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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
57/651

057 白狼

やっと役者が揃いました。

 さて、ひと通り確認した我らが新居であるが。


「いいな。とてもイイ。色んなコトができそうだ」

「はい。これでマスターのログアウト中も無駄になりませんし」


 そうなんだよな。

 俺がいないときもイズミが自由に動ける。

 トータルで見ればこれはとても大きい。

 ある意味、プレイ時間が倍以上に増えたとも言える。

 ふふふ、楽しみだ。


 今すぐやるべきは、まず大掃除だな。

 少女が見てくれていたとはいえ、月イチの話だ。さすがにホコリが溜まっている。

 その後は足りない日用品や食料品を揃えるコトだな。

 イズミも料理する気マンマンだし。


 ああ、カーミラさん達に引っ越しの挨拶とかしときたいな。

 そういや冒険者ギルドに依頼達成の報告もしてないぞ。忘れてた。

 まぁ、職員さんから達成メダルは預かっている。いつでもいいか。


 用事が山盛りだな。

 まずは掃除にかかろう。

 くくく、ピッカピカにしてやるぞ? 我らがホームちゃん。


「手伝わせてください。きっと私が一番慣れてますし」


 見習い少女が手を上げてくれた。

 ありがたい。だけど、ちょっと甘えすぎかな?


「……その代わり、お願いがあるんです」


 真剣な目で俺たちを見る。

 そして子犬に触れた。


「もし良ければ、この子をこのまま引き取って頂けませんか?」


 おお?

 そりゃまた、なんで? 


 尋ねようとした俺はドンッと突き飛ばされた。いだだだ。


「はい! よろこんでぇ!!」


 イズミが前のめりでOK出していた。

 いや、いいけどさ。


挿絵(By みてみん)


「どんなに可愛がってもらっても、この子は組合では身代わり犬なんです。

 いつかは消費されてしまいます」


 今回はイズミの機転で生き延びたが、次もそうなるとは限らない。

 それならば、ということか。賢明だな。


 俺は不定期のプレイヤーだが、イズミは常駐のNPCだ。

 しかも運良く拠点を得て店を構えるとも言っている。

 子犬の可愛がりようについては見れば分かるな。メロメロだ。

 たしかに里子の先としてはベストの条件かもしれない。


 うーむ。

 しかし、俺たちだけで決めるのもナンだろう。


「ふむ。で、どうだ。ご本人の意向は?

 うちのパーティに入って頂けますかな?」


「ワンッ!」


 いいお返事です。本人もやる気のようだ。


「もし駄目ならマスター自由契約にして新パーティ結成しますけど?」


 それは勘弁願いたい。

 いまソロに戻されたら寂しくて泣いてしまう。


「新メンバー加入は大歓迎だ。

 ようこそ我らがパーティへ」

「ワオーンッ!!」


 誇らしげに雄叫びを上げる子犬。

 なかなか頼もしいじゃないか。


「名前を付けてあげてください。まだ無いので」


 少女の言葉を受け、イズミが俺を見た。

 ああ、任せろ。お前の名前は。


「シロだ。

 お前にパーティの遊撃と店の番犬を任せる。

 頼むぞ、シロ」


挿絵(By みてみん)


「シロ……。

 よかったね、いいお名前つけてもらえて。

 頑張るんだよ」

「ワンッ」


 無邪気な子犬をヒシと抱きしめる少女。美しいね。


「マスター……。名前、ちょっと庶民的すぎやしませんか?」


 小声で囁くイズミ。甘いな。

 こういうのは捻るとかえって痛くなる。

 定番こそが王道にして正解なのだよ。経験則だ。忘れたい。


 こっそりステータスを確認する。

 うん、ちゃんとパーティメンバーになってるな。


 ………ん?

 職業『番犬』はいいのだが、種族『白狼』てなんだ。犬じゃないの?

 あと『モフモフ』スキル? なんだこりゃ。


「オオカミだったんですねぇ。可愛いからいいですけど」


 うちでの扱いは完全に愛玩犬なんだが。

 いずれデカくなるのか?


「モフモフは……、そういえば撫でたりブラッシングしてると癒やされるような気がしますね」


 それスキルか?

 まぁ、そのうちハッキリするだろ。多分。


挿絵(By みてみん)

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