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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
629/629

623 土人形の核

誤字報告ありがとうございます。

とても助かっています。

「計算領域が高い」の表記に関して2種の報告がありましたが

「計算能力が高い」と修正させて頂きました。

今後ともよろしくお願いいたします。

 冒険者ギルドを後にしたわたし達は錬金術組合へやってきました。


 せっかく町の中心部に来たのです。

 わりと久しぶりに。


 用事のあるところは、このさい全部済ましときましょう。

 ミライナさんにも会いたいですしね♪


「みんな! おかえりなさい」


「ただいまですよ? ミライナさん」

「わう♪」

「♪♪♪~」


 組合に顔を出すとさっそく声をかけてくれました。

 皆さんもいつもどおり研究に忙しそうです。

 楽しそうでなにより。 


「じつは黒土山でこんな物を拾ったのですけど」


 手土産のお茶菓子を渡し挨拶もそこそこに収納ポーチを開きます。


挿絵(By みてみん)


 『土人形の核☆?』


 とりだしたのは大規模レイド戦でのドロップ品です。 


「あ、これって?

 黒土山のゴーレムから?」


「はい。

 全体でもこれきりだったようでレア素材ぽいんですよね」


「ほー。

 イイモノを拾ったわねぇ。さすが《錬金堂》だ」


 職員さんが覗き込んで感心しています。ご存じなようです。

 目が合うと悪戯っぽく笑います。はて?


「ミライナ。これがナニか分かる?」


「はっ、はいッ!

 ゴーレムの核回路です! それも貴重な起動前の」


「ふむ。じゃあ、起動条件は?」


挿絵(By みてみん)


 職員さんとミライナさんの間で一問一答が始まりましたよ?

 職員さんが投げかけるゴーレムに関する問いに、ミライナさんが背筋を伸ばして答えていきます。

 はてはて?


「うん。よく勉強してるようね。

 ところでイズミさん。

 《錬金堂》ではこれの使い途はもう決まってるのですか?」


「いえ。それを相談したくて伺いました。

 皆さんは、よくご存じなんですか?」


「錬金術師ならおなじみですよ。

 説明しましょう。ミライナ。お願い」


「はい!」


 背筋まっすぐミライナさんの説明を静聴しました。とても丁寧。


 つられてシロとカゲリの背筋もまっすぐ。

 真面目に聴いていい子ですよ?


 説明によると『土人形の核☆?』はゴーレムの核部分で土魔石を動力源にゴーレムを組み上げることが可能。

 ただしボディ部分の構築にはサイズ相応の材料が必要。結構な量です。


「じゃあ、例えばこの『魔石[土]☆2』と『腐葉土☆2』1袋を使うと?」


 ポーチから取り出して並べてみます。

 腐葉土の袋が大きい!


「だいたい大人より大きいぐらいの土ゴーレムが作成できるはずです」


 なるほど。ほぼ黒土山のゴーレムですね。


「力が強く疲れ知らずのゴーレムは中央の学都で量産され労働力として重用されています。

 単純作業専門らしいですけど」


 へー。量産できるんですね。土木工事とか活躍してそう。 


 ミライナさんの説明をうんうんと聴いていた職員さんなのですが。


「量産型のゴーレム核は発掘した遺物のコピー品なんだけど。

 魔物の落としたこれは違う可能性があります。

 ちょっと調べても?」


「お願いします。ぜひ」


 さっそく『土人形の核』に両手をかざし集中しています。魔力を感じますね。

 切れ長の目を半分閉じた表情がちょっとセクシー。

 眼鏡が逆に蠱惑的とか。


挿絵(By みてみん)


「手から手へ微弱な魔力を通して反響させ、構造を分析してるんです」


「たしかミライナさんもやってましたよね?」


「分析の精度と素材の理解が段違いです。

 センパイは凄いんですよ」


 そう言いながらカケラも見逃すまいと観察してます。

 見て盗め、ですかね。


 マスターもたまに属性合成の際に似た仕草をしてますけど。

 あれは属性の許容量をチェックしてるだけ。ずっと大雑把ですね。


「計算能力が高く、記憶領域も広い。

 一時記憶領域も数倍あって多少複雑な命令もこなすスペックがある。

 なにより拡張性が素晴らしいわね。これは掘り出し物だわ」


「凄いキャパシティですね!?

 きっと古代の一点物ですよ!」


 プロのお二人はえらく興奮してますが。


「はぁ」

「わう?」

「???」


 わたし達には言葉の意味がよくわかりません。

 シロカゲリもキョトンとしてますよ?


 マスターなら一緒に興奮してる気もしますけどね。

 好きそうな雰囲気ですよ?


「つまり、この核を使って普通のゴーレム1体作り上げるのは勿体ないと」


 なんとか分かる言葉を使って説明していただきました。すみませんね。


「そう! ぜひ組合に預けてほしい! 

 この手の分野に強い人員を集めて改めて解析するわ!

 そしてベストの構築案を用意する。

 作成を始めるのはそれからがいい」


「高性能ゴーレムの作成は錬金術師の力試しのような側面もあるんです。

 業界内の評価にも繋がります。

 やらせてもらえませんか」


 下げようとする頭を慌てて持ちあげます。

 ちょっとちょっと?


「そんな、こちらこそお願いしますよ?

 最初から、頼るのは錬金術組合と決めてますから。

 エルフの大師匠も太鼓判を押されてましたよ?」


 帰り際に思い出したマスターが核を見せたら『組合に任せるのがいい』とおっしゃってましたからね。問題無いのです。


 当のマスターもいちおう錬金術師ですが研究より実用の人。

 明らかに向いてません。


「ただ、不在のマスターもこの核には関心あると思うんですよ。

 戻ったら意見を聞いていただけると助かります」


 こういうの、絶対好きなのです。

 全部決めちゃったら恨まれますよ?


「もちろん。スポンサーの意向は最優先よ!

 大師匠も承知の案件なら身が引き締まるわね。

 燃えるわー!!」


 『土人形の核』と一緒に土魔石と腐葉土をいくつか渡しておきました。

 必要な素材があればなるべく揃えますよ? スポンサーですからね?


挿絵(By みてみん)

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