033 マスターの悲しみ
ヒジカタくんは面倒くさいときもあります。
イズミは『杖』スキルを持っていた。
その装備すべき杖だが実はある。
他ならぬ『支配する杖』のレアドロップ、『魔女の杖☆2』であるのだが。
「これ、お前が装備して大丈夫なの?」
「『支配する杖』とはゼンゼン別物なんで大丈夫ですよ?
性能もいいしモッタイナイ」
あっさり装備した。
地味な見た目だが高性能なんだそうな。
後で精神を乗っ取られたりしないだろうな。
ちょっと不安なんだけど。
さて腕試しだ。
相手は我が旧友たち、植物カルテット。本日もよろしく。
『影縛り』
『ファイア・ボール』
突進しかけてた1体の紫キノコを影の柔腕が拘束する。
その傘頭に火球が命中。
ドカァンッ!!
炎の大輪が咲いた。
ゆっくり歩いていたガジガジ草2体もまきこまれて炎上。沈没する。
残ったのはすでに突進していたキノコ1体。
イズミの方をロックオンして突っ込んできた。
俺が前に出る。
『空気投げ』捌いて掴んで投げ落とす。
HPはまだわずかに残っているようだ。
さすがに昼間は1発KOとはいかない。
技のダメージも相手依存だしね。
立ち上がろうともがくキノコを、
『怪力』掴み上げて投げ飛ばした。
沈んだ。
戦闘終了。
出番無き この身悲しき ふぁいあぼー
「どうしたんですか、マスター。座り込んで?」
「いや、もうお前一人でいいんじゃないかな、って思ってさ……」
何戦かやってみたのだが。
戦闘が楽になった、というか戦闘にならない。
『ファイア・ボール』『ファイア・ボール』
『ファイア・ボール』『ファイア・ボール』
これだけでイケてしまうのだ。
なんだか悲しくなってきた。
これまでの苦労はなんだったの?
俺のツラく楽しい苦戦を返して下さい。
「もー、面倒くさいヒトですねぇ。
範囲攻撃呪文っていうのはこんなモノですよ?
それにマスターが守って下さるから、わたしも安心して呪文が詠唱できるんです。
自信持ってくださいな」
……そうか。そうだよなッ。俺がいてこそだよな!
ふははははは!!
「だいたい、こんな町の近くでウロウロしてるのがおかしいんです。
もっとフィールドを進めるとか、ダンジョンに潜るとかしないと」
いや、ステ1でソロだったしさ。
あんまし危ないトコはちょっと。




