061 衣料品店
8/31更新2つめです。
家電量販店としか思えない金物屋を出ると、同じ並びに衣料品店があった。
店構えこそ落ち着いたファンタジー風だが……。
入ってみるか。せっかくだし。
中は完全に現代風だった。予想通りだよ。
品揃えがさらにカオスで困った。
西洋ファンタジー風もあるし現代日本風もある。
コスプレとしか思えないのもある。
版権キャラとかやめてほしい。タイアップ?
これらは装備ではなく完全に外見だけの『服』だ。
防御力はゼロで耐久力とかの数値も無い。
アバターの見た目を楽しむためだけのオプションだな。
アウターなんかは装備の上から羽織ることもできるらしい。
カーミラさんもたしかそんなコト言ってたな。
固定装備うんぬんで。
はッ。ならばこの、ちょっと恥ずかしい黒服装備と蝶ネクタイも隠せるということか?
これは試さねばなるまい。
イズミも興味津々で商品を手に取っている。
着替えとか要るよな。
「イズミ、気に入ったのがあれば選んどいてくれ。
俺も選びたい」
「わかりました。いちおう、後で確認してくださいね」
好きに選んでいいのに。キッチリした子だよ。
装備新調なら大ごとだが、見かけだけの『服』ならかなり安く済むようだ。遠慮はいらないぞ?
さて、俺の方のチョイスなのだが。
お題はズバリ『錬金術師』。
明日から修行をつけてもらう予定なのだ。それらしいカッコしないとな。
結果がコレである。フハハハハハハッ。
白衣とメガネによって醸し出されるこの研究者感。いかにも理系だ。
さらに濃紺のマフラーで蝶ネクタイを隠してみた。
コレでかなり普通になったはず。
ふふふ。鏡で確認できないのが残念だな。
どうだ、シロ? カッコ良かろう?
「わうーん?」
よく分かんないみたいだな。イズミに見て貰うか。
おーい、イズミー。
「ナンですかそれ。自称狂気のマッドサイエンティスト?」
「いや、錬金術師をイメージしてだな」
「別のベクトルで怪しいんですけど。内臓とか取られそう?」
試着室から首だけ出して言いたい放題。
うちの眷族ちゃん厳しいです。
錬金術師スタイルは不評のようだ。
しかし俺はコレで行かねばならぬ。
何故なら『吸血鬼のマント』がこの白衣を同化吸収しちゃったからである。
この白衣、装備画面で見ると『吸血鬼のマント(白衣)』なのだ。
まだカネ払ってないのに。
なんてコトするんだ。この化けマント。
そういえば、転生したときもマントだけは外見が変わっていなかった。
アレは前の『旅人のマント』が食われたというコトか。
怖いな、俺の専用装備。
「そんなコトより、コッチも見てくださいな」
また流された。
うちの眷族ちゃんはマスター様のコト軽んじすぎて……。
「……………メチャクチャ可愛いな」
「な、ナニ言ってるんですか、真顔で」
そっぽ向いてしまった。
いやホントに可愛い。スゲー似合ってる。ビックリ。
メイド服もいいけど、カジュアルなのもコレまたイイ。
脚長いからデニムも映える。
髪と同色のシャツもいい感じだ。
照れて赤みが差した頬がまたプニプニで………。
「もぉ、いい加減にしてくださいッ!?
着替えますから!!」
ありゃ、なんかキレちゃったよ。ヘンなコト言っちまったか?
こういうの苦手なんだよな。
女の子褒めるのって、ホント難しい。
「おーい。それゼンブ買っとけよー。
今度また着て見せてくれよー?」
「わかりましたから、もう喋らないで!?」
試着室の中から怒鳴られた。
うむ。その日が楽しみだ。




