062 依頼達成と従魔登録
8/31更新3つめです。
イズミは他にもパジャマやインナーをいくつか選んでたようだ。
俺も幾つか選んでおいた。
後でマントに食わせてみるのだ。検証だな。
この化けマントがどんな仕様で動いているのか確かめないとな。
さすがにヒトは食わんと思うが。……食わんよな?
ちなみに俺は錬金術師スタイルだ。
結局マント白衣に化けたまんまだし。
俺たちは支払いを済ませ店を出た。
後は食材買って冒険者ギルドだな。
朝市は終わっていたが、まだ開いている出店が何軒かある。
「食材は任せてくださいな」
イズミがウキウキで野菜を手に取っている。
まだスキル取ってないのに大丈夫か?
まぁ、任せるけど。
しかし聞いてた通り、タイアップの調味料やドリンクが多い。
食事に関してだけだよな、こんなの。
どうも味だけ再現してて特別な効果とかはないっぽい。
そんなの付けたらメーカー同士でケンカになるだろうし。
お。家で使ってる白ダシがある。ダシ醤油もあるな。
これだけ買っとくか。お手軽で美味いんだよなコレ。
さて、依頼達成の報告に冒険者ギルドへやってきたのだが。
「ヒジカタさん? また転職されたのですか?」
たわわでメガネな受付嬢、パルミットさんに怪訝な目で見られた。
え? あ、ああ。
そういや俺、ここに顔出すたびに見た目が変わってるよな。
剣士→黒服マント→白衣メガネの3段変身。
しかもごく短期間にだ。
ひょっとして、すぐに仕事辞めちゃうヒトみたいに思われてる?
いかん! フォローだイズミ!
「まだ無職ですよ?
錬金術師志望ですけどカッコだけで」
言い方!
もうちょいマシな言い方あるんじゃないですか?
イズミさん?
「ちなみにわたしは『商人』に就きました。
お店を開きますのでヨロシクお願いしますね。
マスターを養わなくてはいけないので」
その言い方さらに悪いから!?
ああ、嬢の視線が冷たくなってるよ。
「ヒジカタさん?
そういう歪なパーティの在り方はギルドとしてもどうかと。
イズミさんが可哀想です」
いま、一番可哀想なの俺ですよ!?
何故こんな事態に? 俺がナニをしたというのか?
イズミになんか嫌なこととか……。
やってるな吸血。
「ありがとうございます、パルミットさん。
マスターにはわたしからよく言っておきますので。
今日は依頼のご報告を。さ、マスター」
イズミがそう促す。悪戯っぽい目で。
こんにゃろめ。
この雰囲気のなかで達成メダル出しても、バシッとたたき返されるんじゃなかろうか。
そんな予感に脅えながらメダルを差し出す。
すると。
「え? 達成されたのですか? 子犬は?」
たわわメガネ受付嬢、驚きの顔。
「ココにいますよ? イロイロあってウチのパーティに加入しました」
ワンッ、と元気なシロの声に毒気を抜かれたようだ。
「それは、なんと、まぁ、良かった……」
パルミットさんは受け取った達成メダルを確認している。
この様子じゃ『☆5マンドラゴラ』の件は冒険者ギルドには伝わってないな。
職員さんも『くれぐれもご内密に』と念を押してたからな。
ヤバいブツだという認識は共有している。
だいたい、この最初の町でガーディアン討伐依頼など出そうものなら死人の山だ。
俺だって弱点の葉以外はろくにダメージが通らなかった。
『空気投げ』で投げ落としてもHPバーは僅かしか減らなかったのだ。
最大HPがかなり高いのだろう。
それに正直言うと、もうしばらく俺がアイツを独占しときたい気分もあるのだ。
☆5の件もあるが、アイツとの対戦は凄く楽しい。
マンドラゴラだって無限にあるワケじゃない。
減ってしまえばアイツと戦う機会も減るだろう。
それはイヤなのだ。
「はい。達成おめでとうございます。お受け取りください」
依頼の報酬は銀貨50枚。よし、家電代は取り戻したぜ。
「それでコイツなんですけど、やっぱり登録とか必要ですか?」
わう?
自分の話をされてるのが分かるのか、シロが首をかしげている。
「この子、これで白狼なんですよ。血統書はないですけど」
「それは珍しい。なら従魔登録ですね。
『白狼』はいちおう魔物のククリなので。
こちらの書類にワンちゃんのお名前とサインをお願いします」
はいはい。とりあえず俺がサインする。
イズミの方が懐いてるけどね。
「はい。これでこの子はヒジカタさんの従魔として登録が済みました。
このピアスを付けさせてください。従魔の証明になります。
これで他の冒険者に討伐されることはありませんが、もし問題を起こせばヒジカタさんの責任になります。
ご注意くださいね」
渡された青い石のピアスをイズミに渡す。
イズミはそれをシロの左耳にサクッと刺して取り付けた。
当のシロは気付いてないな。
ブンブン尻尾を振っている。……鈍いのか?
しかし魔物なら従魔登録か。
吸血鬼もそれでいけるのかね。
「それは……。
ネクロマンサーの管轄になりますから従死霊登録かと。
なお登録無しのアンデッドは即時浄化されますので。
吸血鬼を従魔にされる予定でも?」
「いえいえ、滅相も無い。聞いてみただけです」
ひえー、即時浄化か。身バレは絶対避けないとな。
ついでに納品クエストも済ませてしまうことにする。
『森蜘蛛の糸』、『地雷草のタネ』、『古木の枝』。
それぞれ叫びの森エネミーのドロップ品だ。
全部で銀貨70枚程になった。
ソロじゃなくなって一気に懐具合が改善したな。
まぁ、俺にはあんまし使い途も無いのだが。
装備は固定で武器はステゴロ。なんてエコ。
「イズミ、装備とか欲しいものあるか?」
「いえ? 別にいいですよ。杖はレアドロップ品ですし」
「ローブとかどうだ? 魔法使いっぽくてカッコいいぞ」
「ヤですよ。この服、気に入ってるんですから」
うちの眷族ちゃんもあんましイイ装備には興味ないようだ。
店の方に使うか。
「パルミットさん。
俺たちの店のチラシとか置いてもいいですか?」
「それならそこの情報掲示板に貼ってください。
規定の用紙で1枚だけですけど無料ですよ」
ほほう。もともとそんなサービスがあるのか。助かる。
なんせ町外れだからな。宣伝しなきゃヒトも通らない。
いや、待てよ?
マナポーションて作るのに時間どれくらい掛かるんだ?
その辺ハッキリしてからの方がいいな。
客が来ても棚が空じゃ恥ずかしいぞ。
用紙だけ貰ってまた貼りにくるか。内容も白紙だし。
「ところで『マナポーション』って、いま幾らぐらいしてますか?」
「ギルドじゃずっと品切れですね。あれば1本銀貨50枚くらいでしょうか」
うわ、マンドラゴラより高いぞ。輸入してるからか?




