039 マスター。頑張ってくださいね。
8/15更新6つめです。
素朴な田舎道を2時間ほど歩き、俺たちは『叫びの森』の入り口に到着した。
途中、何度かエネミーと遭遇戦があったが無事に蹴散らした。
強さは植物コンビ以上、オオカミズ未満といった感じ。
昼の俺にはイイ苦戦だ。
イズミはまた『ファイア・ボール』連発してたけどね。
時間も無いし、まぁいいよ。
森番の拠点はガッチリした山小屋だった。
周囲には柵もある。
冒険者ギルドと錬金術組合の共同拠点だって言ってたけど。
そこそこ大きいし結構な人数でも寝泊まりできそうだな。
いざとなったら頼み込んで泊めて貰おう。
「ようやく来たか。よし、犬も連れてるな」
大声で呼びかけられた。
えらくマッシブでイカツイおっさんだ。
職員さんの言ってた『森番』のヒトなんだろう。
凄い強そう。殴られたら死ぬな。
「何度か犬も連れない冒険者がきたが、ゼンブ追い返した」
いや、丁寧に扱ってほしかったです。
彼らは心優しい人達なので。
「悪いが規則だからな。
もう昼過ぎだ。時間も無いのですぐ説明するぞ。
この地図を見ろ。群生地はココだ」
なかなかに奥地でかつ、分かりにくい場所だ。
そりゃ一見さんじゃ無理だろ。
他にもイロイロご指導いただいた。
マンドラゴラ掘るには幾つか決まり事があるらしいのだ。
さて、写しの地図ももらって準備は整った。
急ぐか。時間も無いし。
「じゃあ、マスター。頑張ってくださいね。
わたしとこの子はココで待たせてもらいますので」
え、俺ひとりで行くの?
「そうですよ。
遊んでるのもナンですから素材の採集でもしてますよ。
イロイロ珍しい素材もあるそうですし。
お前も手伝ってくれるでしょう?」
ワンッとイイお返事。いつの間に仲良くなったキミタチ。
「ちょっと待て。ナニを言っている。
犬抜きで行かせるワケにはいかんぞ。
マンドラゴラを舐めるなッ」
マッシブ森番さんが慌てて俺の腕を掴んだ。
凄い力だ。見た目通りだな。
骨がきしんでるって。いだだだ。
「このヒトはレアスキル持ちで滅多なコトじゃ死なないんです。
大丈夫ですよ。特に呪いや即死には特効なので」
「ぬ。レアスキル持ち……。しかも耐性系か?
うーむ。しかし……」
……そうだな。マンドラゴラは呪いの絶叫で相手を即死させる恐るべき作物だ。
農協でも扱えまい。
いっぽう、俺は新米だが吸血鬼。
最初から呪われてるようなモノのアンデッド系。
イヤな事実だがゾンビやゴーストと同系統の魔物なのだ。
呪いの即死絶叫、大丈夫かもしんない。うん。
「心配は無用だ。番人さん。
俺はそういうのに滅法耐性がある。
絶対に大丈夫。それに」
『怪力』!
俺は逆に森番さんの腕を掴み、その巨体をフワリ持ち上げた。
そのままゆっくり下ろす。
森番さん、目をパチクリさせてるな。
ごめん、驚かせて。
「俺は見た目よりよっぽど力があるんです。
ひとりでも大丈夫」
一瞬だけだけどね。
まぁ『怪力』もLVアップして出力とか上がってるのだ。大丈夫だろ。
「それよりこの二人を世話してやって貰えませんか。
俺が帰ってくるまで。
森の浅いところで採集とか教えてやってください」
この筋肉マンがイズミ達についてくれるなら安心安全だ。
俺もマンドラゴラに集中できる。
それにだ。
イズミの企んだこのプラン。
それを担保してるのが俺のタフさであるのなら、是が非でも応えねばなるまい。
マスターだからね。いちおう。
さて行くか。
問題は、実はオールステ1の激烈弱キャラなことだが。それは根性でカバーだ。
為せば成る! 俺の空気投げが唸るぜッ!!
「……マスター。ご無事のお帰りを」
「おう。採集は任せた」
ジト目と気合いを交換し、俺たちはふた手に分かれた。




