027 イズミ
短いです。
「先日の夜は大変お世話になりました」
「い、いえ、こちらこそ」
なんと魔女さんでした。そりゃ憮然ともしたくなる。
「マスターのご活躍のおかげさまで、今日より眷族としてお仕えするコトになってしまいました。
よろしくお願い致します」
イヤミなくらい丁寧なお辞儀。親愛の情ではあるまい。
ずいぶんお綺麗になられましたね。ええ。
セリフの端々に本音が漏れてるな。隠すつもりもないか。
当然だ。昨夜は酷かった。
俺にとってはつい昨日の晩だが、こっちではもう3日前か。
リアルじゃありえん時差だ。
「とにかく名前を決定して下さい。話が進みませんので。
面倒ならデフォルトでも結構ですが」
このデフォルトは酷かろう。呼びにくいし。
そうだな……。ふぅむ。
「じゃあ『イズミ』で。それでいいかな?」
それまで引き結んでた唇がふっと緩んだ。
「結構です。
たいへん良い名前です。ありがとうございます」
気に入って頂けたようだ。よかった。
昔、爺サマが飼ってた三毛猫の名前だけどね。
懐かないくせに甘えたのカワイイ猫だった。
もっとも、そもそもの由来の方はまた別にあるんだけども。
「それではマスター」
「ちょっと待って。まず、お願いがあるんですけど」
喰い気味に、俺は口を挟んだ。そう、最優先だ。
「とにかく、服を着てくれ。気になって話どころじゃない」
さっきから話の流れがまったくアタマに入ってこない。
落ち着いて話すには、そのカッコウは攻撃力高すぎです。
「服なんてもってませんよ?」
「じゃあ、どうやってココまで来たんだ? まさか、それ1枚で」
前衛的すぎるだろ。毛皮反対のデモじゃないんだから。
「わたしはあの戦闘終了時からシステムに回収され、
未知の上位権限により転生処理を受けてここで再構築されました。
歩いてなんていません」
「? よくわからんが、とにかく服はないんだな?」
「はい」
「ちょっと待っててくれ。ここに居ろよ?」
俺は急いで部屋を出、階段を駆け降りた。
ここは宿屋の2階で、1階は食堂になっている。
今は朝飯時、モーニングタイムだ。
俺と同じく、ログインしたばかりであろうプレイヤー達がモーニングセットを楽しんでいる。
くそ、美味そうだ。俺も腹が減ったぞ。
俺は店員を捕まえて頼み込んだ。
「なんでもいい、古着でイイので女物の服を譲って下さいッ。
あ、ブルセラ以外で」




