていった。
ウチに来てくれて良かった。頼むぞ。
イズミのことも、まぁ、イイのだ。
『夢中になれるモノがあるというのは、とても幸せなコトだ』
と爺サマもよく言ってた。邪魔は野暮だ。
それにイズミの料理には俺も期待しているのだ。
いつでもドコでも美味いモノが食える。
そりゃ最高だろ。頑張ってくれよ?




