032 眷族の感謝
うらやまし 『鑑定』スキル レアスキル
川柳と呼ぶのもおこがましい出来だ。
5・7・5ならいいってモンじゃないんだよ?
町中をトボトボ歩く。ああ、欲しかったなぁ。
「あげませんよ?」
わかってるよッ。
後ろをついてきているイズミがすかさず突っ込む。
そんなホイホイあげたり貰ったりできるモンじゃなかろうし。
カーミラさんはホイホイくれたけど。
「カーミラ様はとても上位の権限を持ってらっしゃるんですね。
ビックリしました」
自称『始祖中の始祖』だしね。
ただのプレイヤーでもNPCでもなさそうだし。
まさに謎の人物だ。話すことも結構ナゾだし。
「だけど、いいヒトだよ」
「はい。それは間違いなく」
そこんトコが一番大事だよ。つか、そこだけでイイ。
「イロイロ貰っちゃったし、『魔界飯』には足を向けて寝られないな」
「お礼をする必要があるでしょう。ナンデモ持ってらっしゃいそうですけど」
それも問題だな。お礼のしようがない。
多分、期待されてもないけどさ。
お返しの件は置いとこう。どうせロクなモノ持ってないし。
一番イイモノで『オオカミの尻尾☆2』だ。
こんなのあのヒト達が欲しがるとは思えないしな。
これからフィールドで経験値稼ぎだ。
その前にステータスの確認だな。
俺じゃない。ステ1に決まってるし。
イズミの方だ。
「『杖に支配される魔女』だった頃と基本は変わりませんよ?
ただ転生でLVとステータス値は下がってますけど。
あと『暗視』は増えましたね。称号もです」
もともとのLVを聞いたらなんと40あった。申し訳ない。
「ゴメンな。LVがドカンと減って、増えたのが『暗視』だけじゃゼンゼン大損だよなぁ」
「そうですよ。責任取ってください、と言いたいトコロですが……」
イズミは軽く首をかしげる。う、可愛いじゃないか。
「『杖に支配される魔女』の頃は自我はほとんどありませんでした。
『支配する杖』のオプションのようなモノだったので。
それに比べて今はNPCとしては破格の自由度を頂いております」
だいたい引き結んでいる唇とジト目をフッと緩めた。
笑顔、なのか?
「その点では、わたしはマスターに本当に感謝しているのですよ?
杖から解放してくださったのは、誰でもないマスターなのですから」
笑顔は一瞬。またジト目に戻る。
「ただ、そこから眷族として囚われてしまったのは別問題ですが。
当然、あのトラウマになりそうな『吸血』もです」
結論。俺はまだ、許されてはいないと。
よくわかりました。




