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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
45/652

045 心配されてました

8/18更新5つめです。

挿絵(By みてみん)


「さぞかしお楽しみだったようで、とてもようございました。

 しかし、少し遅すぎるんじゃございませんか。

 森番さんなんて、捜索に出る準備までしてくれていたのですよ?」


 心配されてたのは俺でした。


 日の暮れた森の入り口、拠点の門前にイズミは立っていた。出発時よりギロリと座ったジト目で。

 そりゃ単独で森の奥まで入って、夜になっても帰ってこなけりゃ騒ぎにもなる。


 すまない。心配かけた。だけど仕方ないんだ。

 まずボス戦になってしまったし、帰り道も夜エネミーが手強くて楽しくてつい相手しちゃったのだ。

 と、いうか、その。イズミさん?


「ごめんなさい。ご心配おかけしました」


 俺は深くアタマを下げた。

 心配してもらえるのは、とても尊いコトなのだ。理由があろうとなかろうと。


「分かって頂ければ結構です。

 まぁ、わたしも途中まではついていくべきでした。

 マスター、森に入るなりヤラれてましたし」


 げ、知ってたのか。開幕袋だたき。

 眷族ってそういうの分かるの?


「少しだけですけど。その後、順調そうなので放置しましたが」


 静かに怒る眷属サマをなだめつつ、俺たちは小屋に入った。ごめんな?


挿絵(By みてみん)


 拠点小屋の中はちょっとした宿屋のようだった。意外と広い。


「おう、にいさん無事戻ったか。遅いから心配したぞ」


 長椅子に腰かけてた森番さんがホッとした顔をしている。

 すみません。ご心配お掛けしました。

 大丈夫、ピンピンしてます。


「夜の森だ。迷ってるんじゃないかと思ったが、嬢ちゃんが夜は大丈夫と太鼓判押すもんでな。

 大したモノだ。いや、ヒトは見かけによらんな」


 森番さんから見れば、素人が一人でマンドラゴラ採りなんて不安の塊だったんだろう。

 タネを明かせないのが心苦しいな。


「今日はもう遅い。泊まっていくとイイ。

 飯は妻が用意している」


 おおっ、ありがたい申し出。

 お言葉に甘えさせて貰うことにした。ありがとうございます。

 マッシブ森番さん、いい人だ。


 俺たちも長椅子に腰掛けた。

 イズミがお茶を貰ってきてくれた。ありがとう。

 ふぅー。生き返るな。アンデッドだけど。


「それでマスター、ご首尾は?」

「ああ、バッチリだ。かなり多めに採取できた。それと」


 森番さんに聞いてみるか。ガーディアンのことだ。


 話を振ってみるとたいそう驚いている。

 これまでそんなの出たコトないらしい。

 職員さんも言ってなかったよな。


「御神木のコトは知っていたが……。

 まさか化身が出るとはな。どんな奴だった?」


 詳しく教えておいた。

 耐性の無い人間が遭遇したら全滅間違いなしだからな。

 あの絶叫はヒドイ。


「一度に10本も掘ったから、御神木が怒ったのかもしれませんねぇ」


 数を聞いて森番さんは呆れ顔だ。

 普段は捕まえた野獣に引っ張らせて1本ずつらしい。

 それだって月に3本も取れれば御の字だそうな。

 貴重品だな天然マンドラゴラ。そりゃ依頼も出るわ。


「錬金術組合とギルドが専属にほしがるぞ。にいさん、どうだ?」


 ありがたいお話ですけど、そればっかりてのも困るので。すみません。


挿絵(By みてみん)


 森番さんの奥さんが夕食を用意してくれた。ありがとうございます。


 小柄なヒトだな。ローブを目深に被ってて顔はよく見えない。

 かなり若い? 筋肉オヤジと並ぶとむしろ妹か娘みたいだ。


「おいしそう……」


 またイズミが感動している。

 お前、もう料理スキル取っちゃえよ。


 俺たちはテーブルで手料理を頂きながら今日の首尾を語り合った。

 ちなみに子犬は足下で骨付き肉をかじっている。幸せそうだ。


「こちらの採集はかなりの成果があがりました。森番さんがご指導してくれたので。

 野草採集の継続可能な作法もレクチャー頂きました」


 ああ、アレだな。俺も勉強になったよ。


「嬢ちゃんは飲み込みが早くて教え甲斐がある。

 それに『鑑定』もしてくれたからこちらもイロイロ助かった。お互い様だな」


 へぇ、スキルを明かしたのか。信用できそうなヒトだしな。


 ☆5の件は……。コレは危険だな。

 知ってしまったら無理するかもしれない。

 耐性無いヒトにガーディアンは死神そのものだ。


「にいさんもレアスキル持ちらしいが、ナニも言うことはないからな。

 冒険者が手の内を明かす必要は無いぞ。こっちも聞かん」


 人生の先輩らしく、俺の逡巡を読み取ってくれた。

 そう言ってもらえると助かります。

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