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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
37/651

037 錬金術組合

8/15更新4つめです。

「おい、イズミ。犬、可哀想じゃないか」

「はい。それはもう」


 冒険者ギルドで正式に依頼を受領してしまった俺たちは、町の錬金術組合に向かっている。


 わりと近いらしいが。

 マンドラゴラの自生場所の情報と身代わりの犬を受け取るタメだ。


 しかし、俺はかなり乗り気ではない。


 だって可哀想だろ。犬。

 俺がどう断ろうか迷ってるうちに、イズミがさっさと手続き済ませてしまったのだ。

 即キャンセルはペナルティがあるそうなので、やるだけやってみるけどさ。


「そう思うなら、なんで受けたんだ?」

「報酬がいいですし、マンドラゴラにも興味ありますし」


 まぁ、それはそうだけどさ。

 銀貨50枚は魅力だし、マンドラゴラはファンタジーの定番だ。

 入手しておけばイロイロ使い途もあるだろう。


 だけど犬、それも子犬を犠牲にってのはイヤすぎだろ。


「大丈夫。なんとかしてくれますよ」

「誰がだよ」


「お強いマスターが」


 コッチに打ち返された。ぎゃふん。


挿絵(By みてみん)







挿絵(By みてみん)


 錬金術組合は小さな研究室といった雰囲気だった。


 10人ほどの白衣姿のヒト達がナニやら忙しそうに作業している。


 フラスコの怪しい液体を渋い顔で味見している研究者。

 ゴンゴンと轟音響かせるボイラーの圧力計とにらめっこしてる研究者。


 みんな錬金術師なんだろうか。

 いかにも理系の研究室って感じだ。化学系だな。


 玄関で冒険者ギルドで依頼を受けたと伝えると、

 担当者らしき白衣の女性が応対してくれた。


「新薬の研究で新鮮なマンドラゴラが必要なのです。

 急いでもらえると助かります」


 若干対応が素っ気ない。


 まぁ、冒険者ギルドに依頼をだしたものの、失敗続きでイロイロ滞っているのだろう。

 内心ウンザリしてるのかもしれないな。

 同じ説明繰り返してるだろうし。


 マンドラゴラの自生場所と注意点を教えてもらう。


 場所は町から西へ進んだ危険区域『叫びの森』。

 その奥に群生地があるらしい。

 現地には番人が駐在しているらしいから、詳しい場所はそのヒトに聞けばいいそうだ。


『叫びの森』はモンスターは強いが、貴重な素材が多く自生しているらしい。

 冒険者ギルドと錬金術組合にとっても重要な場所らしく、共同で拠点を建てて管理しているそうだ。

 ひとまずそこを目指せばいい。その後は番人さんと相談だな。


 マンドラゴラのノルマは1本だけだが、なるべく大きいのがイイらしい。

 本当はもっと欲しいのだが、採取方法がアレなのでゼイタク言えないそうだ。

 可哀想だし、と職員さんもこぼした。

 犬とかどうなってもいい、とかは思ってないようだな。

 ちょっと安心した。


 普段は精製済のマンドラゴラを商都から仕入れているそうだが、今回は成分的に使えないそうだ。


 身代わり犬の扱い方も聞いておく。

 マンドラゴラは誰かがその叫び声を『聞く』ことで魔術的な成分が湧くらしい。

 耳栓したり遠くからヒモで引っ張ったり、ではイカンのだ。

 ただの雑草同然になるそうな。面倒な作物だな。


 ひと通り話を聞いたトコロで、ふと思い出した。

 そういやカーミラさんが教えてくれたな。錬金術で。


「依頼と関係ない話なんですが、錬金術のコトで教えてもらってもいいですか?」

「結構ですよ。お答えできることなら」


 あっさり引き受けてくれた。助かります。


「錬金術で装備の強化ができるって話を聞いたんですが。本当でしょうか?」


 職員さんは少し考えてから口を開いた。


「装備の強化ですか。

 可能ですが、それはかなり上位の魔法アイテムのケースですね」


 上位の? あれ? タダの黒服とか蝶ネクタイの話ですけど?


「金属で言えばミスリル銀以上。

 木材なら樹齢千年以上の霊木。

 繊維なら神霊から祝福を受けた霊布と言ったトコロ。

 そういう魔力や霊力の塊のような素材なら可能です」


 出てくる名前が凄そう。こりゃ違う話だな。


 強化自体は『錬金術』の基礎『合成』アーツで出来るそうだ。

 他の素材を融合させることで強化が可能らしい。そんな難しい話ではないようだ。


「しかし実際には試したコトはありませんね。

 ベースになる素材が稀少揃いですから」


 すみません。そんな高級品の話じゃないんです。

 防御力紙同然の固定装備をナントカしたいだけなので。


 いや、待てよ。


 凄い素材でなくても珍しい素材ではあるかもしれん。

 なんせ『吸血鬼の礼服』だ。

 そこらでバーゲンしてないのは間違いないのだ。

 お試しで頼んでみるか?


「マスター?

 そんなホイホイお見せしてよいモノなのですか?」


 はッ。言われてみれば。


 装備名に『吸血鬼の』と大書きしてあるではないか。

 一発で身バレしてしまう。

 そして討伐エンドだ。心臓に白木の杭だ。ヤバイ。


 うーむ。残念だがいまは諦めざるを得まい。

『錬金術』は自力でスキルを取得するしかないな。

 そう思って覗いてみた取得可能リストに『錬金術』がない。

 職員さんに訊いてみたら、錬金術師の専用スキルとのご返事。


 つまり俺が装備を強化しようと思ったら、自ら『錬金術師』の職に就くしかないということだ。


 思ってたより大ごとだなコリャ。とりあえず保留だ。



挿絵(By みてみん)

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