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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
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625 継母より新婚さん

.挿絵(By みてみん)


 うちの学校はスマホ持ち込み可である。


 ただし指定の機能制限アプリをインストールすることが必須。


 このアプリにより授業中は自動で機能が制限されている。

 今みたいな休み時間や放課後になると一部解放。

 校外で全解放。


 生徒からは不評だが学校側にすれば絶対必要なアプリである。


 スマホが日常生活に不可欠なライフラインになってもう長い。

 同時に蠱惑的なオモチャである側面も相変わらずだ。

 学習には邪魔。


 休み時間に入ると同時に制限されてた通知がスマホに流れ込む。

 俺は通知の設定をかなり絞ってるので基本スルーでOKなのだが。


 ……困った。

 これは無視するとマズイぞ?


 家族のグループ通知で佳奈美さんからメッセージが入っている。

 今晩俺の部屋に来たいらしい。

 フフフ、モテる男は困るぜ。


 ……冗談である。

 残念ながら色っぽい話じゃない。


 佳奈美さんは去年、長く男やもめだったオヤジと籍を入れてくれた非常に奇特な女性である。

 つまり、俺の義理の母になる。


 オヤジは仕事中毒で息子はゲーム中毒。

 物心つく前から別居継続中。


 互いに好きな方面に集中していて、いい意味で疎遠な親子なのだが。


 なぜか佳奈美さんはこれを問題だと認識しているらしい。


 保護者代わりだった爺サマが亡くなった後に、そのまま俺が一人で生活し続けてるのにも綺麗な眉をひそめている。

 ことあれば同居を勧めてくる。

 健全で善意溢れる義母さんなのだ。

  

 これまで面倒で適当にはぐらかしてきたのだが。

 今日、来たいというのもきっと同居の話だろう。困ったなぁ。


 特に今現在、俺の生活リズムはかなりの変則である。

 学校と生活に必要な最低限以外、全ての時間をD&Cに捧げている。


 これが家族と同居した状態で維持できるとはとても思えない。


 それに俺がそうする理由も説明が難しい。

 ゲームとリアルの時間差を利用して事業化、資金と技術を育てて最終的にNPCをリアルの人間にする。


 うん。誰が聞いても夢物語だな。

 下手すると正気を疑われる。


 まだ時間差と記憶の部分を検証してる段階だ。仕方ない。


 しかし、家族なんだよなぁ。


 ある程度納得させとかないと、いつまでも話が続いてしまうぞ?


 正直、母親が亡くなってからこっち、俺は爺サマの元で養育されてきた。

 気分としてここが実家なのだ。

 むしろ生家の方が落ち着かない。


 だいたい、佳奈美さんだって現状維持の方がいいに決まってるよな?

 オヤジは2度目だが彼女は初婚。新婚ホヤホヤなのだ。


 そこにこんな図体だけデカい連れ子がいたら安心してイチャつけまい。

 佳奈美さんは継母より新婚さんとしてハッチャけるべきである!


 いずれは弟妹とか見せてくれると嬉しい。

 オヤジはオッサンなのだ。急げ。 


 うん!

 この機会に同居の件は無しとはっきり伝えておこう!

 きちんと話す機会もなかったしな。

 佳奈美さんも働いてるし。

 

 しかし、ガッツリ話し合うとなったら時間が必要だな。

 俺にとってこれは極めて厳しい。

 リアルで1時間話をするだけで、D&Cでは6時間流れ去ってるのだ。

 うーむ。


 ……よし! 向こうで会おう!


 逆にD&C世界でならダベり放題だ!

 時間を気にせず話ができる。


 ええと、レンタルームを予約してそこからログインしてもらえばいいか。

 オヤジは来ないそうだから1人分でいいな。

 時刻は今日18時からフリータイムで。D&Cじゃ正午になる。

 レンタルームで体験版ログインの案内サービスがあるからそれ込みで予約。


 スタート地点がスタットラインの『始まりの広場』。

 そこで待っててくれたら先にログイン済みの俺が迎えにいく。

 それから《錬金堂》に場所を移してじっくり話し合えばいい。

 万が一の用心に《錬金堂》への道順も添付した。行き違いとか困るし。


 以上をメッセージで送った。


 すぐに了解の返事があった。よし完璧!


 イズミの方には連絡できないのがもどかしいが、こればっかしは仕方ない。

 帰宅後ログインしてからでじゅうぶん間に合うしな。


挿絵(By みてみん)


「土方佳奈美と申します。

 こちらでトシくんが働いていると聞いたのですが」


「はぁ。トシくん、ですか?」


 いきなり訪問の美人がマスターと同姓を名乗りましたけど。

 どなた様?

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