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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
55/651

055 店舗と商人

8/25更新3つめです。

 商談成立した俺と職員さんはくだんの工房を訪ねることにした。


 のだが、職員さんがさっきからソワソワして落ち着きがない。

『☆5マンドラゴラ』の研究に加わりたくて仕方ないらしい。子供か。


 研究室に移された『☆5マンドラゴラ』の周囲には、既に人だかりができている。全員白衣だ。

 組合の研究員が全員集合してるらしい。

 そして各々どうアプローチすべきか自説を声高に語っている。


 あ、白熱しすぎて胸ぐら掴み合い始めちゃったぞ。目がマジだ。コワイ。

 それをウットリ見つめる職員さん。突撃したいようだ。このヒトもヤバかった。


 俺は諦めた。置いていこう。

 仕事にならんでしょう、コレ。


 俺の提案に職員さん大歓喜。

 代わりに見習いの錬金術師に案内させるとおっしゃる。


 どうも、あの子犬の少女のコトらしい。


 俺がうなずくと速攻で議論の輪に殴りかかっていった。

 女子プロレスの乱入シーンのようだ。

 逆手に握るは銀のフォーク。どこから出した?


 大乱闘のリングと化した錬金術組合を忍び足で脱出し、俺はイズミ達を迎えるべく裏へと回った。

 パイプ椅子で殴られても困るし。

 

 予想通り、少女2人、ウチの眷族と見習い錬金術師ちゃん達がキャッキャうふふと子犬を愛でている。

 キミタチ平和で大変ヨロシイ。

 大人どもは仁義なき乱闘バトル中だ。

 ああなっちゃ、いけませんよ?


挿絵(By みてみん)


「茅葺き屋根とは、また渋いじゃないか」


 錬金術組合から徒歩で20分。

 町のかなり外れまで来た。


 見習い少女が案内してくれた俺たちの新居は、渋い平屋造りの一軒家だった。


 素朴であるがボロくはない。いい感じに寂れている。

 しかも意外と奥行きがある。何度も増築を繰り返した感じだな。

 入り口は寂れてるが中はシッカリしてそうだ。

 見た目よりかなり広いぞ。

 周囲はポツポツ木が自生してるくらいでナニもない。ココも庭として自由にしてイイらしい。

 うん、好みだ。これ、かなりイイ買い物なんじゃないのか?


「町中の家とちょっと雰囲気が違いますね」


 イズミもウキウキした様子で土壁に触れたりしている。


 職員さんの話によると、錬金術師の夫婦が長く住んでいた住居で、錬金術の工房と店舗も兼ねていたらしい。

 ちなみに引退した老夫婦は息子夫婦と孫に会いにはるばる商都へ。

 そうして対面した可愛い初孫と別れがたく、貯め込んでた資金でとうとうそこで新生活を始めてしまったそうな。

 放置された住居は手紙1枚で組合に寄付という名の丸投げ。

 設備の古さと交通事情の不便さで組合も持て余していたと。


 このへんは正に町の外れで、すぐそこから普通にエネミーが出る。

 他に住居もなくて寂しい区域だ。

 それも俺には好都合だ。

 なにしろ邪悪な吸血鬼だ。

 ご近所付き合いはご遠慮したいのだ。


挿絵(By みてみん)


 入り口をくぐってみると、そこはちゃんとした店舗だった。

 なんと商品らしきモノまで置きっぱなしだ。


「壺の中は、……カラですね。商品も劣化が進んでます。残念」


 イズミが『鑑定』を交えながら目ざとくチェックしている。

 陳列棚はさすがにホコリを被ってるな。あとで掃除しないと。


「しかしコレ、すぐにでも店を開けられるな。売るモノもスキルも無いけど」


 設備の揃った居抜き店舗ってヤツだ。

 これがマンドラゴラ1本と交換とは。どう見てもコッチの方がお得だろうに。


 そう考えると俺たちにはモッタイナイ物件だな。

 プレイヤーが店を開くには『商売』スキルが必要なのだが、これが職業『商人』の専用スキルなのだ。

 当然、無職の俺たちには取得できない。のだが。


「決定ですね。わたし、『商人』に就きますよ?」


 イズミが突然宣言した。

 おい!? 寝耳に水なんですけど?


「『錬金術師』のマスターが商品を作る。

 『商人』のわたしがそれを売る。考えてはいたんです。

 だけどこうしてお店の方から転がり込んできた以上、この選択しかないかと」


 ドヤ顔で断言するイズミさん。

 はー。そんなコト考えてたのか。ゼンゼン思いつかなかったぞ、コッチは。


挿絵(By みてみん)


 しばし考えてみた。

 なるほど。それはいいアイデアだ。凄いぞイズミ。


 俺の方は装備の強化だけがそもそもの動機だった。

 が、せっかくだ。『錬金術師』としてアイテム作りするのも面白そうだ。

 爺サマコレクションにもそんなゲームあったし。

『ヒジカタのアトリエ』だな。美少女でなくてスマン。


「だけどいいのか?『商人』で」


 偏見かもしれんが女の子が就く職業としては微妙なトコじゃないか? 

 てっきり『料理人』とか選ぶと思ってたぞ。


「『料理人』は『料理』スキルをかなり上げないと就けないようなのです。

 スキルを鍛えてから目指しますよ」


 そう言いながらちょっと口惜しそうだ。まぁ、頑張れ。


「それに『早めにリタイアして、京都で古民家借りてカワイイ雑貨屋さんとか開きたい?』のです」


 いきなり妙なコトを言い出したぞ? 仕事に疲れたOLさんか?


「『運営ニュース』の読者投稿欄にあった意見です。

 『アナタの夢は?』というテーマで非常に多くの女性プレイヤーの支持を得ていました。

 わたしも乗っかっておこうかと」


 やはりあったか読者投稿欄。

 この分じゃハガキ職人とかもいそうだな。景品は番組オリジナルステッカーで決まりだ。


「いずれ、自作した料理を商品として並べるのも素敵じゃないですか」


 そっち方面も諦めてないのか。うん。夢はでっかく。

誤字訂正ありがとうございます。


微妙なので変更しました。


ひらける→ひらけられる

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