196 怒りの突撃
付け合わせのお野菜も軽く炙って盛り付けます。
完成。
ふふふ。イイ出来じゃないですか?
「マスター!
ゴハンできましたよー。
ナニ遊んでるんですか?」
「おーッ。わかったぁーッ。
ちょっと待ってくれよーッ」
マスターが向こうの岩陰でナニやらやってますね。
水辺の大きな石をどけたり積んだり?
穴を掘ってます?
土木工事?
ボチャボチャガンガンうるさいですよ?
凄い勢いですが…。
夜バンパイヤモードの無駄遣いですね。
ステ1の昼に戦って、強い夜に遊んで。
ふつう逆じゃないですかね?
変なマスターですよ。
「わうわうッ!」
あらあら、シロはもう待ちきれないようですね。
シッポがブンブン全振り。
鶏を盛り付けた木皿に飛びかからんばかりです。
「待てですよ、シロ?
遊んでるマスターが悪いんですよ?」
「わわうッ!!」
わたしが河原を指さすと、とつぜん駆け出しました。
「ワウッ!」
「おわッ!?」
そして土木工事に夢中のマスターに突撃。
背後から頭突きです。
あ、そのまま仲良く川に落ちましたね。
あはは。
シロ、ナイスですよ?
「さ、さぶい……」
春先の夕暮れは濡れ鼠には冷た過ぎる。
着替えの短パンも寒い。
河原の土木工事に夢中になってたら川に突き落とされた。
犯人はヤス、いや犯犬はシロ。
ご馳走のお預けに対する怒りの抗議であるようだ。
スミマセン。
もろとも川へダイブしたシロもずぶ濡れだ。
ブルルッと身を震わせて水気を飛ばしている。
便利ですな。
赤熱木炭を持ってきて暖を取る。
逆にメチャクチャ熱いが我慢だ。
しかしコレ、いっこうに冷める気配が無いぞ。
ずぶ濡れ吸血鬼装備は、イズミが枝にかけて干してくれている。
「カマドのそばに干しとけばすぐ乾きますよ。
ところで、河原で長々とナニ作って遊んでたんですか?」
「ふふふ。知りたいか?
しかしまだ秘密だ。食後のお楽しみだな」
「まぁ、どうでもいいですけど。
さ、ご飯にしますよ?」
「わおーんッ!!」
待ってましたとシロが歓喜の咆哮だ。
いや、お待たせして申し訳ない。
ご馳走を頂きましょうか。




